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Gender Differences in the Consequences of Divorce: A Study of Multiple Outcomes https://link.springer.com/article/10.1007/s13524-018-0667-6
アムステルダム大学のトーマス・レオポルドさんが2018年に行った研究で、離婚における男女の性差に関する研究です。
筆者も20代半ばになり、周囲の友人が結婚する年齢になってきました。 (もとい友達は少ない方なので、結婚式に呼ばれるというライフイベントもないのでございますが。)
一方で離婚を選択される方も中にはいらっしゃいます。 これまでの先行研究では、離婚は男性と女性、どちらに不利になりやすいの? ということも調べられていまして、 男性では離婚によって、 ・別居後の健康状態の低下や主観的幸福感の低下 ・家族生活への満足度の低下 ・親権制度への不満 ・男性は結婚によって健康状態が向上するが、離婚すると健康の低下や死亡のリスクの上昇 ・生活満足度の低下 ・孤独感や社会的孤立感の上昇 が男性においては見られる傾向があります。
それに対して女性においては、 ・世帯収入と生活水準の低下 ・家の所有権を失うリスクが高い ・離婚後1年の女性の世帯収入は、元夫の3分の2ほど ・再婚する可能性が低く、シングルマザーにとっては経済回復が困難になりやすい状況におかれる など、男性が心理的な側面での不調を直接的に受けることに対し、 女性は経済状況の不安定性から、心理的な不調を発現するリスクにつながっていることがわかっております。
本研究では、経済、住居・家事、健康・福祉、社会の4つの領域をカバーする 複数の尺度の年次変化を短期~中期的に追跡することで、離婚の影響における男女差を捉えることを目的としました。
実験開始時に婚姻関係にあったN=18030人のうち、N = 1220人が観察期間(1984年~2015年)中に 離婚したサンプルを分析しました。 大きく分けると4つの領域を分析しまして、 (1)客観的・主観的な経済指標 (2)住居および家事の指標 (3)精神的な健康、身体的な健康、一般的な健康、健康行動の指標 (4)子育ての状況、友人や親戚への訪問の頻度、家族生活への満足度、孤独感などを含む6つの社会的状況に関する指標 を分析しております。
ざっくり結果を見ていきますと、 ・女性が離婚を選択する時、離婚の約1年前から精神的な苦しみを感じ始めているため、 女性の幸福感の低下は離婚の1年前には始まっており、それに対し男性にとっては急激な崩壊のように感じるため 短期的には、男性は幸福感の低下が大きくなりやすい。 ・中期的に見ると 1)主観的な経済的幸福 (2)住居の移動、家事の満足度 (3)精神的・身体的な健康、心理的な幸福感 (4)再婚の可能性や、友人・親戚との社会的関係性 については、女性も男性も離婚による大きな違いはなかった。 ・男性は離婚した年に、人生に対する満足度、家庭に対する満足度が大きく低下したが、 その後の数年間で、これらの結果における男女差はなくなった。 ・女性における経済的な満足度の低下も短期的には見られたが、中期的にみると緩和され性差は見られなくなった ・家計収入と貧困リスクの男女格差は時間の経過とともに幾分縮小したものの、それでも大きな差が見られた ・男性よりも女性から離婚を切り出す可能性の方が高く、生活満足度を見ると離婚は女性にとって安らぎになっているが、 男性にとっては苦痛になりやすい。 ・女性は離婚前の収入と離婚後の収入を比較して、最初は恵まれていないと感じていても、 時間の経過とともに調整されていったり、また離婚による経済的な影響を予測した上で、それを受け入れているので、 例え経済状況が離婚前よりも悪くなったとしても、離婚に踏み切る選択ができるのはこのためである。
離婚によって男性は短期的に精神的に苦しみやすく、女性は慢性的な経済的ストレスを受けやすいという結果になりました。 しかし以前紹介した研究にもあったように、 中期的には「慣れ・適応」の状態に入っていくため、幸福感や満足度もベースラインに戻っていきますし、 経済的な満足度も現在の自分の生活に必要な分は確保できるように調整していく模様。 ただそれでも、社会的に不利な状況にいる場合(シングルマザーや疾患を抱えているなど)にいる場合は 経済的リスクを抱えてしまう場合もあるようです。
こう見ると、「女性って強いなぁ」と科学的に(エビデンスを通しても)思いました。 ・経済的に不利な状況になったとしても別れる決断ができる ・離婚を切り出すのはたいてい女性から ・精神的な苦痛は男性の方が大きい これって、いかに男性が女性に対して精神的に頼っているか、ということを表しているのではないでしょうか。
男性は精神的に弱い生き物である、ということを言いたいのではなく、 男性は女性に対して ・精神的に頼りにしたい ・精神的な支えとして女性がいることが、安心感になっている ということが考えられます。 幸福を求めるように脳は設計されていないので、女性に対して求めていることは 不安感の軽減だったり、安らぎ、安心感、リラックスできる場 である可能性が高そうだなあと感じましたね~、偉大だ、、。
0. 論文タイトル・URL
Gender Differences in the Consequences of Divorce: A Study of Multiple Outcomes https://link.springer.com/article/10.1007/s13524-018-0667-6
1. その論文の目的・どこのリサーチか
アムステルダム大学のトーマス・レオポルドさんが2018年に行った研究で、離婚における男女の性差に関する研究です。
2. (先行研究とこれまでの問題)
筆者も20代半ばになり、周囲の友人が結婚する年齢になってきました。 (もとい友達は少ない方なので、結婚式に呼ばれるというライフイベントもないのでございますが。)
一方で離婚を選択される方も中にはいらっしゃいます。 これまでの先行研究では、離婚は男性と女性、どちらに不利になりやすいの? ということも調べられていまして、 男性では離婚によって、 ・別居後の健康状態の低下や主観的幸福感の低下 ・家族生活への満足度の低下 ・親権制度への不満 ・男性は結婚によって健康状態が向上するが、離婚すると健康の低下や死亡のリスクの上昇 ・生活満足度の低下 ・孤独感や社会的孤立感の上昇 が男性においては見られる傾向があります。
それに対して女性においては、 ・世帯収入と生活水準の低下 ・家の所有権を失うリスクが高い ・離婚後1年の女性の世帯収入は、元夫の3分の2ほど ・再婚する可能性が低く、シングルマザーにとっては経済回復が困難になりやすい状況におかれる など、男性が心理的な側面での不調を直接的に受けることに対し、 女性は経済状況の不安定性から、心理的な不調を発現するリスクにつながっていることがわかっております。
3. その論文の目的(具体的に)
本研究では、経済、住居・家事、健康・福祉、社会の4つの領域をカバーする 複数の尺度の年次変化を短期~中期的に追跡することで、離婚の影響における男女差を捉えることを目的としました。
4. 方法
実験開始時に婚姻関係にあったN=18030人のうち、N = 1220人が観察期間(1984年~2015年)中に 離婚したサンプルを分析しました。 大きく分けると4つの領域を分析しまして、 (1)客観的・主観的な経済指標 (2)住居および家事の指標 (3)精神的な健康、身体的な健康、一般的な健康、健康行動の指標 (4)子育ての状況、友人や親戚への訪問の頻度、家族生活への満足度、孤独感などを含む6つの社会的状況に関する指標 を分析しております。
5. 結果
ざっくり結果を見ていきますと、 ・女性が離婚を選択する時、離婚の約1年前から精神的な苦しみを感じ始めているため、 女性の幸福感の低下は離婚の1年前には始まっており、それに対し男性にとっては急激な崩壊のように感じるため 短期的には、男性は幸福感の低下が大きくなりやすい。 ・中期的に見ると 1)主観的な経済的幸福 (2)住居の移動、家事の満足度 (3)精神的・身体的な健康、心理的な幸福感 (4)再婚の可能性や、友人・親戚との社会的関係性 については、女性も男性も離婚による大きな違いはなかった。 ・男性は離婚した年に、人生に対する満足度、家庭に対する満足度が大きく低下したが、 その後の数年間で、これらの結果における男女差はなくなった。 ・女性における経済的な満足度の低下も短期的には見られたが、中期的にみると緩和され性差は見られなくなった ・家計収入と貧困リスクの男女格差は時間の経過とともに幾分縮小したものの、それでも大きな差が見られた ・男性よりも女性から離婚を切り出す可能性の方が高く、生活満足度を見ると離婚は女性にとって安らぎになっているが、 男性にとっては苦痛になりやすい。 ・女性は離婚前の収入と離婚後の収入を比較して、最初は恵まれていないと感じていても、 時間の経過とともに調整されていったり、また離婚による経済的な影響を予測した上で、それを受け入れているので、 例え経済状況が離婚前よりも悪くなったとしても、離婚に踏み切る選択ができるのはこのためである。
6. 結論・まとめ
離婚によって男性は短期的に精神的に苦しみやすく、女性は慢性的な経済的ストレスを受けやすいという結果になりました。 しかし以前紹介した研究にもあったように、 中期的には「慣れ・適応」の状態に入っていくため、幸福感や満足度もベースラインに戻っていきますし、 経済的な満足度も現在の自分の生活に必要な分は確保できるように調整していく模様。 ただそれでも、社会的に不利な状況にいる場合(シングルマザーや疾患を抱えているなど)にいる場合は 経済的リスクを抱えてしまう場合もあるようです。
7. どんな使い方ができる?
こう見ると、「女性って強いなぁ」と科学的に(エビデンスを通しても)思いました。 ・経済的に不利な状況になったとしても別れる決断ができる ・離婚を切り出すのはたいてい女性から ・精神的な苦痛は男性の方が大きい これって、いかに男性が女性に対して精神的に頼っているか、ということを表しているのではないでしょうか。
男性は精神的に弱い生き物である、ということを言いたいのではなく、 男性は女性に対して ・精神的に頼りにしたい ・精神的な支えとして女性がいることが、安心感になっている ということが考えられます。 幸福を求めるように脳は設計されていないので、女性に対して求めていることは 不安感の軽減だったり、安らぎ、安心感、リラックスできる場 である可能性が高そうだなあと感じましたね~、偉大だ、、。