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Impact of inclusive leadership on innovative work behavior: The role of psychological safety https://www.researchgate.net/profile/Hafiz-Habib/publication/313902404_Impact_of_inclusive_leadership_on_innovative_work_behavior_The_role_of_psychological_safety/links/5b55a3ad0f7e9b240ffddf4f/Impact-of-inclusive-leadership-on-innovative-work-behavior-The-role-of-psychological-safety.pdf
インクルーシブリーダーシップが仕事のイノベーション行動に与える影響について調べた研究になります。
インクルーシブリーダーシップとは何かというと、包括的リーダーシップなどとも言われ、 一人ひとりの中にあるリーダーとしての資質を引き出し、全員で組織力を向上させようとする考え方 などと定義されることがあるのですが、わかりにくいので特徴をご紹介すると、
自分の弱みを表に出す:「自分の知らない情報について、率直に尋ねてくれる。謙虚で気取らない態度で仕事をする。そのため部下は気が楽になり、自分の意見を口に出して表明できるが、それを尊重してくれるリーダーである」
・文化的な違いを学ぶ:「異なる文化の特徴(共通の言語、慣用句、慣習、好き嫌い)と文化的重要事項を学ぶために時間を費やす」
・部下を一人の人間として認識する:「100人超のチームを率いているにもかかわらず、一人ひとりを名前で呼び、個々人の仕事の流れと内容を把握している」
というような特徴を持っているリーダーもしくは、個人個人がそのような考え方をしている組織などです。 他にも 目に見えるコミットメント:多様性への本気の取り組みを明言し、現状に疑問を投げかけ、他者に説明責任を課し、多様性と包摂を自分の優先課題としている。
謙虚さ:自分の能力に関して謙虚であり、過ちを認め、部下に貢献の余地をつくる。
バイアスへの認識:個人には盲点があること、そしてシステムには欠陥があることを認識し、実力主義を徹底するために尽力している。
他者への好奇心:他者にオープンな姿勢と強い好奇心を示し、人の言葉に是非を問わずに耳を傾け、共感を持って周囲の人を理解しようと努めている。
文化的知性:他者の文化に配慮し、必要に応じて適応している。
効果的なチームワーク:部下に権限を持たせ、思考の多様性と心理的安全性に気を配り、チームの結束に重点を置いている などの特徴があるようです。
このインクルーシブリーダーシップは心理的安全性とも関連があり、インクルーシブリーダーシップを持っているリーダーの組織やチームは心理的安全性が高いことが先行研究でわかっています。
また、近年ではイノベーションを起こすぞ~という取り組みが色々な企業でされていきていますが、 イノベーションは、従業員が新しいアイデアを開発・促進し、実行することで生まれますが、これは従業員のイノベーション行動(Innovative Work Behavior: IWB)が構成要素となっているのだそう。 つまり、イノベーション起こすためには、従業員がアイデアを生み出せるような環境づくりをしたり、従業員がイノベーション行動をすることで、イノベーションが起きる仕組みになっているのですね。 先行研究では、リーダーの役割として支援行動が起きると、IWBが向上するという結果も見られています。
そこで本研究では、インクルーシブリーダーシップが心理的安全性に影響を与え(心理的安全性を媒介として) イノベーション行動(IWB)が起きると仮説を立てました。
調査はパキスタンの繊維産業で働く企業の従業員に対してアンケート調査で行いました。 測定指標として従業員や組織における ・インクルーシブリーダーシップ ・心理的安全性 ・イノベーション行動(IWB) を測定。上司と部下合わせて180件ずつ(計360件)のデータを回収し分析を行いました。 ※ちなみに繊維産業を選んだ理由としては、 ・変化する複雑なビジネス環境が、この業界の企業に市場への革新的な対応を迫っているので、IWB は組織が競争上の優位性を獲得するのに役立つから、という理由だそうです。イノベーション行動がより必要とされる業界だから、といったところでしょうね。
・インクルーシブリーダーシップはイノベーション行動と正の関係にある(β=0.30、p<.001) ・インクルーシブリーダーシップは心理的安全と正の関係にある(β=0.40、p<.001) ・心理的安全を媒介変数として分析するとインクルーシブリーダーシップとイノベーション行動の回帰係数は小さくなった(β=0.22、p<.001) →部分的に支持するといえる。
仮説が支持された結果となり、インクルーシブリーダーシップが心理的安全性に影響を与えて、イノベーション行動につながる、という結果になりました。ですが、心理的安全を媒介とすると小さくなったので、インクルーシブリーダーシップが心理的安全性を媒介はしているものの、心理的安全が強く影響を与えているとは言い難い、といったところでしょうか。 どちらにせよインクルーシブリーダーシップがイノベーション行動に影響を与えるのはある程度言えそうな結果にはなりました。 まとめると、
・従業員はリーダーとの良質な関係を経験したときに、革新的な活動にチャレンジできる ・リーダーや仲間が支援的な行動をしてくれる信頼があるからこそチャレンジできる ・不確実性が高い時代においてイノベーション行動ができるためには、高い自律性が求められる ・リーダーと従業員の間の質の高い関係は、従業員が新しいアイデアを生み出すだけでなく、新しいアイデアを促進したり、実行したりすることで、従業員が自主的に行動できるようになっていく
という感じにまとめられるかと。 あとはここにエンゲージメントなんかも作用してきたり、インクルーシブリーダーシップを持つことで組織へのコミットメントが高まり、イノベーション行動が起きるということもあるんだそう。
リーダーとの関係性が良くなっていくことで自律性が向上したり、アイデアを考え挑戦するようになる、というのはなかなかおもしろい結果ですね。 逆にいうと、上司や社長との関係性が良くない、信頼できていない場合には、イノベーション行動などは起きにくくなるとも言えます(心理的安全性も低下するとも言えますね)。 心理的安全性という前に、まずは上司と部下の関係性構築をしていくことで、事業としてイノベーション行動につながっていくのではないでしょうか。参考になれば幸いです。ではでは。
参考記事 https://www.dhbr.net/articles/-/5895
0. 論文タイトル・URL
Impact of inclusive leadership on innovative work behavior: The role of psychological safety https://www.researchgate.net/profile/Hafiz-Habib/publication/313902404_Impact_of_inclusive_leadership_on_innovative_work_behavior_The_role_of_psychological_safety/links/5b55a3ad0f7e9b240ffddf4f/Impact-of-inclusive-leadership-on-innovative-work-behavior-The-role-of-psychological-safety.pdf
1. その論文の目的・どこのリサーチか
インクルーシブリーダーシップが仕事のイノベーション行動に与える影響について調べた研究になります。
2. (先行研究とこれまでの問題)
インクルーシブリーダーシップとは何かというと、包括的リーダーシップなどとも言われ、 一人ひとりの中にあるリーダーとしての資質を引き出し、全員で組織力を向上させようとする考え方 などと定義されることがあるのですが、わかりにくいので特徴をご紹介すると、
自分の弱みを表に出す:「自分の知らない情報について、率直に尋ねてくれる。謙虚で気取らない態度で仕事をする。そのため部下は気が楽になり、自分の意見を口に出して表明できるが、それを尊重してくれるリーダーである」
・文化的な違いを学ぶ:「異なる文化の特徴(共通の言語、慣用句、慣習、好き嫌い)と文化的重要事項を学ぶために時間を費やす」
・部下を一人の人間として認識する:「100人超のチームを率いているにもかかわらず、一人ひとりを名前で呼び、個々人の仕事の流れと内容を把握している」
というような特徴を持っているリーダーもしくは、個人個人がそのような考え方をしている組織などです。 他にも 目に見えるコミットメント:多様性への本気の取り組みを明言し、現状に疑問を投げかけ、他者に説明責任を課し、多様性と包摂を自分の優先課題としている。
謙虚さ:自分の能力に関して謙虚であり、過ちを認め、部下に貢献の余地をつくる。
バイアスへの認識:個人には盲点があること、そしてシステムには欠陥があることを認識し、実力主義を徹底するために尽力している。
他者への好奇心:他者にオープンな姿勢と強い好奇心を示し、人の言葉に是非を問わずに耳を傾け、共感を持って周囲の人を理解しようと努めている。
文化的知性:他者の文化に配慮し、必要に応じて適応している。
効果的なチームワーク:部下に権限を持たせ、思考の多様性と心理的安全性に気を配り、チームの結束に重点を置いている などの特徴があるようです。
このインクルーシブリーダーシップは心理的安全性とも関連があり、インクルーシブリーダーシップを持っているリーダーの組織やチームは心理的安全性が高いことが先行研究でわかっています。
また、近年ではイノベーションを起こすぞ~という取り組みが色々な企業でされていきていますが、 イノベーションは、従業員が新しいアイデアを開発・促進し、実行することで生まれますが、これは従業員のイノベーション行動(Innovative Work Behavior: IWB)が構成要素となっているのだそう。 つまり、イノベーション起こすためには、従業員がアイデアを生み出せるような環境づくりをしたり、従業員がイノベーション行動をすることで、イノベーションが起きる仕組みになっているのですね。 先行研究では、リーダーの役割として支援行動が起きると、IWBが向上するという結果も見られています。
3. その論文の目的(具体的に)
そこで本研究では、インクルーシブリーダーシップが心理的安全性に影響を与え(心理的安全性を媒介として) イノベーション行動(IWB)が起きると仮説を立てました。
4. 方法
調査はパキスタンの繊維産業で働く企業の従業員に対してアンケート調査で行いました。 測定指標として従業員や組織における ・インクルーシブリーダーシップ ・心理的安全性 ・イノベーション行動(IWB) を測定。上司と部下合わせて180件ずつ(計360件)のデータを回収し分析を行いました。 ※ちなみに繊維産業を選んだ理由としては、 ・変化する複雑なビジネス環境が、この業界の企業に市場への革新的な対応を迫っているので、IWB は組織が競争上の優位性を獲得するのに役立つから、という理由だそうです。イノベーション行動がより必要とされる業界だから、といったところでしょうね。
5. 結果
・インクルーシブリーダーシップはイノベーション行動と正の関係にある(β=0.30、p<.001) ・インクルーシブリーダーシップは心理的安全と正の関係にある(β=0.40、p<.001) ・心理的安全を媒介変数として分析するとインクルーシブリーダーシップとイノベーション行動の回帰係数は小さくなった(β=0.22、p<.001) →部分的に支持するといえる。
6. 結論・まとめ
仮説が支持された結果となり、インクルーシブリーダーシップが心理的安全性に影響を与えて、イノベーション行動につながる、という結果になりました。ですが、心理的安全を媒介とすると小さくなったので、インクルーシブリーダーシップが心理的安全性を媒介はしているものの、心理的安全が強く影響を与えているとは言い難い、といったところでしょうか。 どちらにせよインクルーシブリーダーシップがイノベーション行動に影響を与えるのはある程度言えそうな結果にはなりました。 まとめると、
・従業員はリーダーとの良質な関係を経験したときに、革新的な活動にチャレンジできる ・リーダーや仲間が支援的な行動をしてくれる信頼があるからこそチャレンジできる ・不確実性が高い時代においてイノベーション行動ができるためには、高い自律性が求められる ・リーダーと従業員の間の質の高い関係は、従業員が新しいアイデアを生み出すだけでなく、新しいアイデアを促進したり、実行したりすることで、従業員が自主的に行動できるようになっていく
という感じにまとめられるかと。 あとはここにエンゲージメントなんかも作用してきたり、インクルーシブリーダーシップを持つことで組織へのコミットメントが高まり、イノベーション行動が起きるということもあるんだそう。
7. どんな使い方ができる?
リーダーとの関係性が良くなっていくことで自律性が向上したり、アイデアを考え挑戦するようになる、というのはなかなかおもしろい結果ですね。 逆にいうと、上司や社長との関係性が良くない、信頼できていない場合には、イノベーション行動などは起きにくくなるとも言えます(心理的安全性も低下するとも言えますね)。 心理的安全性という前に、まずは上司と部下の関係性構築をしていくことで、事業としてイノベーション行動につながっていくのではないでしょうか。参考になれば幸いです。ではでは。