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Relationship between minimalism, happiness, life satisfaction, and experiential consumption #118

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0. 論文タイトル・URL

Relationship between minimalism, happiness, life satisfaction, and experiential consumption https://link.springer.com/article/10.1007/s43545-021-00191-w

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2021年、ブラジルのカシアスドスル大学が行った、ミニマリズムと幸福度に関する最新の研究です。

2. (先行研究とこれまでの問題)

ここ数年でよく耳にする機会が増えた「ミニマリスト」「ミニマリズム」という考え方があります。 コトバンクでの定義では >持ち物をできるだけ減らし、必要最小限の物だけで暮らす人。 自分にとって本当に必要な物だけを持つことでかえって豊かに生きられるという考え方で、大量生産・大量消費の現代社会において、新しく生まれたライフスタイル とされていますが、 概念として新しいと定義や主張も様々。 論文では >物質的蓄積に抵抗したり、物への購入行動を慎重にしたりすることで、個人の物質的資産を大幅に削減する持続可能なライフスタイルのこと などと記されていますが、個人的にわかりやすい解釈をするなれば、 ・身の回りのモノを大事なものだけにできる「技術」 ・大切なものにフォーカスしている人 であって、Youtube 大学の中田敦彦さんの言葉を借りるなら 『とにかくモノを捨てる変態』 『6畳一間で、パソコンの前で正座してにっこり微笑んでいる不思議な人』 ではないのです。

大事なモノだけにできるといっても、生活必需品も必要なモノに入るので何でもかんでも 捨てる人のことではありません。 また「必要最低限のモノで生活する」と聴くと、本当に必要なものしか持たないような印象を抱かれがちですが、 よくよく考えてみると私たちは一日の中で「必要最小限のモノ」を使って生活していると捉えることもできるでしょう。 つまり普段から使っているものは最小限のモノにカウントされるので、 毎日の生活はミニマルである、はずなのです。

しかし、モノが捨てられない人は日常生活で使っていないものに対しても、 ・思い出 ・愛着 ・固執 ・収集心 ・まだ使うかもしれない ・いつか見返すかもしれない という幻想から離れることが難しいので、たくさん所有してしまうのです。(スマホアプリなんかも同様)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー さて、ここからが本題です。 ◆ミニマリストって幸せなの? とはいえ、私たちがモノを捨てられない、所有したがるのは人間の特性なので無理もないこと。 そもそも、モノを捨てる技術やモノを手放す技術を私たちは持っていないのです。 しかしこの情報溢れる、大量生産される社会においては、このスキルがあることで 自分の生活に必要なものを選別できるので、ある意味で本来の状態に戻れるわけでございます。 私たちが持つことができる容量(データや物質を含む)は限られているので、 それを整理したり、適切な量を維持することが必要になります。

そんなミニマリストは比較的新しいので研究も多くはありませんが、 これまでは別の言い方で「物質主義」と呼ばれていまして、 概ね「衣食住」や「経済的なこと」など物品に関するものの価値を高く置く考え方がありました。 ・たくさんお金があれば幸せ ・モノが少ないよりも多くあれば幸せになれる という考え方がありました。直感的にはモノがたくさんあれば幸せになりそう! と思いますが、実際のところはその真逆。 たくさんのものを得た人は次第に消費を制限し、所有物を減らし、 自己改善や大きな気づきを得ようとすることがわかっています。 たくさん持ってから、「ああ、私にはこんなに必要なかった」と気づくわけですな。

3. その論文の目的(具体的に)

本研究では、ミニマリズム(自発的に生活をシンプルなものにすること)が ・幸福感 ・生活満足度(人生の満足度) ・経験的消費(=コト消費と呼ばれ、ものではなく体験や経験に対して消費、投資を行うこと) とどのように関係しているかを検証することです。

4. 方法

調査はアンケート調査で行われ、395名の参加者のデータを対象に ・生活満足度 ・幸福度尺度 ・ミニマリズム尺度 ・経験的購買傾向尺度 について尋ねて分析を行いました。

5. 結果

結果、何がわかったかといいますと、 ・ミニマリズムの人は経験的消費にお金を使う傾向がある(β=0.235) ・経験的消費は幸福度と関係している(β=0.167) ・幸福度の54%を説明していたのは、人生の満足度と経験的消費であった ・ミニマリズムを実践しても幸福度とは何ら関係がなかった(β=-0.008)

6. 結論・まとめ

ということで、シンプルな生活をしても幸福度は上がらないよ! という結果になりましたが、注意しておきたいことを説明しておきますと、 ・ミニマリズムを実践(シンプルな生活を実践)しても幸福度に影響がなく、これは生活のスタイルが幸福度に影響を与えているというよりも、人生の満足度と経験的消費の方が幸福度には重要であったということ。 ・ミニマリズムを実践することで、モノに対する消費が減り、経験に対して消費に費やすことができるので それが結果的に幸福度につながる可能性はある。 ・意識的に(半ば節約などで無理に)ライフスタイルを崩してまで行うミニマリズムでは幸福度を高めない といった感じですね。 偶然にも研究者のコメントと同じ意見でして、

ミニマリズムは直接的には幸福に影響を与えないとしても、体験的消費を通じて間接的に幸福に影響を与える可能性があることがわかりました。つまり、経験的消費が幸福に直接的で重要な影響を与え、ミニマリズムが経験的消費を刺激するならば、ミニマリズムは幸福に間接的な影響を与える可能性があるということです。これがミニマリズムと幸福との関わり方の一つかもしれません。

と仰っておりました。

7. どんな使い方ができる?

根本的には、幸福度とSWB(主観的幸福感)が関係している以上、 ・ミニマリズムの実践で主観的幸福感が高まるならば、 ミニマリズムは幸福度高めるんじゃない? って説もありそうでした。とはいえ、我慢は心理的にも身体的にもよくないので、 ミニマリズムへの誤った認識は注意したいところ。

間違っても 『とにかくモノを捨てる変態』 『6畳一間で、パソコンの前で正座してにっこり微笑んでいる不思議な人』 ではありませんのであしからず。

ーーー備考ーーー この研究の少し微妙なところは、 ・Googleフォームを使ったオンラインでの回答であること ・母集団に採用したグループが妥当であると判断した根拠が薄いこと ・幸福度尺度の項目が少なすぎること ・説明変数βの値が小さい といった感じなので、これらがパッと見た感じどうなんだろう? ちょっとエビデンス弱いかな?と思いまして、わかる方いらっしゃったら教えていただきたいです。。

◆どうすればミニマリストになれるの? というお話はぜひ中田さんのYouTube大学のミニマリスト放送を 参考にしていただければと思います。