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The Self-Generated Stress Scale: Development, Psychometric Features, and Associations With Perfectionism, Self-Criticism, and Distress #162

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0. 論文タイトル・URL

The Self-Generated Stress Scale: Development, Psychometric Features, and Associations With Perfectionism, Self-Criticism, and Distress https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/0734282919879542

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2020年にブリティッシュ・コロンビア大学とヨーク大学らが行った自己生成ストレスに関する研究です。

2. (先行研究とこれまでの問題)

これまでストレスというのは、外的な要因によるストレッサーが原因で生じる反応とされてきまして、 ・環境要因:騒音、寒さ、暑さなど ・心理的要因:不安、対人関係、緊張 ・物理的要因:炎症・感染・睡眠不足 などに分類されてきましたが、ストレスを説明する概念としては、「ストレッサーという外界の刺激に対して、ストレス反応が生じる」というのが根幹にありました。こんな感じに↓ ストレス

ですが、ある一部の人は、一般的な人が経験するよりも多くのストレスを経験しているということがわかっていまして、特に完璧主義者はその傾向が強いと言います。 完璧主義者は非現実的な目標を追求することで、一貫して自分自身にストレスを発生させていたり、 他人に無理な基準を課したり、自分に課された完璧主義的な期待に応えるために、プレッシャーを感じながら、内在する葛藤によってもストレスを発生させます。さらに、 「完璧主義的な行動は、自分や他人を厳しく評価し、パフォーマンスのネガティブな側面に注目し、満足感を得られないという完璧主義者の傾向に起因するストレスを発生させる可能性がある」とも言われていまして、完璧主義者ほどストレスを強く感じているとのことから、 「ストレスっていうのは外部の刺激によって感じるだけでなく、自分自身で発生させているものもあるんじゃないの?」

ってことなんだそうな。

3. その論文の目的(具体的に)

そこで本研究では ・人は自分自身がストレスを生み出したり、ストレスを増やしたりしている「ストレス発生源」になっていると考えているのか? ・自己生成されたストレスは、どのようなパーソナリティ要因と関係しているのか? ということを調べてくれました。

4. 方法

247名の参加者を対象に、 ・Self-Generated Stress Scale (SGSS) :自己生成ストレス尺度(自分で生み出しているストレスをどの程度認知しているか) ・Multidimensional Perfectionism Scale (MPS):多次元的完璧主義尺度(完璧主義傾向を測る尺度) ・Perfectionistic Self-Presentation Scale (PSPS):完璧主義的自己呈示尺度(完璧な存在であるように他者に見せたい、完璧に見られたいという欲求の強さを測定) ・Perfectionism Cognitions Inventory (PCI):完璧主義的認知調査:("人々は私が完璧であることを期待している"、"なぜ物事は完璧であってはならないのか "など完璧主義に対する考え方の調査) ・Center for Epidemiological Studies-Depression Scale (CES-D):ここ一週間の抑うつ傾向を測定 ・UCLA Loneliness Scale:UCLA孤独感尺度 ・Frost Multidimensional Perfectionism Scale (FMPS):完璧主義傾向の測定 ・ICSRLE(Inventory of College Students' Recent Life ExperiencesMcGill Revision of the Depressive Experiences Questionnaire (MDEQ):自己批判傾向 ・CISS(Coping Inventory for Stressful Situations):コーピングの傾向を測定(感情的なコーピングや行動的なコーピングを取るのか、など) ・Positive Affect and Negative Affect Schedule (PANAS):ポジティブな感情とネガティブな感情をどのくらい経験しているのかを測定 ・SUNYA Revision of the Psychosomatic Symptom Checklist (PSC):心身症(頭痛、めまい、吐き気など)をどの程度感じているかを測定 ・The Hopkins Symptom Checklist–Abbreviated (HSCL-A) ・The Silencing The Self Scale (STSS):「親密な関係において、意見の相違が生じるとわかっているときには、自分の気持ちを話さない」、「自分がどのように行動するかによって、自分を判断する傾向がある」、「気遣いとは、自分のニーズよりも相手のニーズを優先することである」、「外見上は十分に幸せそうに見えるが、内心は不安や反抗心を感じていることが多い」など。

など、計14個の尺度について回答してもらい、自己生成ストレス尺度との関係性を調べました。

5. 結果

その結果何がわかったかといいますと、 ・自己生成されたストレスは、完璧主義傾向、自己批判、依存傾向、自己沈黙尺度、認知的完璧主義と完璧主義的自己呈示を示す指標と関連することがわかった

慢性的に低い自尊心を抱えている人は自己生成ストレスを発生させやすい

完璧であることにこだわる人は、自己生成されたストレスについて他人に相談したがらないことが考えられる

自己生成されたストレスは、自動思考の媒介要因となって、完璧主義に拍車をかけていた

自己生成ストレスを生み出しやすい人は、感情的なコーピング(情動焦点型コーピング)で対処する傾向があった 例)・仲の良い友人や同僚に辛い気持ちを話してガス抜きする ・マッサージやヨガ、アロマテラピーなどでリラックスする ・趣味や旅行・カラオケなどで発散 ・頭を悩ませている問題から少し遠ざかり、落ち着く時間をつくる、など

6. 結論・まとめ

今回の結果の一番重要である、1つめの、自己生成されたストレスは、完璧主義傾向、自己批判、依存傾向、自己沈黙尺度、認知的完璧主義と完璧主義的自己呈示を示す指標と関連することがわかった について少し解説しておくと、 完璧主義や自己批判というのは、「自己生成ストレス」という自分で生み出すタイプのストレスに関係しているということです。つまり、外的なストレスはあまり感じていない人でも、自己批判が多かったり、完璧主義であったりすると、意外にもストレスを強く感じている可能性があるということになります。 今回は生理的な反応を確認したわけでないので何とも言えませんが、SGSS(自己生成ストレス尺度)とコルチゾールの値を調べればその関係も見えてくるはず。

この結果に対して研究者は、

自己生成ストレスが高い人が、自分ではコントロールできない、あるいは自分では影響を与えることができないと考えるようなストレス要因に対して、自分がどの程度関与していると認識しているかを確認することで、人生のストレスに関して、自分の責任感が過剰に反応するように発達している可能性が考えられる。

と述べておりまして、自己生成ストレスを生み出しやすい人は、自分がコントロールできることと、できないことをごちゃ混ぜに考えてしまい、どうにもならないことについて考え続けてしまったり、どうにもならないことをどうにかしようとして苦しんでいることがあるということなのだそう。

7. どんな使い方ができる?

自分に心当たりのある研究だったのでグサグサきてました。(笑)実践できそうなこととしては

自分が悩んでいることは、自分の力でどうにかできることなのか(コントロール可能なのか)そうでないのかを、 まず区別する

どうにもならないことは手放し、考えても仕方のないことは考えない(抵抗することに降伏する)

完璧になろう、理想の自分になろうとすること自体が不可能なことなので(目指そうとすることはOKだが、その過程で自己批判するのはBAD)、そんな自分も慈悲の心で受け入れるセルフコンパッションを習慣化する

自己批判をしていることに気づき(マインドフルネスや瞑想などでメタ認知を鍛える)、自己批判や二の矢を止める

情動焦点型のコーピングは問題解決には至らないため、時間が解決してくれるタイプの問題でない場合は、問題解決型コーピングで対処する

というところになってきそうな。私もここ最近あわただしいことばかりでストレスもあったのですが、自己批判をめちゃめちゃしていまして、それがストレスになっていることに気づきませんでした。精神的に自己批判ってよくはないので、最近はセルフコンパッションの勉強を再開しております。

何か気づきや対処法がありましたら、ぜひコメント欄までどうぞ~。

(感想) 個人的な感想としては参加者側がなかなか大変な研究だなーと感じました。 今回14つの尺度に回答してもらっていますが、一般的には多くても3つ程度で5分以内に回答が終わるくらいの調査でなければ、参加者は質問に対して適当に回答したり、全部同じ数字に〇をつけたりしてしまい、回答の精度が下がることがよくあるので、 すべて回答してもらうのに一体どれだけでの時間と労力がかかるのか、ということを考えるとびっくりな研究なのですよねー。ではでは。