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Student anxiety and fear of negative evaluation in active learning science classrooms https://www.researchgate.net/publication/339444503_Student_Anxiety_and_Fear_of_Negative_Evaluation_in_Active_Learning_Science_Classrooms
セントラルフロリダ大学とアリゾナ州立大学らが2020年に行った、アクティブラーニングと学生の不安感に関する研究です。
不安というのはごく自然な感情だよ!というのはここ最近受け入れられてきた考え方ですが、 不安は良くないものだ、不安感を静めなきゃと考えてしまうのも、人間の自然な反応でもあります。 不安があるということは、何か危機が迫っていることを知らせてくれる合図のようなものなので、むしろ生存には必要な反応であるわけです。不安感を感じなければ、必要な準備を怠り、自分の身や立場を危険にさらすかもしれませんからね。
心理学で「不安」と言えば、状態不安と特性不安が最もメジャーな区分としてありまして、 ・状態不安:一般的な感情状態としての不安、何かの出来事や刺激に対して起きる状態としての不安 (人前で話す準備をしているとき、リスクの高い試験を受けるときなど)
・特性不安:その個人の気質、パーソナリティとしての不安 にわけて考えられています。 また、不安は高すぎると有害ですが、低すぎてもやる気の低下につながるため、適度な不安は効果的だよーって話もあったりします。ここはストレスとも似ていますね。
最近では学習効果を高めるために「アクティブラーニング」というものがありまして、日本語では「能動的学習」と呼ばれるもの。目的としては
グループワークやディベートが一例としてあげられ、学習者の認知、倫理、社会的能力、教養、知識、経験といった能力を育むこと
を目的としているみたい。2014年の研究でも、学生の学習効果が高く、落第が少ないということでアクティブラーニングは概ね効果的である!という見解はされているようなのですが、人前で話すのが苦手な子や、手上げるのが得意じゃない子にとっては、できれば避けたい事案にもなります。アクティブラーニングのような場ではどうしても個人間のやり取りが増えるため、社会的評価をされる場になってしまうのですな。
つまり、能動的な学習の方が学習効率は高いのだけど、逆に不安感が高まってしまうことで学習に対して悪影響になっていないのか? ということであります。
アクティブラーニングが学生にどのような影響を与えるか、学生の不安感にどのような影響を与えるかを含め不明な点が多くありまして、科学系の大学のアクティブラーニング教室の文脈で学生の不安を探る研究はわずかしかないのだそう。
そこで本研究では ・どうすればアクティブラーニングをうまく成立させられるか ・そもそも、学生はアクティブラーニングに対してどのような不安を抱えているのか? についてレビューしてくれております。
結果として何が書かれていたかといいますと、 ・学生の主な不安は「否定的評価への恐怖」だった
・小グループでの作業が学習に役立つと生徒が感じれば、不安が減少した
・講師ではなく、講師ではない人(主に同じクラスの学生)に教えてもらう方が不安が減少したと回答した
・科学の授業を受けている163人の高校生の不安レベルを調査したところ、個人で問題に取り組むのではなく、グループで科学の問題に取り組むように無作為に割り当てられた生徒は、グループワークによって注意力が向上し、不安が減少した
ざっくりとこんな感じでした。一見、この「否定的評価への恐れ」というのは日本人特有な感じがしますが全くそのようなことはなく、世界中どこでも同じような反応が見られるのはなるほどなーと思いました。
そしてこの研究、以前『パレオな男』にて紹介していただいた アリストテレス大学の研究でも「否定的評価への恐れ」というものを取り扱っていまして、
言語を勉強する人は「コミュニケーションが通じないことで嫌な顔をされる」といったネガティブなフィードバックや評価、テストの成績、そして否定的な評価などに不安感を持っており、その不安感が学習者の努力やモチベーションを低下させ、学習のパフォーマンス低下につながる
とのことでした。否定的評価への恐れが様々な学習に悪影響なのは間違いなさそうですなー。
また、他の研究では、称賛獲得欲求があると否定的評価への恐れを感じにくくなるぞ!みたいなものもありまして 「先生に褒められたい!」とか「クラスのの友達にすごいって思ってもらいたい!」みたいな(ある意味では承認欲求ですが)これがあると、否定的評価への恐れをそもそも感じておらず、モチベーションが称賛されることなので悪影響がなかったのだそう。小学生の頃の私はこんな感じでした(笑)
じゃあどうすればアクティブラーニングを成功させることができるのか?ということを最後に研究者がまとめてくれておりまして、 ①学生同士、学生と指導者の間の関係を育む アクティブラーニングの教室で、学生が一緒に活動する学生とポジティブな関係を築くと、ネガティブな評価への不安が減少することが示されている。(Cooper, Downing, et al.2018)。学生が他の学生と関係性を築くと、自分が否定的に評価される可能性が低いように感じるからだ。学生がグループ内の他の人と気持ちよく過ごせる機会を最大限に増やす方法の1つは、授業中に一緒に作業する人を学生に選ばせることがよい。 また、講師はクラスに話しかけるときに「私たち」という言葉を使う、学生にポジティブなフィードバックをする、授業中にユーモアを使うなども効果的だ。
②間違ってもいい教室環境を作る 授業中のディスカッションへの貢献が否定的に評価されるという学生の認識を減らすためのもう一つの方法は、周囲からの判断がほとんどないと学生が認識する環境を作ることだ。(ルールとして決めることもいいかも) また、学生の間違いや誤解を自然なこと、あるいは有用なこととしてフレーミングすることで、このような教室文化への取り組みを示すことができる(Bell & Kozlowski, 2008)。 例えば、生徒が、講師や他の生徒の前で自分の考えを共有するとき、講師はその不正確な答えが一般的な誤解であることを説明したり、生徒が自分で出したその答えを正しいと考える理由に、理解や共感を示していることを伝えることで、生徒のエラーをフレーミングすることができる。 こうしたエラーフレーミングは、学生の教員とのつながりを改善し、学生のモチベーションを高め、ミスをすることに対する学生のストレスを軽減することが過去の研究で示されている。
確かに①も②も有効な感じがしましたね。特に②のエラーフレーミングは個人的には好きでした。「よくある一般的な間違い」として教えてもらえることで記憶に残りやすくもなりますし、自分のミスが自分だけの恥ずかしいものではないのだと実感できますからね。 ①で注意なのは、あくまでもアクティブラーニングの教室内で有効なお話であって、友達と勉強することが効率的である!、といっているわけではありませんのでご注意を。
0. 論文タイトル・URL
Student anxiety and fear of negative evaluation in active learning science classrooms https://www.researchgate.net/publication/339444503_Student_Anxiety_and_Fear_of_Negative_Evaluation_in_Active_Learning_Science_Classrooms
1. その論文の目的・どこのリサーチか
セントラルフロリダ大学とアリゾナ州立大学らが2020年に行った、アクティブラーニングと学生の不安感に関する研究です。
2. (先行研究とこれまでの問題)
不安というのはごく自然な感情だよ!というのはここ最近受け入れられてきた考え方ですが、 不安は良くないものだ、不安感を静めなきゃと考えてしまうのも、人間の自然な反応でもあります。 不安があるということは、何か危機が迫っていることを知らせてくれる合図のようなものなので、むしろ生存には必要な反応であるわけです。不安感を感じなければ、必要な準備を怠り、自分の身や立場を危険にさらすかもしれませんからね。
心理学で「不安」と言えば、状態不安と特性不安が最もメジャーな区分としてありまして、 ・状態不安:一般的な感情状態としての不安、何かの出来事や刺激に対して起きる状態としての不安 (人前で話す準備をしているとき、リスクの高い試験を受けるときなど)
・特性不安:その個人の気質、パーソナリティとしての不安 にわけて考えられています。 また、不安は高すぎると有害ですが、低すぎてもやる気の低下につながるため、適度な不安は効果的だよーって話もあったりします。ここはストレスとも似ていますね。
最近では学習効果を高めるために「アクティブラーニング」というものがありまして、日本語では「能動的学習」と呼ばれるもの。目的としては
を目的としているみたい。2014年の研究でも、学生の学習効果が高く、落第が少ないということでアクティブラーニングは概ね効果的である!という見解はされているようなのですが、人前で話すのが苦手な子や、手上げるのが得意じゃない子にとっては、できれば避けたい事案にもなります。アクティブラーニングのような場ではどうしても個人間のやり取りが増えるため、社会的評価をされる場になってしまうのですな。
つまり、能動的な学習の方が学習効率は高いのだけど、逆に不安感が高まってしまうことで学習に対して悪影響になっていないのか? ということであります。
アクティブラーニングが学生にどのような影響を与えるか、学生の不安感にどのような影響を与えるかを含め不明な点が多くありまして、科学系の大学のアクティブラーニング教室の文脈で学生の不安を探る研究はわずかしかないのだそう。
3. その論文の目的(具体的に)
そこで本研究では ・どうすればアクティブラーニングをうまく成立させられるか ・そもそも、学生はアクティブラーニングに対してどのような不安を抱えているのか? についてレビューしてくれております。
5. 結果
結果として何が書かれていたかといいますと、 ・学生の主な不安は「否定的評価への恐怖」だった
・小グループでの作業が学習に役立つと生徒が感じれば、不安が減少した
・講師ではなく、講師ではない人(主に同じクラスの学生)に教えてもらう方が不安が減少したと回答した
・科学の授業を受けている163人の高校生の不安レベルを調査したところ、個人で問題に取り組むのではなく、グループで科学の問題に取り組むように無作為に割り当てられた生徒は、グループワークによって注意力が向上し、不安が減少した
6. 結論・まとめ
ざっくりとこんな感じでした。一見、この「否定的評価への恐れ」というのは日本人特有な感じがしますが全くそのようなことはなく、世界中どこでも同じような反応が見られるのはなるほどなーと思いました。
そしてこの研究、以前『パレオな男』にて紹介していただいた アリストテレス大学の研究でも「否定的評価への恐れ」というものを取り扱っていまして、
とのことでした。否定的評価への恐れが様々な学習に悪影響なのは間違いなさそうですなー。
また、他の研究では、称賛獲得欲求があると否定的評価への恐れを感じにくくなるぞ!みたいなものもありまして 「先生に褒められたい!」とか「クラスのの友達にすごいって思ってもらいたい!」みたいな(ある意味では承認欲求ですが)これがあると、否定的評価への恐れをそもそも感じておらず、モチベーションが称賛されることなので悪影響がなかったのだそう。小学生の頃の私はこんな感じでした(笑)
7. どんな使い方ができる?
じゃあどうすればアクティブラーニングを成功させることができるのか?ということを最後に研究者がまとめてくれておりまして、 ①学生同士、学生と指導者の間の関係を育む アクティブラーニングの教室で、学生が一緒に活動する学生とポジティブな関係を築くと、ネガティブな評価への不安が減少することが示されている。(Cooper, Downing, et al.2018)。学生が他の学生と関係性を築くと、自分が否定的に評価される可能性が低いように感じるからだ。学生がグループ内の他の人と気持ちよく過ごせる機会を最大限に増やす方法の1つは、授業中に一緒に作業する人を学生に選ばせることがよい。 また、講師はクラスに話しかけるときに「私たち」という言葉を使う、学生にポジティブなフィードバックをする、授業中にユーモアを使うなども効果的だ。
②間違ってもいい教室環境を作る 授業中のディスカッションへの貢献が否定的に評価されるという学生の認識を減らすためのもう一つの方法は、周囲からの判断がほとんどないと学生が認識する環境を作ることだ。(ルールとして決めることもいいかも) また、学生の間違いや誤解を自然なこと、あるいは有用なこととしてフレーミングすることで、このような教室文化への取り組みを示すことができる(Bell & Kozlowski, 2008)。 例えば、生徒が、講師や他の生徒の前で自分の考えを共有するとき、講師はその不正確な答えが一般的な誤解であることを説明したり、生徒が自分で出したその答えを正しいと考える理由に、理解や共感を示していることを伝えることで、生徒のエラーをフレーミングすることができる。 こうしたエラーフレーミングは、学生の教員とのつながりを改善し、学生のモチベーションを高め、ミスをすることに対する学生のストレスを軽減することが過去の研究で示されている。
確かに①も②も有効な感じがしましたね。特に②のエラーフレーミングは個人的には好きでした。「よくある一般的な間違い」として教えてもらえることで記憶に残りやすくもなりますし、自分のミスが自分だけの恥ずかしいものではないのだと実感できますからね。 ①で注意なのは、あくまでもアクティブラーニングの教室内で有効なお話であって、友達と勉強することが効率的である!、といっているわけではありませんのでご注意を。