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Spousal Similarity in Life Satisfaction before and after Divorce https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4821827/
2017年、ミシガン州立大学が離婚前後の人生の満足度に関する研究を行いました。
前回紹介した研究でも、 結婚ほど大きなライフイベントでさえ、主観的な幸福感にそこまで大きな影響を与えない! というように、 人生に起こるライフイベントはその瞬間/その時期はある程度影響を与えるけど、 長期的に見れば適応によってベースラインに戻る。 と紹介しました。 ですが、最近の研究では、 確かに人生の満足度に適応は起こるものの、いくつかのライフイベントは実際に非常に長い期間(永続的に)生活満足度に影響を与えるものもあるやん?そしたら、ライフイベントによって満足度の低下は考えられるでしょ? ってツッコミが入りまして、例えば ・失業 ・離婚 ・病気 ・死別 などは、影響が大きいし、 ・その瞬間のインパクトだけではなく、生活環境まで変化することもあるのでは? ・そもそも研究で用いるライフイベントの種類が、比較的影響が小さいものを扱っているのでは? ・結婚だって最近は様々な形があるのだから、みんながみんな幸せになるわけじゃないのでは? みたいな感じで言われております。
そこで本研究では、離婚前(結婚期間中)と離婚後の人生の満足度とその類似性を調べることで、 ・人生の満足度にどんな変化があるか ・離婚後の人生の満足度に類似性はあるのか? ということを調べました。
23年にわたる追跡調査の12000人のデータの中から、 1)最初の結婚時に調査に参加した人 2)調査期間中にパートナーと離婚した人 の469組のカップルに対し、毎年、参加者に 「あなたは現在、人生全体にどの程度満足していますか」という質問をし、 0(全く満足していない)から10(全く満足している)までの範囲で回答してもらいました。
・離婚したカップルのうち、離婚前7年間のカップルの人生の満足度の類似性が低い ・夫婦でライフイベントを共有できない場合、人生満足度の類似性が大幅に低下する ・夫婦は結婚生活の中で、人生の満足度が変化していくが、離婚することによって その変化が止まっていく。 =人生の満足度が安定していくということ ・個人の性格特性(パーソナリティや遺伝特性)だけで幸福度の個人差を説明することはできず、 生活環境が重要である
離婚後は離婚前よりも、人生の満足度の類似性が低下するということは、 一緒に暮らさなくなったことによって変化が起きると考えれます。 これはつまり、生活満足度は生活環境の共有と大きく関連していて、 ・自分にとって居心地の良い生活環境を形成できない ・夫婦に起こるライフイベントを共有できない ことが夫婦の生活満足度に影響を与えているのではないか、ということです。
たまにあるのが、 「離婚してからの方が仲が良くなった」 みたいな話を聴くことがありますが、(例えば最近だとこんな記事) これがこの研究が指していることではないかと。
つまり、離婚してからの方が「人生の満足度」は自分の思うようにできる=自由度が 比較的高いのですが、 結婚生活ではどうしてもその自由度が下がってしまうのですね。たとえば ・自分の時間 ・食べたい食事 ・部屋などの空間・使えるスペース ・お風呂に入りたいタイミング ・友達との食事 etc この自由度、すなわち生活環境と捉えることができて、 人生の満足度の大きな要素になっているようです。 (私も一人暮らしをしていますが、実家にいるとどうしても自由度が低下してしまうので、満足度は低くなりがちでした。。)
余談ですが、ここから考えられる話として、 今までのように、男性は働き、女性は専業主婦で生活するタイプの家族の形態であれば、 男女は自分の役割をこなすことで割り切れていた部分がありましたが、 夫婦共働きの世帯や一緒に子育てをしていこうと考えている夫婦の場合、 互いが互いを支え合うマインドで成り立っている部分があります。それは「役割」ではないため、 「やるべきことがあっても自分にとっては義務だけど、相手にとっても義務である」と考えることができるため、 心理的に割り切ることが難しかったり、疲れていたりすれば、 「どうしてもっと気を遣ってくれないの?」とイライラすることもあるかもしれません。
ですが、自分ひとりであれば自分のことですし、「自分がやるかやらないか」で困るのは自分。 で済む話ですよね。 つまり「自分のことは自分でやる」という状態は「自分で意思決定ができている状態」 ですが、家族や恋人と生活する場合、 「自分だけの問題では済まない」という問題が多々発生します。 これが自分の生活満足度・人生の満足度に影響を与えるひとつの要因になっているということでした。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「じゃあ、ひとりで生活した方が人生の満足度も高いし、恋人はつくらない方がいいってこと?」 と考えてしまうかもしれませんがそうではありません。 逆に言えば、
・自分で決めているという実感や、パートナー同士、互いに居心地の良い環境を作ることができれば、それほど満足度は低下しない ・互いの人生におけるライフイベントをしっかり共有することで、一方の生活満足度が低下することなく、 感覚を共有できることで夫婦関係が維持できる
ということでもあります。 研究ではここまで述べられていませんが、活かし方としてはここまで考えられるかと思います。
夫婦関係で悩んでいる方はある程度参考になればと。どうぞよしなに。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※Q.これ離婚後のカップルを対象にしているのだから、そりゃあ人生の満足度は高まるんじゃないの? と疑問に思う方もいると思いますので、一応説明入れておきますね。
この研究では、人生の満足度の類似性を比較しているので、 『離婚前と離婚後の人生満足度の類似性がどのように変化したのか』を検討しています。 なので、離婚したことで満足度が上がった、という結論ではなく、 離婚したことで類似性が下がったから、人生満足度には生活環境が影響を与えているんじゃないの? というのが本筋の結論であります。ご注意を。
0. 論文タイトル・URL
Spousal Similarity in Life Satisfaction before and after Divorce https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4821827/
1. その論文の目的・どこのリサーチか
2017年、ミシガン州立大学が離婚前後の人生の満足度に関する研究を行いました。
2. (先行研究とこれまでの問題)
前回紹介した研究でも、 結婚ほど大きなライフイベントでさえ、主観的な幸福感にそこまで大きな影響を与えない! というように、 人生に起こるライフイベントはその瞬間/その時期はある程度影響を与えるけど、 長期的に見れば適応によってベースラインに戻る。 と紹介しました。 ですが、最近の研究では、 確かに人生の満足度に適応は起こるものの、いくつかのライフイベントは実際に非常に長い期間(永続的に)生活満足度に影響を与えるものもあるやん?そしたら、ライフイベントによって満足度の低下は考えられるでしょ? ってツッコミが入りまして、例えば ・失業 ・離婚 ・病気 ・死別 などは、影響が大きいし、 ・その瞬間のインパクトだけではなく、生活環境まで変化することもあるのでは? ・そもそも研究で用いるライフイベントの種類が、比較的影響が小さいものを扱っているのでは? ・結婚だって最近は様々な形があるのだから、みんながみんな幸せになるわけじゃないのでは? みたいな感じで言われております。
3. その論文の目的(具体的に)
そこで本研究では、離婚前(結婚期間中)と離婚後の人生の満足度とその類似性を調べることで、 ・人生の満足度にどんな変化があるか ・離婚後の人生の満足度に類似性はあるのか? ということを調べました。
4. 方法
23年にわたる追跡調査の12000人のデータの中から、 1)最初の結婚時に調査に参加した人 2)調査期間中にパートナーと離婚した人 の469組のカップルに対し、毎年、参加者に 「あなたは現在、人生全体にどの程度満足していますか」という質問をし、 0(全く満足していない)から10(全く満足している)までの範囲で回答してもらいました。
5. 結果
・離婚したカップルのうち、離婚前7年間のカップルの人生の満足度の類似性が低い ・夫婦でライフイベントを共有できない場合、人生満足度の類似性が大幅に低下する ・夫婦は結婚生活の中で、人生の満足度が変化していくが、離婚することによって その変化が止まっていく。 =人生の満足度が安定していくということ ・個人の性格特性(パーソナリティや遺伝特性)だけで幸福度の個人差を説明することはできず、 生活環境が重要である
6. 結論・まとめ
離婚後は離婚前よりも、人生の満足度の類似性が低下するということは、 一緒に暮らさなくなったことによって変化が起きると考えれます。 これはつまり、生活満足度は生活環境の共有と大きく関連していて、 ・自分にとって居心地の良い生活環境を形成できない ・夫婦に起こるライフイベントを共有できない ことが夫婦の生活満足度に影響を与えているのではないか、ということです。
たまにあるのが、 「離婚してからの方が仲が良くなった」 みたいな話を聴くことがありますが、(例えば最近だとこんな記事) これがこの研究が指していることではないかと。
つまり、離婚してからの方が「人生の満足度」は自分の思うようにできる=自由度が 比較的高いのですが、 結婚生活ではどうしてもその自由度が下がってしまうのですね。たとえば ・自分の時間 ・食べたい食事 ・部屋などの空間・使えるスペース ・お風呂に入りたいタイミング ・友達との食事 etc この自由度、すなわち生活環境と捉えることができて、 人生の満足度の大きな要素になっているようです。 (私も一人暮らしをしていますが、実家にいるとどうしても自由度が低下してしまうので、満足度は低くなりがちでした。。)
7. どんな使い方ができる?
余談ですが、ここから考えられる話として、 今までのように、男性は働き、女性は専業主婦で生活するタイプの家族の形態であれば、 男女は自分の役割をこなすことで割り切れていた部分がありましたが、 夫婦共働きの世帯や一緒に子育てをしていこうと考えている夫婦の場合、 互いが互いを支え合うマインドで成り立っている部分があります。それは「役割」ではないため、 「やるべきことがあっても自分にとっては義務だけど、相手にとっても義務である」と考えることができるため、 心理的に割り切ることが難しかったり、疲れていたりすれば、 「どうしてもっと気を遣ってくれないの?」とイライラすることもあるかもしれません。
ですが、自分ひとりであれば自分のことですし、「自分がやるかやらないか」で困るのは自分。 で済む話ですよね。 つまり「自分のことは自分でやる」という状態は「自分で意思決定ができている状態」 ですが、家族や恋人と生活する場合、 「自分だけの問題では済まない」という問題が多々発生します。 これが自分の生活満足度・人生の満足度に影響を与えるひとつの要因になっているということでした。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「じゃあ、ひとりで生活した方が人生の満足度も高いし、恋人はつくらない方がいいってこと?」 と考えてしまうかもしれませんがそうではありません。 逆に言えば、
・自分で決めているという実感や、パートナー同士、互いに居心地の良い環境を作ることができれば、それほど満足度は低下しない ・互いの人生におけるライフイベントをしっかり共有することで、一方の生活満足度が低下することなく、 感覚を共有できることで夫婦関係が維持できる
ということでもあります。 研究ではここまで述べられていませんが、活かし方としてはここまで考えられるかと思います。
夫婦関係で悩んでいる方はある程度参考になればと。どうぞよしなに。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※Q.これ離婚後のカップルを対象にしているのだから、そりゃあ人生の満足度は高まるんじゃないの? と疑問に思う方もいると思いますので、一応説明入れておきますね。
この研究では、人生の満足度の類似性を比較しているので、 『離婚前と離婚後の人生満足度の類似性がどのように変化したのか』を検討しています。 なので、離婚したことで満足度が上がった、という結論ではなく、 離婚したことで類似性が下がったから、人生満足度には生活環境が影響を与えているんじゃないの? というのが本筋の結論であります。ご注意を。