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Psychological Safety: A Meta‐Analytic Review and Extension https://digitalcommons.odu.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1018&context=management_fac_pubs
オールド・ドミニオン大学らが行った2017年の心理的安全性に関するメタ分析です。
HR界隈で働いている人なら一度は聴いたことがあるであろう、心理的安全性に関するメタ分析です。 心理的安全性とは 「チームにおいて、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態であり、チームは対人リスクをとるのに 安全な場所であるとの信念がメンバー 間で共有された状態」 と言われてきまして、これまでの研究でも心理的安全性の重要性は重視されてきましたが、その要素が明確にはなっていなかったとされています。例えば、心理的安全性を測定する質問として、7つの質問があります。 (1)チーム内でミスを起こすと、よく批判をされる (2)チームのメンバー内で、課題やネガティブなことを言い合うことができる (3)チーム内のメンバーは、異質なものを受け入れない傾向にある (4)チームに対して、リスクが考えられるアクションを取っても安心感がある (5)チーム内のメンバーにヘルプを出しづらい (6)チーム内で自分を騙すようなメンバーはいない (7)現在のチームで業務を進める際、自分のスキルが発揮されていると感じる これらによって心理的安全性を測定することはできるらしいのですが、重要になってくる細かい要素って何なの?これらを構成している要素って?みたいな感じですね。nomological network(法則定立ネットワーク)と書いてあったので、心理的安全性の法則が定まるための構成要素は何で、心理的安全性の予測因子は何だ?ということを調べてくれた研究になってます。
心理的安全性に関するメタ分析を行い、22,000人以上の個人と5,000人近くのグループを代表する457件の研究から適格な基準を満たした136の独立したサンプルを用いて分析を行った。
わかったことをざっくりまとめていきますと、 ・心理的安全性は仕事への関与と正の関係がある ・心理的安全性がタスクパフォーマンスと正の関係にある ・心理的安全性は (a) information sharing情報共有, (b) citizenship behaviors, (c) creativity,創造性 and (d) learning behavior学習行動と正の相関がある ・心理的安全性は組織へのコミットメントと、組織への満足度にも正の相関が見られた ・ポジティブなリーダー関係(リーダーとの関係性)positive leader relations ( ˆρ = .39), autonomy自律性 ( ˆρ = .35), interdependence相互依存性 ( ˆρ = .40), role clarity役割の明確性 ( ˆρ = .51), and supportive work context ( ˆρ = .51)とも正の相関あり。 ・ピア・サポートは supportive work contextで効果量が最大となった。 ・心理的安全性は経験への開放性と有意に関連していなかった ・インクルーシブリーダーシップと、トランスフォーメーショナル・リーダーシップのようなリーダーシップはほとんどばらつきがなく心理的安全性に影響を与える。 (インクルーシブリーダーとは、一人の上司が大勢の部下に対してリーダーシップをとるのではなく、一人ひとりの中にあるリーダーとしての資質を引き出し、全員で組織力を向上させようとする考え方) (トランスフォーメーショナルリーダーシップは、いわゆるカリスマリーダー的なリーダーシップ)
ざっくりまとめると、
組織で情報共有がしっかりできていて、リーダーとの関係性が良く、ポジティブなリーダーであり、 個人に自律性(裁量権など)があり、相互に助け合えるような環境があって、自分(それぞれ)の役割が明確になっている組織
が高いと、心理的安全性も高まりそうです。感覚的にもそうだろうなーというのはあるでしょうが、実際に情報共有や情報の透明性が低かったり、リーダーとの関係性が構築できていなかったり、個々の仕事が忙しくて、サポートできる体制になかったりするのが現状なのかもしれません。あと意外だったことは心理的安全性のためにはリーダー(上司)の重要性が大きいことですね。組織の問題と見られがちな心理的安全性ですが、フラットな組織を目指す組織であったとしても、立場上、上の立場になる人が従業員に与える影響が大きいということの表れとも言えるのではないでしょうか。
・心理的安全性は経験への開放性と有意に関連していなかった これについて研究者は 経験への開放性が高い人は、文脈に関係なく自分の主体性を表現する方法を重視しているため、心理的安全性を気にすることが少ないのかもしれません と述べておりまして、開放性が高い人が多いからと言って心理的安全性が高まるわけではないのでご注意を、といった感じです。
研究者コメントとしましては、 心理的安全性の出現を促進する要因は無数にあり、いくつかの要因(ワークデザインやリーダーシップなど)は他の要因(パーソナリティなど)よりも相対的に重要である。(中略) リーダーがフォロワーとポジティブな関係を築くと、心理的安全性に対する認識が高くなることが明確に示されています。さらに、リーダーシップの概念の違いによる効果の大きさは、驚くほど類似しており、いつ、どこでリーダーシップが重要なのかをより深く理解することが、心理的安全性を促進する上で重要である。 とコメントしておりました。 単に仕事ができるリーダーであるだけではだめで、部下への動機付けを刺激したり、相談や対話ができるリーダー(上司)などが当てはまるのではないでしょうか。
心理的安全性を高めるために、組織で何をしたら良いですか?!という質問をよく見聞きしますが、 心理学的な回答ができるとすれば、 ・自律性 ・助け合える関係性 ・リーダーとの良好な関係性 みたいなところかと。参考になりましたら幸いです。ではでは。
https://note.com/yell4u/n/n00f9594dc3dc 心理的安全性については、こちらの記事もわかりやすく参考になるのでおすすめです。
0. 論文タイトル・URL
Psychological Safety: A Meta‐Analytic Review and Extension https://digitalcommons.odu.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1018&context=management_fac_pubs
1. その論文の目的・どこのリサーチか
オールド・ドミニオン大学らが行った2017年の心理的安全性に関するメタ分析です。
2. (先行研究とこれまでの問題)
HR界隈で働いている人なら一度は聴いたことがあるであろう、心理的安全性に関するメタ分析です。 心理的安全性とは 「チームにおいて、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態であり、チームは対人リスクをとるのに 安全な場所であるとの信念がメンバー 間で共有された状態」 と言われてきまして、これまでの研究でも心理的安全性の重要性は重視されてきましたが、その要素が明確にはなっていなかったとされています。例えば、心理的安全性を測定する質問として、7つの質問があります。 (1)チーム内でミスを起こすと、よく批判をされる (2)チームのメンバー内で、課題やネガティブなことを言い合うことができる (3)チーム内のメンバーは、異質なものを受け入れない傾向にある (4)チームに対して、リスクが考えられるアクションを取っても安心感がある (5)チーム内のメンバーにヘルプを出しづらい (6)チーム内で自分を騙すようなメンバーはいない (7)現在のチームで業務を進める際、自分のスキルが発揮されていると感じる これらによって心理的安全性を測定することはできるらしいのですが、重要になってくる細かい要素って何なの?これらを構成している要素って?みたいな感じですね。nomological network(法則定立ネットワーク)と書いてあったので、心理的安全性の法則が定まるための構成要素は何で、心理的安全性の予測因子は何だ?ということを調べてくれた研究になってます。
4. 方法
心理的安全性に関するメタ分析を行い、22,000人以上の個人と5,000人近くのグループを代表する457件の研究から適格な基準を満たした136の独立したサンプルを用いて分析を行った。
5. 結果
わかったことをざっくりまとめていきますと、 ・心理的安全性は仕事への関与と正の関係がある ・心理的安全性がタスクパフォーマンスと正の関係にある ・心理的安全性は (a) information sharing情報共有, (b) citizenship behaviors, (c) creativity,創造性 and (d) learning behavior学習行動と正の相関がある ・心理的安全性は組織へのコミットメントと、組織への満足度にも正の相関が見られた ・ポジティブなリーダー関係(リーダーとの関係性)positive leader relations ( ˆρ = .39), autonomy自律性 ( ˆρ = .35), interdependence相互依存性 ( ˆρ = .40), role clarity役割の明確性 ( ˆρ = .51), and supportive work context ( ˆρ = .51)とも正の相関あり。 ・ピア・サポートは supportive work contextで効果量が最大となった。 ・心理的安全性は経験への開放性と有意に関連していなかった ・インクルーシブリーダーシップと、トランスフォーメーショナル・リーダーシップのようなリーダーシップはほとんどばらつきがなく心理的安全性に影響を与える。 (インクルーシブリーダーとは、一人の上司が大勢の部下に対してリーダーシップをとるのではなく、一人ひとりの中にあるリーダーとしての資質を引き出し、全員で組織力を向上させようとする考え方) (トランスフォーメーショナルリーダーシップは、いわゆるカリスマリーダー的なリーダーシップ)
6. 結論・まとめ
ざっくりまとめると、
組織で情報共有がしっかりできていて、リーダーとの関係性が良く、ポジティブなリーダーであり、 個人に自律性(裁量権など)があり、相互に助け合えるような環境があって、自分(それぞれ)の役割が明確になっている組織
が高いと、心理的安全性も高まりそうです。感覚的にもそうだろうなーというのはあるでしょうが、実際に情報共有や情報の透明性が低かったり、リーダーとの関係性が構築できていなかったり、個々の仕事が忙しくて、サポートできる体制になかったりするのが現状なのかもしれません。あと意外だったことは心理的安全性のためにはリーダー(上司)の重要性が大きいことですね。組織の問題と見られがちな心理的安全性ですが、フラットな組織を目指す組織であったとしても、立場上、上の立場になる人が従業員に与える影響が大きいということの表れとも言えるのではないでしょうか。
・心理的安全性は経験への開放性と有意に関連していなかった これについて研究者は 経験への開放性が高い人は、文脈に関係なく自分の主体性を表現する方法を重視しているため、心理的安全性を気にすることが少ないのかもしれません と述べておりまして、開放性が高い人が多いからと言って心理的安全性が高まるわけではないのでご注意を、といった感じです。
7. どんな使い方ができる?
研究者コメントとしましては、 心理的安全性の出現を促進する要因は無数にあり、いくつかの要因(ワークデザインやリーダーシップなど)は他の要因(パーソナリティなど)よりも相対的に重要である。(中略) リーダーがフォロワーとポジティブな関係を築くと、心理的安全性に対する認識が高くなることが明確に示されています。さらに、リーダーシップの概念の違いによる効果の大きさは、驚くほど類似しており、いつ、どこでリーダーシップが重要なのかをより深く理解することが、心理的安全性を促進する上で重要である。 とコメントしておりました。 単に仕事ができるリーダーであるだけではだめで、部下への動機付けを刺激したり、相談や対話ができるリーダー(上司)などが当てはまるのではないでしょうか。
心理的安全性を高めるために、組織で何をしたら良いですか?!という質問をよく見聞きしますが、 心理学的な回答ができるとすれば、 ・自律性 ・助け合える関係性 ・リーダーとの良好な関係性 みたいなところかと。参考になりましたら幸いです。ではでは。