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Does Forming Implementation Intentions Help People with Mental Health Problems to Achieve Goals? A Meta-Analysis of Experimental Studies with Clinical and Analogue Samples #123

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0. 論文タイトル・URL

Does Forming Implementation Intentions Help People with Mental Health Problems to Achieve Goals? A Meta-Analysis of Experimental Studies with Clinical and Analogue Samples https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bjc.12086

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2015年にイギリスのシェフィールド大学が行った「メンタルヘルス不調者による習慣化」に関するメタ分析になります。

2. (先行研究とこれまでの問題)

習慣化といいますと、If then planning は有名なところですね。 If then planning とは目標達成や習慣化のテクニックで、 If (もし~したら)then(~する)というIf then の構文に当てはめて行う習慣化のテクニックであり、 その効果も高く習慣化と言えばIf then planning に当てはめて考えれば大丈夫、と言えるほど最強の習慣化テクニックと言われております。 例えば、 ・起床してから顔を洗う、とか ・布団に入る前に歯を磨く といった行動は多くの人が自然とやっていることですが、これにもIf then が用いられていて (If)布団から出たら (then)洗面所で顔を洗う

(If)ベッドに入りたくなったら (then)歯を磨く という行動にもIf thenが用いられています。

そんなIf then planning ですが、臨床場面でも使うことができるのでは? と考えられていまして、例えば (If)反芻思考(何度も同じ思考を繰り返してしまう)をしていることに気づいたら(then)テトリスをする このように使うことができれば、意識を反芻思考から逸らすことができ、精神疾患やうつ病に悩む患者さんにも応用することができそうですよね。

しかしながら反論もありまして、 不安症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、統合失調症、うつ病などの認知機能に関する研究では、 彼らは一般の人々に比べて記憶や実行機能が劣っていることがわかっているのだから、 If then に当てはめても実行機能(記憶力や計画力)が低いから行動できないんじゃないの? と、このように考えられてしまうようです。

しかし、これは私たちにも言えることでして、おしなべて言うならば ・メンタルヘルスに不調を抱えている時 ・気分が落ち込んでいる時 ・なぜかやる気が起きない時 こういった時には目標達成のための行動に移ることができず、 「今日は諦めて明日にしよう」と先延ばしをしてしまう、なんてことは少なくないはず。

3. その論文の目的(具体的に)

そこで本研究では、メンタルヘルス問題を抱える人々の目標達成に対する実行意図の形成の効果をメタ分析を用いて調査しました。 つまり、様々な疾患や障害を抱える参加者がIf then planningを用いることで、 目標達成行動(体活動の増加、臨床症状の管理、抑制・記憶・注意力の向上・促進など) に繋がるかどうかを検証した論文のみをメタ分析にかけているということになります。

4. 方法

用いられたサンプルはDSM-IV/ICD-10の診断を受けた人(認知症、気分障害、神経発達障害、依存症、ADHDなどを含む)であり、 目標達成の尺度には、タスクパフォーマンス(例:実行機能)、行動の変化(例:身体活動レベル、出席率)、 結果(例:不安のレベル)が含まれています。 メタ分析の結果、2977件の研究から以上の条件に適確な29件の研究(N = 1,652 )が抽出されました。 また、ほとんどの研究では実験条件の参加者に目標をサポートするためのif-thenプランを形成するよう求めるだけで、 実施意図の形成が目標達成に及ぼす効果を検討していました。

5. 結果

実施意図の形成は目標達成に大きな効果があった(d = 0.99, k = 28, N = 1,636) ※1 この値はd=4.99という異常値を除いた上での結果である。 ※2 効果量の大きさは、d = 0.20は小さな効果量、d = 0.50は中程度の効果量、d = 0.80は大きな効果量としている。

精神疾患(d+ = 0.96),発達障害(d+ = 0.39),脳損傷(d+ = 1.13)の被験者を対象とした研究では、効果の大きさに有意な差は見られなかった

・本結果から臨床面においては、不安レベルの低減(例:Varley et al., 2011; Webb et al., 2010)、統合失調症患者(例:Brandstätter et al., 2001; Garrett, 2010)またはADHD患者(例:Gawrilow et al., 2011b)における認知機能の向上などに活用することができると考えられる

6. 結論・まとめ

まとめると、If then planning はメンタルヘルスに不調を抱えている人にでも超効果的だよ! ということがわかりました。脳損傷を負った患者にも有効なんて半端ないですね。 この結果に対し研究者は、

本研究の結果は、実施意図を持つことでメンタルヘルス問題を抱える人々に対する現在の治療アプローチを強化できる可能性があるということである。具体的には、いつ、どこで、どのようにして目標を達成するのかを「if-then」形式で明示するように促すことで、結果が改善される可能性が高い。例えば、if-then planning は、治療セッションにおける課題を完了することを促進したり、ウェルビーイングを促進するような行動を開始することを支援するために用いられるかもしれない。

と述べておりましたが、合わせてIf thenのコツと注意点を最後に紹介しておりました。

◆習慣的な反応を無視したり、否定してはいけない 例:「不安を感じたら、この感情を無視しよう」みたいなもの

◆If thenを行って失敗した場合にも、自己批判や失敗した行動への反芻をしないこと 例:「なんでIf thenで計画したのにうまくいかなかったんだろう、やっぱり自分の意志力が弱いからなんじゃないかな、、。もっとこうすればよかったのかな、、」など。

◆計画を立てる人が、その目標を追求する動機を持っていること ・根本的な動機が弱かったり、達成したいことについて考えを変えてしまったりすると、計画を立てても効果が出にくいことがエビデンスで示されているため ・自分の中での矛盾が発生している場合も注意。やらされごとであったり自分の価値観と矛盾していると効果が得られない

コツは「いつ、どこで、どのようにして目標を達成するのかを「if-then」形式で明示する」ことで、 もしIf thenがうまくいかなかった場合には、この条件に当てはめられているかを考えてみる

完璧主義の強い人々にとって、If then planningは実際には逆効果であるという証拠があり、 もしあなたが完璧主義(もしくは強迫性障害など)の場合には避けた方が良いかもしれない

7. どんな使い方ができる?

今回はメンタルヘルス不調者に関するIf then planningの研究を紹介してきました。 個人的には最後のまとめで書いたことのどれも重要なポイントだと感じております。

実際のところ、If then で計画を事前に立てていない場合は、習慣的な行動に流れることがわかっているので、 ストレス環境下だったり、疲れていたりすると、「あー今日も寝る前にYoutube 見て寝るの遅くなっちゃったなー」みたいなことが起こるわけですが、

If thenで「寝る前にYoutube を見たくなったら、代わりに小説を読む」 (すぐ手の届くところに小説をおいておくとか、読む場所を組み込んでおく、なども計画時には大切なポイント!) などもおすすめです。 ただし、ここで大切になってくるのは、 ・そもそも大して本を読みたいと思っていない ・If thenの計画自体が中途半端になっている といったことが割とよくあります。 (If then自体は知っていたけど、あまり活用していない人にありがちかも、、)

ですので、もしやるならば「本気で現在の行動や習慣を変えたい時」に用いることがおすすめかなーと。 そうでないと、 「If thenやっても、あんまりうまくいかないんだよねー」 「If thenでうまくいかなかったから、他の方法ないの?」 「自分には向いてないんだわー」 「If thenでだめなら、自分には行動なんて変えられないってことだわ」 みたいなことを言い始めたりしますので、、、(笑)