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Motivating Personal Growth by Seeking Discomfort https://www.researchgate.net/publication/359590301_Motivating_Personal_Growth_by_Seeking_Discomfort
2022年、コーネル大学とシカゴ大学が行った、不快感とモチベーションに関する研究です。
一般的に人は、自己成長したいと考える生き物であると言われていますが、自己成長のプロセスは不快なものであることが多くあります。何かに取り組めば失敗することもありますし、他人の意見に耳を傾けることが嫌な時もあります。 つまり、自己成長は頻繁に不快感=何らかのネガティブ体験を呼び起こすのものと言われているわけですな。 では、不快感を経験したとき、人はどのようにモチベーションを上げればよいのでしょうか。
これまでの研究では3つの手法があると言われていました。 1.不快感を軽減する 嫌な出来事を避けたり、距離を置くこと。シンプルですが効果も大きい。 嫌な職場に居続けるより、転職してしまった方が良い場合もありますしね。
2.アメ・ご褒美を用意しておく 先行研究では ・色ペンとお菓子を置いておくことで、高校生の数学課題への取り組みが向上した(Woolley & Fishbach, 2016) ・おもしろいビデオを見せながら歯磨きすることで、退屈さを打ち消して人々の歯磨きの持続性を高めた(Lieberman, Amir, & Morales, 2020) という研究もありまして、これも効果ありですね。
3,リアプレイザル(認知的再評価) ネガティブな体験が起こる前に、その体験に適用される意味を変更し、その情動的影響を軽減するもの(Gross, 1998; 1999) でして、心理学では古くから効果の高い手法とされています。 リアプレイザルは簡単にいうと、出来事に対して、事前/事後に評価しなおしたり、捉えなおしたりすることです。 例えば、 ・不安を興奮と捉え直すことで、素人が見知らぬ人の前で歌うことが改善された(Brooks, 2014) ・ストレスマインドセットに関する研究では、「ストレスは達成を妨げるものではなく、自分を助けるものだ」と認識することは、ストレスマネジメントに効果的である(Jamieson et al.、2018) など、捉えなおすことで、最初に感じた印象から、別の捉え方があったのだ、と気づけるようになるわけです。 ここら辺の詳しいお話はアダムグラントさんの最新作、Think againでも紹介されているのでぜひに。
そこで本研究では、2163名の参加者を対象にモチベーションに関する5つの実験を行いました。その研究の詳細はこんな感じ。 1.55の即興劇(インプロ)のクラスで実験を行い、成長のために不快感を求めるよう指示した場合の学生の即興練習へのモチベーション(持続性、リスクテイキング)を評価
2.感情的な出来事について書く場合、不快感を求める方が、より意欲的に課題に取り組み、より大きな成長目標の達成を認識するかどうかを評価。 不快感を求めることは、それが個人的な成長につながるものであり、成長のシグナルである場合には動機づけ(モチベーション)になると予測
3.不快感を求めると、悲惨な健康危機(COVID-19パンデミック)に関する情報への受容が増加し、無関係な情報への受容は増加しないかどうかを検討
4.不快感を求めると反対意見を受け入れるようになるが、賛成意見を受け入れるようになるのかどうかを検討
5.不快感を求めることが、不快感を再評価する直接的な指示がない場合でも、おそらく自発的な再評価を促すことによって、新しい情報への開放性を動機づけるかどうかを検証。 詳細としては、銃乱射事件についての文章を読んでもらい、参加者に 1.「不快感を追及することを目標にしてください」という指示を与えたグループ 2.不快感追求の指示を与えないグループ(対照群) 3.認知的再評価(リアプレイザル)を行うグループ:不快感を感じるのは、新しい情報を取り込んでいるという証拠であり良いことだという指示を与えたグループ 4.リアプレイザルしないグループ(対照群) に分類。こうすることで、不快感を追及するように指示するだけでも、参加者のモチベーションに影響があるのか、それとも捉え直すことが重要なのかを調べた。
その結果、次のようなことがわかりました。(全部書くと多いので一部記載します)
・不快感を目標達成のためのフィードバック/ 自己成長している証拠と考えると、不快感を求めることによって練習に取り組むモチベーションが高まった
・この結果は個人差(例えば個人のスキル、過去の経験、インプロへの興味、否定的感情の強さ)などを考慮しても見られた
・「不快感を求めることを目標にしてください」と指示されたグループは、リアプレイザルをしたグループ、および指示受けない参加者と比べて学習意欲が高まった
・リアプレイザルをするグループとリアプレイザルをしないグループ(3と4)を比較したところ、両群の間に有意な差は見られなかった。
リアプライザルをする必要なく、不快感を成長のシグナルだと理解するだけで、学習意欲を高め、モチベーションの低下を防ぎ維持することができることを示す結果となりました。 この結果に対し研究者は、
自己成長のプロセスには不快感を感じることが度々ある。不快感を避ける方法には、逃げること、アメを用意する方法、再評価(リアプレイザル)をする3つが考えられていたが、リアプレイザルは事前/事後に、出来事に対する捉え方を考え直す必要があった。しかし、本研究の結果から、リアプレイザルをする必要なく、また、リアプレイザルのトレーニングもする必要がなく、ただシンプルに「不快感を成長のシグナル / 不快感は物事が順調に進んでいる証拠」として捉えるだけで、十分な動機付けとして機能することが示唆された
と述べておりました。
この研究では、リアプレイザルをする必要なく、ただ「不快感は成長のシグナルなんだ」と捉えることがモチベーションになると紹介していますが、リアプレイザルが無意味なものである、と言っているわけではありません。 こと「自己成長」「ストレスのかかる場面」における場面では有効であるとのことで、不安感を感じている時には素直にリアプレイザルを行い、「不安=興奮」と捉える方が効果的な場面もあります。 なので私の場合、プレゼンの前など、瞬間的な場面で襲ってくる不安や緊張感に対してはリアプレイザルを行い、普段の仕事の場面や少しやる気が起きない時、ちょっとして発表の場などでは、このマインドセットを持つようにしています。 そこは使い分けになってきますが、このマインドセットを持っておくだけで、仕事や勉強などで不安だなーと感じたときには使える知識になっていると思いますので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。それではよしなに~よいGWを!
0. 論文タイトル・URL
Motivating Personal Growth by Seeking Discomfort https://www.researchgate.net/publication/359590301_Motivating_Personal_Growth_by_Seeking_Discomfort
1. その論文の目的・どこのリサーチか
2022年、コーネル大学とシカゴ大学が行った、不快感とモチベーションに関する研究です。
2. (先行研究とこれまでの問題)
一般的に人は、自己成長したいと考える生き物であると言われていますが、自己成長のプロセスは不快なものであることが多くあります。何かに取り組めば失敗することもありますし、他人の意見に耳を傾けることが嫌な時もあります。 つまり、自己成長は頻繁に不快感=何らかのネガティブ体験を呼び起こすのものと言われているわけですな。 では、不快感を経験したとき、人はどのようにモチベーションを上げればよいのでしょうか。
これまでの研究では3つの手法があると言われていました。 1.不快感を軽減する 嫌な出来事を避けたり、距離を置くこと。シンプルですが効果も大きい。 嫌な職場に居続けるより、転職してしまった方が良い場合もありますしね。
2.アメ・ご褒美を用意しておく 先行研究では ・色ペンとお菓子を置いておくことで、高校生の数学課題への取り組みが向上した(Woolley & Fishbach, 2016) ・おもしろいビデオを見せながら歯磨きすることで、退屈さを打ち消して人々の歯磨きの持続性を高めた(Lieberman, Amir, & Morales, 2020) という研究もありまして、これも効果ありですね。
3,リアプレイザル(認知的再評価) ネガティブな体験が起こる前に、その体験に適用される意味を変更し、その情動的影響を軽減するもの(Gross, 1998; 1999) でして、心理学では古くから効果の高い手法とされています。 リアプレイザルは簡単にいうと、出来事に対して、事前/事後に評価しなおしたり、捉えなおしたりすることです。 例えば、 ・不安を興奮と捉え直すことで、素人が見知らぬ人の前で歌うことが改善された(Brooks, 2014) ・ストレスマインドセットに関する研究では、「ストレスは達成を妨げるものではなく、自分を助けるものだ」と認識することは、ストレスマネジメントに効果的である(Jamieson et al.、2018) など、捉えなおすことで、最初に感じた印象から、別の捉え方があったのだ、と気づけるようになるわけです。 ここら辺の詳しいお話はアダムグラントさんの最新作、Think againでも紹介されているのでぜひに。
3. 方法
そこで本研究では、2163名の参加者を対象にモチベーションに関する5つの実験を行いました。その研究の詳細はこんな感じ。 1.55の即興劇(インプロ)のクラスで実験を行い、成長のために不快感を求めるよう指示した場合の学生の即興練習へのモチベーション(持続性、リスクテイキング)を評価
2.感情的な出来事について書く場合、不快感を求める方が、より意欲的に課題に取り組み、より大きな成長目標の達成を認識するかどうかを評価。 不快感を求めることは、それが個人的な成長につながるものであり、成長のシグナルである場合には動機づけ(モチベーション)になると予測
3.不快感を求めると、悲惨な健康危機(COVID-19パンデミック)に関する情報への受容が増加し、無関係な情報への受容は増加しないかどうかを検討
4.不快感を求めると反対意見を受け入れるようになるが、賛成意見を受け入れるようになるのかどうかを検討
5.不快感を求めることが、不快感を再評価する直接的な指示がない場合でも、おそらく自発的な再評価を促すことによって、新しい情報への開放性を動機づけるかどうかを検証。 詳細としては、銃乱射事件についての文章を読んでもらい、参加者に 1.「不快感を追及することを目標にしてください」という指示を与えたグループ 2.不快感追求の指示を与えないグループ(対照群) 3.認知的再評価(リアプレイザル)を行うグループ:不快感を感じるのは、新しい情報を取り込んでいるという証拠であり良いことだという指示を与えたグループ 4.リアプレイザルしないグループ(対照群) に分類。こうすることで、不快感を追及するように指示するだけでも、参加者のモチベーションに影響があるのか、それとも捉え直すことが重要なのかを調べた。
4. 結果
その結果、次のようなことがわかりました。(全部書くと多いので一部記載します)
・不快感を目標達成のためのフィードバック/ 自己成長している証拠と考えると、不快感を求めることによって練習に取り組むモチベーションが高まった
・この結果は個人差(例えば個人のスキル、過去の経験、インプロへの興味、否定的感情の強さ)などを考慮しても見られた
・「不快感を求めることを目標にしてください」と指示されたグループは、リアプレイザルをしたグループ、および指示受けない参加者と比べて学習意欲が高まった
・リアプレイザルをするグループとリアプレイザルをしないグループ(3と4)を比較したところ、両群の間に有意な差は見られなかった。
5. 結論・まとめ
リアプライザルをする必要なく、不快感を成長のシグナルだと理解するだけで、学習意欲を高め、モチベーションの低下を防ぎ維持することができることを示す結果となりました。 この結果に対し研究者は、
と述べておりました。
6. どんな使い方ができる?
この研究では、リアプレイザルをする必要なく、ただ「不快感は成長のシグナルなんだ」と捉えることがモチベーションになると紹介していますが、リアプレイザルが無意味なものである、と言っているわけではありません。 こと「自己成長」「ストレスのかかる場面」における場面では有効であるとのことで、不安感を感じている時には素直にリアプレイザルを行い、「不安=興奮」と捉える方が効果的な場面もあります。 なので私の場合、プレゼンの前など、瞬間的な場面で襲ってくる不安や緊張感に対してはリアプレイザルを行い、普段の仕事の場面や少しやる気が起きない時、ちょっとして発表の場などでは、このマインドセットを持つようにしています。 そこは使い分けになってきますが、このマインドセットを持っておくだけで、仕事や勉強などで不安だなーと感じたときには使える知識になっていると思いますので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。それではよしなに~よいGWを!