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SELF-FOCUS AND DEPRESSION: THE THREE-PHASE MODEL https://www.cambridge.org/core/journals/behavioural-and-cognitive-psychotherapy/article/abs/selffocus-and-depression-the-threephase-model/62B08A67F9A5847F03CB8269BCF7A927
大妻女子大学の2000年の研究で、自己注目に関するレビューになります。
『自己注目』という言葉をご存知でしょうか。
自己注目とは、自分の内側で生成された情報に対する意識のことで 自分の考え、思考、感情に注目することを指します。
自己注目はうつ病や抑うつ傾向と関係しておりまして、 自己注目が多い人ほど、 ・原因を自分に帰属する傾向の増加 ・自尊心の低下 ・落ち込みの増加 など、あまり自分の思考や感情に注意を向けすぎるのも良くないのでは?といわれていたりします。
Q.どんな時に自己注目するのか? 自己注目しやすい状況というものもありまして、先行研究によると ・対人状況(他人から容姿について何か言われたときなど) ・ネガティブ状況(嫌なことがあったときなど) ・ポジティブ状況(楽しいことがあったときなど) ・観察状況(映画やテレビ番組を見ているときや見た後など) ・独り状況(家で一人でいるときなど) ・羨望状況(楽しそうにしている人を見たときなど) このような状況の時に人は自己注目状態に陥りやすいとのことで、 思い当たるものばかりではないでしょうか。
また、うつ病や抑うつ傾向が高い人は、 失敗した後に自己注目を行いやすく、 特に疾患を抱えていない人は 成功した後に自己注目を行いやすいことがわかっていたりと、真逆の反応を示すようです。
本レビューでは、 ・その自己注目をどのようにすればコントロールできるのか ・自己注目から回復するにはどうしたら良いのか をまとめてくれています。
・自己注目は3つの段階に分けることができる(図2を参照) ①刺激の入力・状況の発生 ②自己注目の操作 ③自己注目の維持 ・自己注目が起こる前には必ず、状況からの刺激の入力があり、基本的に自己注目の発生を避けることはできない。 (また、自己紹介をしたり、日記を書く、鏡に映る自分を見る、 思いでの歌を聞く、思い出の写真を見るなど、意図的に自己に注目が向いてしまうケースもある)(①) ・自分自身に対して機能不全的な態度をとっている人や、 自己に対して非現実的に高い目標をもっている人、 自己概念(自分の人間像やパーソナリティ、セルフイメージ)にネガティブなイメージをしている人 は、自己焦点化によって自分の欠点を自覚しやすくなり、その後、抑うつ的な気分が生じることになる。 →入力された刺激(ex,人から嫌なことを言われる、そのことをふと思い出すなど)に対して、 自分がどう捉えるか(ネガティブなものやポジティブな解釈など)は、自己概念や自己形成してきた認知に影響されやすい。(②) ・①でほぼ自動的に発生した自己注目を、②でネガティブなものとして思考が開始された場合、 ③ではそれが自動的に維持される。自己注目に対してネガティブな思考が処理されることで、抑うつな気分が高まっていく。 ・また、自己に関するネガティブな情報を選択的に受け入れ、ポジティブな情報を受け入れなくなる傾向もある。 ・自己注目は自分が経験したネガティブな気分を直接強める (つまり、認知的なプロセスを経由しないため、そこに思考が介在する間もなくネガティブな気分が強まる。)
ここまでをまとめると、 ・自己注目は自然に発生する ・自己注目がネガティブなものにリンクすると、そのまま維持されやすい ・しかも気づけないので、気が付けばネガティブな気分が強まっている こんな感じでした。これに対して研究者のコメントで対処法を紹介しておりまして、
・予防には特に、ネガティブな出来事を経験した後に、注意を自己から環境に向けることが有効である ・ネガティブな認知をポジティブな認知に捉えなおす ・ネガティブな気分の時に気を紛らわせて、気分のことを考えないようにすること ・環境を変えて、より気を紛らわせるようにすること を上げていまして、これらは反芻思考が多い方にも有効な手法になっています。 方法は気を紛らわせることなら何でも良くて、 運動やゲーム、アニメ、映画、温泉、サウナ、読書など方法は様々。 15~30分ほど気を紛らわすだけでも効果がありますし、それ以上でもOK。 赤ちゃんが次々と身の回りのものに興味が移るのと同じように、 私たちは存外に赤ん坊と大して変わらない性質を持っているのです。
今回の研究で個人的にとても面白かったことは、 ネガティブな自己注目は気分を落ち込ませるのはさながら、 ポジティブな自己注目も抑うつ傾向と関係しているということです。
例えば、 ・理想の自分とは何か ・どんな生活を送りたいか ・いまの自分は幸せか ・理想の生活とは何か ・本当の自分らしいとは何か ・ホントの自分でいられているのか ・自己とは何か などなど、一見ポジティブな内容に見える自己注目も、気分の低下と関係しています。 自己啓発や自己分析、自己認識など、 自分について、もしくは自分の思考や在り方について考えることが好きな方もいるかもしれませんが、 やり過ぎには注意ということでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ここからは少し余談ですが、 今回、自己注目のメカニズムを見てきましてが、自己注目でメンタルが病むのは もともと、自己にまつわる思考はネガティブなものに向かいやすいという性質を持っているからです。 その方が生きる上で生存確率が高まったから、ということは有名な説ですが、 ネガティブな思考をする方が生存率が高まるハードウェアを持っているのが現在の人間で、 そのシステム自体は5万年前から変わっていないと言われています。 つまり、いまのハードウェアは2021年を生きる人間にとって適応したものになっていないのですね (その反面、技術はどんどん進化していくので、それに肉体や精神ができていないともいえます)。 これはどういうことかというと、 任天堂switchが発売されているのに、switchのソフトを64で動かそうとしているようなものです。
技術(食品や機械等)は進化しているのに、人体のシステムは基本進化していない。 であれば、その技術に適応した行動を取らないと、身体が不調を起こすことは自明の理でしょう。 これは人間関係のコミュニケーションについても同じことが言えます。 限られた人間としか交流することのなかったハードウェアを持っている人間にとって SNSや様々なツールで、まるで無限に人とつながることができる時代です。 シンプルに考えて容量オーバーになってしまう。それは心身の不調に影響を与えるかもしれない。 これを前提において生活している内に、個人的にではありますが今までの生活の中に気づかずにあった ノイズに気づくことが最近増えてきた気がしています。 何か参考になりましたら幸いです、それでは。
0. 論文タイトル・URL
SELF-FOCUS AND DEPRESSION: THE THREE-PHASE MODEL https://www.cambridge.org/core/journals/behavioural-and-cognitive-psychotherapy/article/abs/selffocus-and-depression-the-threephase-model/62B08A67F9A5847F03CB8269BCF7A927
1. その論文の目的・どこのリサーチか
大妻女子大学の2000年の研究で、自己注目に関するレビューになります。
2. (先行研究とこれまでの問題)
『自己注目』という言葉をご存知でしょうか。
自己注目とは、自分の内側で生成された情報に対する意識のことで 自分の考え、思考、感情に注目することを指します。
自己注目はうつ病や抑うつ傾向と関係しておりまして、 自己注目が多い人ほど、 ・原因を自分に帰属する傾向の増加 ・自尊心の低下 ・落ち込みの増加 など、あまり自分の思考や感情に注意を向けすぎるのも良くないのでは?といわれていたりします。
Q.どんな時に自己注目するのか? 自己注目しやすい状況というものもありまして、先行研究によると ・対人状況(他人から容姿について何か言われたときなど) ・ネガティブ状況(嫌なことがあったときなど) ・ポジティブ状況(楽しいことがあったときなど) ・観察状況(映画やテレビ番組を見ているときや見た後など) ・独り状況(家で一人でいるときなど) ・羨望状況(楽しそうにしている人を見たときなど) このような状況の時に人は自己注目状態に陥りやすいとのことで、 思い当たるものばかりではないでしょうか。
また、うつ病や抑うつ傾向が高い人は、 失敗した後に自己注目を行いやすく、 特に疾患を抱えていない人は 成功した後に自己注目を行いやすいことがわかっていたりと、真逆の反応を示すようです。
3. その論文の目的(具体的に)
本レビューでは、 ・その自己注目をどのようにすればコントロールできるのか ・自己注目から回復するにはどうしたら良いのか をまとめてくれています。
5. 結果
・自己注目は3つの段階に分けることができる(図2を参照) ①刺激の入力・状況の発生 ②自己注目の操作 ③自己注目の維持 ・自己注目が起こる前には必ず、状況からの刺激の入力があり、基本的に自己注目の発生を避けることはできない。 (また、自己紹介をしたり、日記を書く、鏡に映る自分を見る、 思いでの歌を聞く、思い出の写真を見るなど、意図的に自己に注目が向いてしまうケースもある)(①) ・自分自身に対して機能不全的な態度をとっている人や、 自己に対して非現実的に高い目標をもっている人、 自己概念(自分の人間像やパーソナリティ、セルフイメージ)にネガティブなイメージをしている人 は、自己焦点化によって自分の欠点を自覚しやすくなり、その後、抑うつ的な気分が生じることになる。 →入力された刺激(ex,人から嫌なことを言われる、そのことをふと思い出すなど)に対して、 自分がどう捉えるか(ネガティブなものやポジティブな解釈など)は、自己概念や自己形成してきた認知に影響されやすい。(②) ・①でほぼ自動的に発生した自己注目を、②でネガティブなものとして思考が開始された場合、 ③ではそれが自動的に維持される。自己注目に対してネガティブな思考が処理されることで、抑うつな気分が高まっていく。 ・また、自己に関するネガティブな情報を選択的に受け入れ、ポジティブな情報を受け入れなくなる傾向もある。 ・自己注目は自分が経験したネガティブな気分を直接強める (つまり、認知的なプロセスを経由しないため、そこに思考が介在する間もなくネガティブな気分が強まる。)
6. 結論・まとめ
ここまでをまとめると、 ・自己注目は自然に発生する ・自己注目がネガティブなものにリンクすると、そのまま維持されやすい ・しかも気づけないので、気が付けばネガティブな気分が強まっている こんな感じでした。これに対して研究者のコメントで対処法を紹介しておりまして、
・予防には特に、ネガティブな出来事を経験した後に、注意を自己から環境に向けることが有効である ・ネガティブな認知をポジティブな認知に捉えなおす ・ネガティブな気分の時に気を紛らわせて、気分のことを考えないようにすること ・環境を変えて、より気を紛らわせるようにすること を上げていまして、これらは反芻思考が多い方にも有効な手法になっています。 方法は気を紛らわせることなら何でも良くて、 運動やゲーム、アニメ、映画、温泉、サウナ、読書など方法は様々。 15~30分ほど気を紛らわすだけでも効果がありますし、それ以上でもOK。 赤ちゃんが次々と身の回りのものに興味が移るのと同じように、 私たちは存外に赤ん坊と大して変わらない性質を持っているのです。
7. どんな使い方ができる?
今回の研究で個人的にとても面白かったことは、 ネガティブな自己注目は気分を落ち込ませるのはさながら、 ポジティブな自己注目も抑うつ傾向と関係しているということです。
例えば、 ・理想の自分とは何か ・どんな生活を送りたいか ・いまの自分は幸せか ・理想の生活とは何か ・本当の自分らしいとは何か ・ホントの自分でいられているのか ・自己とは何か などなど、一見ポジティブな内容に見える自己注目も、気分の低下と関係しています。 自己啓発や自己分析、自己認識など、 自分について、もしくは自分の思考や在り方について考えることが好きな方もいるかもしれませんが、 やり過ぎには注意ということでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ここからは少し余談ですが、 今回、自己注目のメカニズムを見てきましてが、自己注目でメンタルが病むのは もともと、自己にまつわる思考はネガティブなものに向かいやすいという性質を持っているからです。 その方が生きる上で生存確率が高まったから、ということは有名な説ですが、 ネガティブな思考をする方が生存率が高まるハードウェアを持っているのが現在の人間で、 そのシステム自体は5万年前から変わっていないと言われています。 つまり、いまのハードウェアは2021年を生きる人間にとって適応したものになっていないのですね (その反面、技術はどんどん進化していくので、それに肉体や精神ができていないともいえます)。 これはどういうことかというと、 任天堂switchが発売されているのに、switchのソフトを64で動かそうとしているようなものです。
技術(食品や機械等)は進化しているのに、人体のシステムは基本進化していない。 であれば、その技術に適応した行動を取らないと、身体が不調を起こすことは自明の理でしょう。 これは人間関係のコミュニケーションについても同じことが言えます。 限られた人間としか交流することのなかったハードウェアを持っている人間にとって SNSや様々なツールで、まるで無限に人とつながることができる時代です。 シンプルに考えて容量オーバーになってしまう。それは心身の不調に影響を与えるかもしれない。 これを前提において生活している内に、個人的にではありますが今までの生活の中に気づかずにあった ノイズに気づくことが最近増えてきた気がしています。 何か参考になりましたら幸いです、それでは。