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Pressed for Time? Goal Conflict Shapes how Time is Perceived, Spent, and Valued https://journals.sagepub.com/doi/10.1509/jmr.14.0130
2015年、デューク大学が時間と目標のコンフリクトに関する研究を行いました。
みなさんは「時間に追われている」と感じることはありますでしょうか。
時間に追われていると話したら、 「時間に追われるのではなく、時間は追いかけましょう!」とか 「自分の大切な目標にまず向かいましょう!」 とか呑気なアドバイスを無神経にされた経験がある人もいるかもしれません。
先行研究では、時間的な圧力とストレスには正の相関があることがわかっておりまして、 いわゆる制限時間があると、不安やストレスを感じやすくなるのですね。 しかし、日常生活では時限爆弾のような「制限時間」があることはそこまで多くないのですが、
例えば、子育てをしながら、お仕事をしている主婦であれば、 『仕事にいって、保育園のお迎えにもいって、帰ったらご飯を作って、お風呂に入れて、 洗濯をして、お皿を洗って、、、、、、、、、、あああああああああああああああああああ』 みたいになってしまうことが往々にしてあると思います。 このような時に、人は「時間がない」「時間に追われている」と感じることはありますよね。
じゃあそもそも ・「時間に追われている」ってどういうこと?どういう現象なの? ・どうすれば時間に追われている感覚を取り除くことができるの? ということも調べてくれた研究になります。
※実験が5つに分かれていて少しややこしくなってしまうので、1つ目の実験は詳しく紹介します。 残り4つは結果のみ記載しておきます。 1つ目の実験では 1125名の参加者を対象に ・時間の葛藤:時間がなくてできないと感じる目標を2つ書き出す(ex 副業もしたいけど、大学院で勉強もしたい) (ex 仕事をうまくこなす、愛する人と過ごすなど) ・お金の葛藤:お金がなくてできないと感じる目標を2つ書き出す(ex 貯金をしたいけど、素敵なお洋服を買いたい) ・一般的な葛藤:対立している目標なら何でもよし(健康になる、おいしいものを食べる) ・コントロール群:目標なら何でもよし に分けまして、次に ・主観的な時間認識 ・目標対立の認知度 についての質問に回答してもらいます。
その結果わかったこととして、 ・目標間の対立をより強く感じると、人々はより時間に追われていると感じる(F(3, 119) = 4.42, p < 0.05,) ・時間がなくてできないと感じる目標(M = 3.70; F(1, 119) = 12.66, p < 0.001) お金がなくてできないと感じる目標(M = 3.22; F(1, 119) = 4.90, p < 0.05) であったので、時間がなくてできないタイプの目標間の対立が起きると、より時間がないと感じる。
→ここまでで整理しておくと、時間がないと感じるのは、「複数のやりたいこと」が同時に存在していて対立している時 ということが示されました。つまり、 あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ、、、になっている時ですね。 逆に、目標が対立していないと時間的圧力は感じにくくなるので、複数のやりたいことがあったとしても、 対立していないと認知していればよいのです。 例えば、受験生だったとして、 「部活も受験勉強もあるんだよね、、」というと、 時間がないと感じますが、3年生の大会が終わり、部活がない状態になれば 受験勉強だけになるので時間的な余裕はできるはずですよね。これが葛藤がない状態です。
しかし、受験勉強をやっていく中で、 「数学も、世界史も、英語も点数が悪いから勉強しないといけない」 となると、また時間がないと感じるようになるわけです。
「受験勉強」をひとくくりで、マクロな視点でまとめておくと時間的圧力は小さいのですが、 細分化したり、目標が複数できることで時間がないと感じるようになります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 実験2~5結果 2~5は結果だけまとめておきますと、 ・時間がないと感じる感覚は、ストレスや不安を媒介としている。 ・目標間の対立が大きいと感じると、参加者が感じるストレスや不安が大きくなり、主観的な時間圧力が大きくなる。 ・時間による目標の対立ではない場合に関係なく、「目標間の対立」が生じると時間的圧力が大きくなる。 ・お金の豊かさは時間的圧力に関係ない ・実験4では、目標間の対立が大きいと感じている参加者に、ストレスを軽減する効果があるとされる 「ゆっくりとした深呼吸」を促したところ、ストレスや不安を感じなくなり、目標の対立が主観的な時間感覚に与える影響が軽減された。 ・ただし時間感覚が回復したのは、タスクの内容がストレスや不安を対象としたものであった場合のみであった。 ・自分の感情を再評価(リアプライザル)を行ったグループは、時間に追われている感覚を低下させることができた。
結論としては、 『「目標間の対立」が生じると、ストレスや不安感が高まったり、それを媒介にして時間的圧力が大きくなる。』 ということでした。 例えば、 「おいしいものを食べる」ことと「健康になる」ことは対立しませんが、 「ジャンクフードを食べる」ことと「健康になる」ことは対立しますよね。 そういう場合には時間的圧力よりも、ストレスや不安感が大きくなるようです。
目標や計画を立てる時が非常に難しいところでして、何か計画を立てると細分化することになりますよね。 そうすると必然的に複数の目標が発生することが多く、時間がないと感じやすくなってしまうということになります。
この結果に対して研究者は、実験でも明らかになった2つの対処法を紹介していまして、 ・目標の対立がストレスや不安感を生み出していて時間がないと感じている場合には、 深呼吸や、ゆっくりとした呼吸(瞑想もOK)をして、いったん落ち着くこと。 ・リアプレイザル(不安や緊張を感じている時に、『自分は不安/緊張を感じているのではなく、ワクワクしているんだ!』と 捉えなおす)を行う とストレスや不安を軽減できて、時間に追われている感覚を押さえることができるようでした。
ちなみにこのリアプレイザルという手法ですが、スピーチの前やプレゼンの前、面接の前には、まあまあ効果的ではあるので、何度も試してはいるのですが、 これをやったとしても、緊張感や不安感が低下している実感はあまりありません(笑) 慣れない場面や特別な場面では誰でも緊張するものなので、そこは仕方がないみたい。 ですが、感情を押し殺すよりは遥かにマシ。くらいに捉えておくといいかもしれません。 (自分は緊張してないんだ!とか、緊張しているなあ、失敗したらどうしよう。みたいな)
リアプレイザルは怒りや不安、悲しみなどネガティブな感情であれば大体使えるみたいなので、 覚えておくとよさげでございます。 コツとしては、認知を捉えなおすことにありまして、 「この感情はなくならないけれど、感情の捉え方を変えることはできる」ことに基づいています。 ですのでこの研究の例でいえば、「あれもこれもやらなきゃ、、、」となっている時には、 「あれとこれをこなすことができたら今日の自分すごいわ」とか、 仕事であれば 「確かにやること多くて忙しいという事実は変わらないけれど、 それだけ覚えることがある、できることが増えるのだからがんばろっ!」 みたいに再評価できると良いみたいです。
私の知り合いでは、上司からの無茶ぶりがひどいと言っていましたが、 「でもすごく仕事ができる人だから、その人のペースに合わせていければ自分もスピードが上がるってことだし、 やりがいはあるよ」 と言っていました。 何でもかんでもリアプレイザルすれば良いわけではありませんが、 「行き場をなくしたネガティブな感情の上手な処理の仕方」 としては便利な手法ではあるので試してみてはいかがでしょうか。
0. 論文タイトル・URL
Pressed for Time? Goal Conflict Shapes how Time is Perceived, Spent, and Valued https://journals.sagepub.com/doi/10.1509/jmr.14.0130
1. その論文の目的・どこのリサーチか
2015年、デューク大学が時間と目標のコンフリクトに関する研究を行いました。
2. (先行研究とこれまでの問題)
みなさんは「時間に追われている」と感じることはありますでしょうか。
時間に追われていると話したら、 「時間に追われるのではなく、時間は追いかけましょう!」とか 「自分の大切な目標にまず向かいましょう!」 とか呑気なアドバイスを無神経にされた経験がある人もいるかもしれません。
先行研究では、時間的な圧力とストレスには正の相関があることがわかっておりまして、 いわゆる制限時間があると、不安やストレスを感じやすくなるのですね。 しかし、日常生活では時限爆弾のような「制限時間」があることはそこまで多くないのですが、
例えば、子育てをしながら、お仕事をしている主婦であれば、 『仕事にいって、保育園のお迎えにもいって、帰ったらご飯を作って、お風呂に入れて、 洗濯をして、お皿を洗って、、、、、、、、、、あああああああああああああああああああ』 みたいになってしまうことが往々にしてあると思います。 このような時に、人は「時間がない」「時間に追われている」と感じることはありますよね。
3. その論文の目的(具体的に)
じゃあそもそも ・「時間に追われている」ってどういうこと?どういう現象なの? ・どうすれば時間に追われている感覚を取り除くことができるの? ということも調べてくれた研究になります。
4. 方法
※実験が5つに分かれていて少しややこしくなってしまうので、1つ目の実験は詳しく紹介します。 残り4つは結果のみ記載しておきます。 1つ目の実験では 1125名の参加者を対象に ・時間の葛藤:時間がなくてできないと感じる目標を2つ書き出す(ex 副業もしたいけど、大学院で勉強もしたい) (ex 仕事をうまくこなす、愛する人と過ごすなど) ・お金の葛藤:お金がなくてできないと感じる目標を2つ書き出す(ex 貯金をしたいけど、素敵なお洋服を買いたい) ・一般的な葛藤:対立している目標なら何でもよし(健康になる、おいしいものを食べる) ・コントロール群:目標なら何でもよし に分けまして、次に ・主観的な時間認識 ・目標対立の認知度 についての質問に回答してもらいます。
5. 結果
その結果わかったこととして、 ・目標間の対立をより強く感じると、人々はより時間に追われていると感じる(F(3, 119) = 4.42, p < 0.05,) ・時間がなくてできないと感じる目標(M = 3.70; F(1, 119) = 12.66, p < 0.001) お金がなくてできないと感じる目標(M = 3.22; F(1, 119) = 4.90, p < 0.05) であったので、時間がなくてできないタイプの目標間の対立が起きると、より時間がないと感じる。
→ここまでで整理しておくと、時間がないと感じるのは、「複数のやりたいこと」が同時に存在していて対立している時 ということが示されました。つまり、 あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ、、、になっている時ですね。 逆に、目標が対立していないと時間的圧力は感じにくくなるので、複数のやりたいことがあったとしても、 対立していないと認知していればよいのです。 例えば、受験生だったとして、 「部活も受験勉強もあるんだよね、、」というと、 時間がないと感じますが、3年生の大会が終わり、部活がない状態になれば 受験勉強だけになるので時間的な余裕はできるはずですよね。これが葛藤がない状態です。
しかし、受験勉強をやっていく中で、 「数学も、世界史も、英語も点数が悪いから勉強しないといけない」 となると、また時間がないと感じるようになるわけです。
「受験勉強」をひとくくりで、マクロな視点でまとめておくと時間的圧力は小さいのですが、 細分化したり、目標が複数できることで時間がないと感じるようになります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 実験2~5結果 2~5は結果だけまとめておきますと、 ・時間がないと感じる感覚は、ストレスや不安を媒介としている。 ・目標間の対立が大きいと感じると、参加者が感じるストレスや不安が大きくなり、主観的な時間圧力が大きくなる。 ・時間による目標の対立ではない場合に関係なく、「目標間の対立」が生じると時間的圧力が大きくなる。 ・お金の豊かさは時間的圧力に関係ない ・実験4では、目標間の対立が大きいと感じている参加者に、ストレスを軽減する効果があるとされる 「ゆっくりとした深呼吸」を促したところ、ストレスや不安を感じなくなり、目標の対立が主観的な時間感覚に与える影響が軽減された。 ・ただし時間感覚が回復したのは、タスクの内容がストレスや不安を対象としたものであった場合のみであった。 ・自分の感情を再評価(リアプライザル)を行ったグループは、時間に追われている感覚を低下させることができた。
6. 結論・まとめ
結論としては、 『「目標間の対立」が生じると、ストレスや不安感が高まったり、それを媒介にして時間的圧力が大きくなる。』 ということでした。 例えば、 「おいしいものを食べる」ことと「健康になる」ことは対立しませんが、 「ジャンクフードを食べる」ことと「健康になる」ことは対立しますよね。 そういう場合には時間的圧力よりも、ストレスや不安感が大きくなるようです。
目標や計画を立てる時が非常に難しいところでして、何か計画を立てると細分化することになりますよね。 そうすると必然的に複数の目標が発生することが多く、時間がないと感じやすくなってしまうということになります。
この結果に対して研究者は、実験でも明らかになった2つの対処法を紹介していまして、 ・目標の対立がストレスや不安感を生み出していて時間がないと感じている場合には、 深呼吸や、ゆっくりとした呼吸(瞑想もOK)をして、いったん落ち着くこと。 ・リアプレイザル(不安や緊張を感じている時に、『自分は不安/緊張を感じているのではなく、ワクワクしているんだ!』と 捉えなおす)を行う とストレスや不安を軽減できて、時間に追われている感覚を押さえることができるようでした。
ちなみにこのリアプレイザルという手法ですが、スピーチの前やプレゼンの前、面接の前には、まあまあ効果的ではあるので、何度も試してはいるのですが、 これをやったとしても、緊張感や不安感が低下している実感はあまりありません(笑) 慣れない場面や特別な場面では誰でも緊張するものなので、そこは仕方がないみたい。 ですが、感情を押し殺すよりは遥かにマシ。くらいに捉えておくといいかもしれません。 (自分は緊張してないんだ!とか、緊張しているなあ、失敗したらどうしよう。みたいな)
リアプレイザルは怒りや不安、悲しみなどネガティブな感情であれば大体使えるみたいなので、 覚えておくとよさげでございます。 コツとしては、認知を捉えなおすことにありまして、 「この感情はなくならないけれど、感情の捉え方を変えることはできる」ことに基づいています。 ですのでこの研究の例でいえば、「あれもこれもやらなきゃ、、、」となっている時には、 「あれとこれをこなすことができたら今日の自分すごいわ」とか、 仕事であれば 「確かにやること多くて忙しいという事実は変わらないけれど、 それだけ覚えることがある、できることが増えるのだからがんばろっ!」 みたいに再評価できると良いみたいです。
7. どんな使い方ができる?
私の知り合いでは、上司からの無茶ぶりがひどいと言っていましたが、 「でもすごく仕事ができる人だから、その人のペースに合わせていければ自分もスピードが上がるってことだし、 やりがいはあるよ」 と言っていました。 何でもかんでもリアプレイザルすれば良いわけではありませんが、 「行き場をなくしたネガティブな感情の上手な処理の仕方」 としては便利な手法ではあるので試してみてはいかがでしょうか。