Open mentalistL opened 3 years ago
Gamification and the impact of extrinsic motivation on needs satisfaction: Making work fun? https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0148296318305745
2020年、クイーンランド大学によって行われた、ゲーミフィケーションと外発的動機づけに関する研究です。
近年、特に海外では職場でのゲーミフィケーションの導入が進んでおります。 にも拘わらず、ゲーミフィケーションの有効性や、従業員のエンゲージメント、組織の生産性に影響を与える要因については、ほとんど知られていません。 というのも、ゲーミフィケーションは主にゲーム会社によって主導で行われることが多く、心理学を応用する領域が介入してこなかったのですね。ゲームに使われている技術を別の領域で応用するというのがゲーミフィケーションなので、尤もな話でもありますが。
そこで本研究では、自己決定理論を用いて、ゲーミフィケーションが従業員の心理的欲求の満足度や行動意図に与える影響を調査しました。
複数の産業領域にまたがって、過去3ヶ月以内に職場でゲーミフィケーションアプリを使用したことがある291名に対して、オンラインで質問紙調査を行った。 測定指標として ・プレイヤーの欲求満足度(PENS)尺度(Ryanら、2006年) ・多次元ワークモチベーション尺度(Gagnéら、2015年) ・行動意図尺度(Cronin, Brady, & Hult、2000年) を用いた。 具体的な内容としてはPENSであれば、 「自分の使いたいようにアプリを使うことができた」(自律性) 「このアプリで良いパフォーマンスを発揮するという課題を満たせたと感じた」(能力) 「このアプリで形成した関係性が重要だと感じた」(関連性) などがあげられる。ワークモチベーション尺度であれば、 「他の人が言うからアプリを使う」(外発的) 「アプリを使わないと罪悪感を感じる」(外発的) 「アプリを使うメリットを評価する」(統合的()内発性に近い動機づけ) 「楽しいからアプリを使う」(内発的動機) などがあげられる。これらの測定指標を用いてゲーミフィケーションが従業員の心理的欲求の満足度や行動意図に与える影響を調べました。
・自律性と能力を欲求満足度が高いほど、ゲーミフィケーションの利用に対する内発的動機付けが高い(γ=0.87、t=8.03、p<0.001) ・外発的動機付けの「同一化」の段階であっても、能力と自律性の満足度に正の影響を与えた ・外発的動機付けは能力、自律性に負の影響を与えた ・関連性の満足度は、内発的動機や行動意図のいずれとも有意な関連性を示さなかった(γ=0.08、t=1.04、p=0.50)
結論として、従業員が職場で使用したゲーミフィケーション・アプリケーションが自律性と能力を満たしていたと報告し、それがゲーミフィケーション(アプリケーション)の使用に対する内発的動機付けと正の関係を持っていたことが示されました。 つまり、ゲーミフィケーションを導入するとして、とりわけ自律性(自己決定など)、能力の部分を感じられる設計になっているか、というところが非常に重要になってくる模様。 また、ゲーミフィケーションの導入に対してユーザーが自発的でない場合(自発的に参加できる設計になっていない場合) 効果が得られないどころか、エンゲージメントが低下するという研究もあるので、そこは注意したいところですね。
自律性と能力に関しての設計を続けられると、ビジネスの文脈におけるゲーミフィケーションもうまく回るのではないか、という感じですかね。 研究者のコメントでは
”従業員が職場のゲーミフィケーション・アプリケーションを利用して有益なメリットを得られると感じる場合、これらのゲーミフィケーション・アプリケーションは、従業員の自律性、能力、関連性のニーズを満たす可能性が高いことを示唆している。このことは、自律性と能力のニーズの充足が、ゲーミフィケーション・アプリケーションを利用する内発的な動機づけと意図を促進し、ひいては職場でゲーミフィケーション化された対象行動を促進することを示している” と仰っておりました。 ゲーミフィケーションの導入にメリットを感じさせてあげることも大事なようですなー。
0. 論文タイトル・URL
Gamification and the impact of extrinsic motivation on needs satisfaction: Making work fun? https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0148296318305745
1. その論文の目的・どこのリサーチか
2020年、クイーンランド大学によって行われた、ゲーミフィケーションと外発的動機づけに関する研究です。
2. (先行研究とこれまでの問題)
近年、特に海外では職場でのゲーミフィケーションの導入が進んでおります。 にも拘わらず、ゲーミフィケーションの有効性や、従業員のエンゲージメント、組織の生産性に影響を与える要因については、ほとんど知られていません。 というのも、ゲーミフィケーションは主にゲーム会社によって主導で行われることが多く、心理学を応用する領域が介入してこなかったのですね。ゲームに使われている技術を別の領域で応用するというのがゲーミフィケーションなので、尤もな話でもありますが。
3. その論文の目的(具体的に)
そこで本研究では、自己決定理論を用いて、ゲーミフィケーションが従業員の心理的欲求の満足度や行動意図に与える影響を調査しました。
4. 方法
複数の産業領域にまたがって、過去3ヶ月以内に職場でゲーミフィケーションアプリを使用したことがある291名に対して、オンラインで質問紙調査を行った。 測定指標として ・プレイヤーの欲求満足度(PENS)尺度(Ryanら、2006年) ・多次元ワークモチベーション尺度(Gagnéら、2015年) ・行動意図尺度(Cronin, Brady, & Hult、2000年) を用いた。 具体的な内容としてはPENSであれば、 「自分の使いたいようにアプリを使うことができた」(自律性) 「このアプリで良いパフォーマンスを発揮するという課題を満たせたと感じた」(能力) 「このアプリで形成した関係性が重要だと感じた」(関連性) などがあげられる。ワークモチベーション尺度であれば、 「他の人が言うからアプリを使う」(外発的) 「アプリを使わないと罪悪感を感じる」(外発的) 「アプリを使うメリットを評価する」(統合的()内発性に近い動機づけ) 「楽しいからアプリを使う」(内発的動機) などがあげられる。これらの測定指標を用いてゲーミフィケーションが従業員の心理的欲求の満足度や行動意図に与える影響を調べました。
5. 結果
・自律性と能力を欲求満足度が高いほど、ゲーミフィケーションの利用に対する内発的動機付けが高い(γ=0.87、t=8.03、p<0.001) ・外発的動機付けの「同一化」の段階であっても、能力と自律性の満足度に正の影響を与えた ・外発的動機付けは能力、自律性に負の影響を与えた ・関連性の満足度は、内発的動機や行動意図のいずれとも有意な関連性を示さなかった(γ=0.08、t=1.04、p=0.50)
6. 結論・まとめ
結論として、従業員が職場で使用したゲーミフィケーション・アプリケーションが自律性と能力を満たしていたと報告し、それがゲーミフィケーション(アプリケーション)の使用に対する内発的動機付けと正の関係を持っていたことが示されました。 つまり、ゲーミフィケーションを導入するとして、とりわけ自律性(自己決定など)、能力の部分を感じられる設計になっているか、というところが非常に重要になってくる模様。 また、ゲーミフィケーションの導入に対してユーザーが自発的でない場合(自発的に参加できる設計になっていない場合) 効果が得られないどころか、エンゲージメントが低下するという研究もあるので、そこは注意したいところですね。
7. どんな使い方ができる?
自律性と能力に関しての設計を続けられると、ビジネスの文脈におけるゲーミフィケーションもうまく回るのではないか、という感じですかね。 研究者のコメントでは
”従業員が職場のゲーミフィケーション・アプリケーションを利用して有益なメリットを得られると感じる場合、これらのゲーミフィケーション・アプリケーションは、従業員の自律性、能力、関連性のニーズを満たす可能性が高いことを示唆している。このことは、自律性と能力のニーズの充足が、ゲーミフィケーション・アプリケーションを利用する内発的な動機づけと意図を促進し、ひいては職場でゲーミフィケーション化された対象行動を促進することを示している” と仰っておりました。 ゲーミフィケーションの導入にメリットを感じさせてあげることも大事なようですなー。