Open 9rnsr opened 3 months ago
この従来の「骨に属するコンパートメントをOther計算から除く」手法がどこから来たのかをざっと調べたところ、ICRP Publ.133 p.30 Para.16に以下のような記述を見つけました。
2.5. Derivation of specific absorbed fractions for distributed source organs
(16) Systemic biokinetic models indicate radionuclide deposition from blood to various identified source regions rS, each with its own compartmental representation in the biokinetic model. In many instances, the balance of radionuclide deposition from blood will be assigned to ‘other tissues’ of the body, which implies all other soft tissues not explicitly identified as source organs. To address this source region, which is generally unique to a given radionuclide biokinetic model, one must derive the SAF for the relevant target tissue rT. This SAF is calculated using the so-called additive approach as:
式 (2.10)
where the summation is over source regions not included explicitly in the systemic biokinetic model. Unless noted specifically in the biokinetic model, deposition to other tissues is not assigned to mineral bone in either its cortical or trabecular form. A summary of reference source tissue masses is given in Table A.3.
おそらくは以下の一文が当該手法の根拠となったと推測しておりますが、
Unless noted specifically in the biokinetic model, deposition to other tissues is not assigned to mineral bone in either its cortical or trabecular form.
しかしそれならば、sregions_2016-08-12.NDX
にてC-bone-V
とT-bone-V
のID列が0であればいいだけのはずで、従来のFlexID手法の見解を取った場合、計算処理の説明と上記の一文とが整合していない状態になっています。
以下は私の推測です。
問題の一文は、意訳すると「その他の組織の堆積から、皮質骨と骨梁骨どちらの骨塩(bone mineral, 原文ではmineral boneだがこれはおそらく誤記)への預託は、動態モデルで明示されていない限りは割り当てられない」
となりますが、ここで言及されている「骨塩」は無機質であり、おそらく[CT]-bone-V(骨の体積に含まれる生きた組織)とも[CT]-bone-S(骨の表面にある生きた組織)とも異なるものだと思います。そう読めば、ここで述べられていることは「骨塩が明示的に動態モデルで取り扱われていない限り、残留放射能や線量の計算ではこれを考慮しない」といった自然な内容になり、sregions_2016-08-12.NDX
のデータと整合すると思います。
@Maron1224 見解を頂けると助かります。
@9rnsr
ICRP Publ.133, 134
記載内容に関する見解をお伝えします。以下の計算方法でIDAC Dose2.1
の OtherのS係数
と整合しない場合は、sregions_2016-08-12.NDX
の ID=1 の線源臓器を全て含めるなど、想定されるパターンを幾つか試してみませんか?そのため、既に設定したS係数の検証対象核種以外に、Mo
のIDAC Dose2.1のS係数
を準備します。
Mo
以外では Other tissue
に C-bone-V
と T-bone-V
を含めない。R-marrow
, Y-marrow
) は、その他の ID=1 の線源臓器
と同様に扱う。Unless noted specifically in the biokinetic model, deposition to other tissues is not assigned to mineral bone in either its cortical or trabecular form.
➡「mineral bone/bone mineral
」は、C-bone-S
, C-bone-V
, T-bone-S
, T-bone-V
が該当し、骨髄(Marrow)である 皮質骨骨髄(C-marrow
) , 骨梁骨髄(T-marrow
) , 赤色(活性)骨髄(R-marrow
) , 黄色(不活性)骨髄(Y-marrow
) は該当しないようです。
OIRの元素の中で、唯一 Mo
(モリブデン)で Other tissue
に 骨 を含める
旨の記載が、Moの移行係数が記載されている Table 14.3 の注釈
にあります。このように、Publ.133で記載のあった 明記された場合 が Mo になると思います。
Table 14.3 の注釈:Includes bone and all soft tissues other than liver and kidneys. ➡
Other tissue
に骨
と肝臓・腎臓以外の全ての軟組織
を含める。
Source Regions 2016-08-12 See notes below | ------ Mass (kg) ------ 79 Male ID Female ID
C-bone-S 0.000E+00 0 0.000E+00 0 C-bone-V 4.400E+00 1 3.200E+00 1 T-bone-S 0.000E+00 0 0.000E+00 0 T-bone-V 1.100E+00 1 8.000E-01 1 C-marrow 2.790E-01 0 2.580E-01 0 T-marrow 3.371E+00 0 2.442E+00 0 R-marrow 1.170E+00 1 9.000E-01 1 Y-marrow 2.480E+00 1 1.800E+00 1
➡ Other tissue
の議論における 骨(bone mineral
) としては、C-bone-V
, T-bone-V
が対象であり、Mo
以外の元素では、現状 Other tissue には含めない。また、骨髄(marrow
)については、R-marrow
, Y-marrow
が対象となり、その他の ID=1 の線源臓器と同様に扱う。
@Maron1224 OIRの詳細な調査、ありがとうございます。骨を除く、という条件は実際に存在するため、これを正しく取り扱える必要がある旨理解できました。やはり中途半端な知識での推測は役に立ちませんね。
頂いた情報から、OtherのS係数計算については核種毎にカスタムできるよう、FlexIDに機能を追加したいと思います。方向性としては、sregions_2016-08-12.NDX
にてID=1の線源領域(あるいはそこからC-bone-V
, T-bone-V
を除いたもの)をOtherの既定の内訳としつつ、これらに任意の線源領域を追加あるいは除去することを、インプットで追加指定できるようにすることを考えています。
@9rnsr
やはり中途半端な知識での推測は役に立ちませんね。
→ いえ、ICRPの記載が不明確なものが多く、推察するか、ICRP関係者に直接尋ねないと分らないことが問題なので、貴殿の推察が私には役に立ちました。その後たまたまbone
で検索してMo
のみに、Other tissue に骨を含める
と明記されていたため、今回の方法としようと思いましたが、これも実際にICRPが計算したものと同じとは限りません。そのあたりはICRP Publicationの困ったところです。
線源領域Ohter
の内訳を調整するためのインプットの機能追加イメージを以下に示します。
[title]
Sr-90 Ingestion:Other
[parameter]
ExcludeOtherSourceRegions = C-bone-V T-bone-V
# IncludeOtherSourceRegions = Breast Lung-Tis
[nuclide]
...
[paraemeter]
セクションにて、ExcludeOtherSourceRegions
が既定のリストに対する除外を、IncludeOtherSourceRegions
が既定のリストに対する追加を設定します。優先度は除外>追加です。どちらの設定も、空白区切りで線源領域の名称を列挙する形とします。
あとは既定のOther
の内訳ですが、現状では「正しい計算手順」についてはっきりしていないことから、sregions_2016-08-12.NDX
でID=1となっているもの(つまりC-bone-V
, T-bone-V
を含む)とするのが無難だと思っています。
PR #84 にて、インプット設定によって線源領域Otherの内訳を調整する機能を追加しました。
@9rnsr ありがとうございます。
まずはこの方法でIDAC Dose2.1
とOtherのS係数を比較して、要すれば再検討しましょう。
Issue #65 を受けた PR #77 にて、OIR計算の線源領域Otherに対するS係数計算処理改善を実施しましたが、これに関して従来処理と一部整合していない箇所が生じています。
PR #77 では、Publ.133の
sregions_2016-08-12.NDX
にてID=1となっている線源領域をOtherの内訳の基本とするように実装しましたが、これには骨に属する線源領域としてC-bone-V
とT-bone-V
が含まれており、このことから、これらが体内動態モデルでコンパートメントとして明示されない場合はOther計算の対象として含まれるようになっています。これに対して従来のFlexIDにおける計算では「Otherは骨を除くコンパートメントであるため、
C-bone-S
、C-bone-V
、T-bone-S
、T-bone-V
は常にOtherの計算から除外する」という記述がマニュアルの添付資料2に書かれていました。またExcelファイルを使ったS係数の計算手順について述べている添付資料3でも、同様のことが書かれていました。この、骨に属する線源領域のOther計算における取り扱いについて、FlexIDではどちらを取るべきでしょうか。