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The influence of night-time electronic device use on subsequent sleep and propensity to be physically active the following day https://www.researchgate.net/profile/Matthew-Driller/publication/331897262_The_influence_of_night-time_electronic_device_use_on_subsequent_sleep_and_propensity_to_be_physically_active_the_following_day/links/5c9aca0d45851506d72da779/The-influence-of-night-time-electronic-device-use-on-subsequent-sleep-and-propensity-to-be-physically-active-the-following-day.pdf
ワイカト大学の2019年の研究で、夜間の電子機器の使用が、睡眠と身体活動に与える影響について調べた研究になります。
睡眠の低下は、気分や認知機能の変化、肥満をはじめとする多くの慢性疾患と関連していまして、 実際、睡眠不足は食欲増進や食事摂取量の増加と関連しています。 食習慣への影響以外にも、急性の睡眠不足は、運動時の知覚的疲労感を増加させる可能性があること、 慢性的な睡眠不足は身体活動レベルの低下と相関していることなど、睡眠不足の人は身体活動へのモチベーションが低下する可能性が示唆されています。
で、睡眠の質や量の低下に関与する主な要因の一つとして、 夜間、特に睡眠前の時間帯における電子機器(タブレット、テレビ、スマートフォン、コンピュータ)の使用がありまして、これらの光を夜間に浴びると一般的に概日リズムが乱れたり、また、ブルーライトを浴びることで、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンの抑制につながり、入眠が困難になり全体的な睡眠の質と量が低下すると言われています。
しかし、あまり知られていないのは、夜間の電子機器の使用、睡眠の質と量、翌日の運動意欲や、運動中の疲れやすさとの相互作用です。 そこで、本研究の目的は、夜間の1時間の電子機器使用と、疲労感、睡眠、翌日の身体活動の傾向(運動意欲、ランニング時の疲れやすさ)との関係を検討することです。
14名(男性6名/女性8名、年齢;28±5歳)がボランティアとして研究に参加しました。 参加者は全員、睡眠障害の診断を受けておらず、ピッツバーグ睡眠品質指標(PSQI)のグローバルスコアが7以下であることを条件とした。 (→つまり元々の睡眠の質が比較的高い人たちのみを対象にしているということです。) 無作為化クロスオーバーデザインにより、参加者は1週間の間隔をおいて、 ・電子機器で電子書籍を読む「LIGHT」グループ ・ハードコピーの本を読む「CON」グループ の2つの実験を行いました。
いずれも同じ薄暗い部屋で、テーブルランプ1つだけを光源として1時間読み、すべての実験で同じテーブルランプを使用し、28Wの白熱電球を使用。 読書は、参加者の習慣的な就寝時刻までの1時間、参加者が座ったままの状態で行われ、実験者の立ち合いのもと行われます。 ちなみに自分の家で眠れるという良心的な実験でした。
測定指標は ・PSQI:PSQIは睡眠の質と睡眠障害を評価するための自己評価式19項目の尺度で、スコアは0~21の範囲であり、スコアが高いほど全体的な睡眠の質が低いことを示す。PSQIは、良好な内部信頼性と妥当性が実証されており、研究文献だけでなく、睡眠コミュニティにおいても、おそらく最も一般的に使用されている主観的な睡眠測定法である。 ・睡眠モニタリング ・主観的疲労感 ・翌朝の運動に関する指標:起床後1時間後にランニングを行ってもらい、ランニング中と後の心拍数と、RPE(Rate of Perceived Exertion)を計測した。
・主観的な睡眠の質は、電子書籍で読んだグループが紙の本を読んだグループよりも低かった。(d=-0.53) ・しかし、それ以外のすべての項目において、有意差は見られなかった。 ・有意差は見られなかったものの、翌朝の疲労感においては、(d = 0.53)と小~中程度の効果が見られた。
意外なことに、夜間に電子機器を1時間操作しても、睡眠の質は主観的には若干低下するものの、その効果は小さく、 電子機器の使用と、睡眠、翌日の運動意欲、運動中の疲労感にはほとんど影響がなかったという結果に。 iPadで読書をした場合、ハードコピーの本を読んだ場合と比べて、睡眠の質が低下したと被験者が感じていることが示唆されました。 翌朝の疲労感はわずかに増加傾向が見られたので、やはり睡眠の質は落ちているが故の影響であると考えられるみたい。
この結果に対して研究者は、 『今回の研究では、電子機器の使用による睡眠への影響は最小限に抑えられていましたが、身体活動へのモチベーションに影響を与えるほどではなかったようです。実際、両グループでは、睡眠の質と疲労感の値にわずかな差があったものの、睡眠量の測定値にはほとんど差がなかった。これらの値は、夜間の機器使用に長くさらされることで悪化する可能性があります。今後の研究では、夜間の電子機器の使用が睡眠や身体活動に及ぼす影響を、毎晩の電子機器への使用時間が長い場合(例:90分以上)、より長期間(例:複数週間)にわたってモニタリングすることが有益であると考えられる。』 と述べておりまして、 読んでいても思いましたが、「普段健康的な人が1日くらい制限かけてもそこまで影響ないんじゃない?」 という感じでした。 むしろ、慢性的に、数週間や数カ月レベルで睡眠前の電子機器の使用をしている場合は、疲労感はもちろん、身体機能の低下、運動意欲の低下、睡眠の質の低下などが見られるのではないでしょうか。
この結果から、 「じゃあ寝る前に電子機器見ても大丈夫だね!」とは残念ながら言えません。 効果は小さかったものの、研究者のコメントにあるように慢性的に行っている場合は悪影響が見られるでしょう。 1日くらい(チートデイとしてやるとか)ならば、まあ大丈夫かな? という感じかなあと。
もちろん、メラトニンの分泌が抑制されることを考えれば、電子機器よりも紙の本の方が良いので、それだけは参考にできるかと思います(どちらにせよ、薄暗い部屋で本読んでいたら多少は目が悪くなるよね(笑)) それでは。
0. 論文タイトル・URL
The influence of night-time electronic device use on subsequent sleep and propensity to be physically active the following day https://www.researchgate.net/profile/Matthew-Driller/publication/331897262_The_influence_of_night-time_electronic_device_use_on_subsequent_sleep_and_propensity_to_be_physically_active_the_following_day/links/5c9aca0d45851506d72da779/The-influence-of-night-time-electronic-device-use-on-subsequent-sleep-and-propensity-to-be-physically-active-the-following-day.pdf
1. その論文の目的・どこのリサーチか
ワイカト大学の2019年の研究で、夜間の電子機器の使用が、睡眠と身体活動に与える影響について調べた研究になります。
2. (先行研究とこれまでの問題)
睡眠の低下は、気分や認知機能の変化、肥満をはじめとする多くの慢性疾患と関連していまして、 実際、睡眠不足は食欲増進や食事摂取量の増加と関連しています。 食習慣への影響以外にも、急性の睡眠不足は、運動時の知覚的疲労感を増加させる可能性があること、 慢性的な睡眠不足は身体活動レベルの低下と相関していることなど、睡眠不足の人は身体活動へのモチベーションが低下する可能性が示唆されています。
で、睡眠の質や量の低下に関与する主な要因の一つとして、 夜間、特に睡眠前の時間帯における電子機器(タブレット、テレビ、スマートフォン、コンピュータ)の使用がありまして、これらの光を夜間に浴びると一般的に概日リズムが乱れたり、また、ブルーライトを浴びることで、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンの抑制につながり、入眠が困難になり全体的な睡眠の質と量が低下すると言われています。
3. その論文の目的(具体的に)
しかし、あまり知られていないのは、夜間の電子機器の使用、睡眠の質と量、翌日の運動意欲や、運動中の疲れやすさとの相互作用です。 そこで、本研究の目的は、夜間の1時間の電子機器使用と、疲労感、睡眠、翌日の身体活動の傾向(運動意欲、ランニング時の疲れやすさ)との関係を検討することです。
4. 方法
14名(男性6名/女性8名、年齢;28±5歳)がボランティアとして研究に参加しました。 参加者は全員、睡眠障害の診断を受けておらず、ピッツバーグ睡眠品質指標(PSQI)のグローバルスコアが7以下であることを条件とした。 (→つまり元々の睡眠の質が比較的高い人たちのみを対象にしているということです。) 無作為化クロスオーバーデザインにより、参加者は1週間の間隔をおいて、 ・電子機器で電子書籍を読む「LIGHT」グループ ・ハードコピーの本を読む「CON」グループ の2つの実験を行いました。
いずれも同じ薄暗い部屋で、テーブルランプ1つだけを光源として1時間読み、すべての実験で同じテーブルランプを使用し、28Wの白熱電球を使用。 読書は、参加者の習慣的な就寝時刻までの1時間、参加者が座ったままの状態で行われ、実験者の立ち合いのもと行われます。 ちなみに自分の家で眠れるという良心的な実験でした。
測定指標は ・PSQI:PSQIは睡眠の質と睡眠障害を評価するための自己評価式19項目の尺度で、スコアは0~21の範囲であり、スコアが高いほど全体的な睡眠の質が低いことを示す。PSQIは、良好な内部信頼性と妥当性が実証されており、研究文献だけでなく、睡眠コミュニティにおいても、おそらく最も一般的に使用されている主観的な睡眠測定法である。 ・睡眠モニタリング ・主観的疲労感 ・翌朝の運動に関する指標:起床後1時間後にランニングを行ってもらい、ランニング中と後の心拍数と、RPE(Rate of Perceived Exertion)を計測した。
5. 結果
・主観的な睡眠の質は、電子書籍で読んだグループが紙の本を読んだグループよりも低かった。(d=-0.53) ・しかし、それ以外のすべての項目において、有意差は見られなかった。 ・有意差は見られなかったものの、翌朝の疲労感においては、(d = 0.53)と小~中程度の効果が見られた。
6. 結論・まとめ
意外なことに、夜間に電子機器を1時間操作しても、睡眠の質は主観的には若干低下するものの、その効果は小さく、 電子機器の使用と、睡眠、翌日の運動意欲、運動中の疲労感にはほとんど影響がなかったという結果に。 iPadで読書をした場合、ハードコピーの本を読んだ場合と比べて、睡眠の質が低下したと被験者が感じていることが示唆されました。 翌朝の疲労感はわずかに増加傾向が見られたので、やはり睡眠の質は落ちているが故の影響であると考えられるみたい。
この結果に対して研究者は、 『今回の研究では、電子機器の使用による睡眠への影響は最小限に抑えられていましたが、身体活動へのモチベーションに影響を与えるほどではなかったようです。実際、両グループでは、睡眠の質と疲労感の値にわずかな差があったものの、睡眠量の測定値にはほとんど差がなかった。これらの値は、夜間の機器使用に長くさらされることで悪化する可能性があります。今後の研究では、夜間の電子機器の使用が睡眠や身体活動に及ぼす影響を、毎晩の電子機器への使用時間が長い場合(例:90分以上)、より長期間(例:複数週間)にわたってモニタリングすることが有益であると考えられる。』 と述べておりまして、 読んでいても思いましたが、「普段健康的な人が1日くらい制限かけてもそこまで影響ないんじゃない?」 という感じでした。 むしろ、慢性的に、数週間や数カ月レベルで睡眠前の電子機器の使用をしている場合は、疲労感はもちろん、身体機能の低下、運動意欲の低下、睡眠の質の低下などが見られるのではないでしょうか。
7. どんな使い方ができる?
この結果から、 「じゃあ寝る前に電子機器見ても大丈夫だね!」とは残念ながら言えません。 効果は小さかったものの、研究者のコメントにあるように慢性的に行っている場合は悪影響が見られるでしょう。 1日くらい(チートデイとしてやるとか)ならば、まあ大丈夫かな? という感じかなあと。
もちろん、メラトニンの分泌が抑制されることを考えれば、電子機器よりも紙の本の方が良いので、それだけは参考にできるかと思います(どちらにせよ、薄暗い部屋で本読んでいたら多少は目が悪くなるよね(笑)) それでは。