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内部被ばく線量評価コードFlexID (Flexible code for Internal Dosimetry)
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骨に属する線源領域のS係数(T←Other)計算における取り扱い #81

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9rnsr commented 3 months ago

Issue #65 を受けた PR #77 にて、OIR計算の線源領域Otherに対するS係数計算処理改善を実施しましたが、これに関して従来処理と一部整合していない箇所が生じています。

PR #77 では、Publ.133のsregions_2016-08-12.NDXにてID=1となっている線源領域をOtherの内訳の基本とするように実装しましたが、これには骨に属する線源領域としてC-bone-VT-bone-Vが含まれており、このことから、これらが体内動態モデルでコンパートメントとして明示されない場合はOther計算の対象として含まれるようになっています。

これに対して従来のFlexIDにおける計算では「Otherは骨を除くコンパートメントであるため、C-bone-SC-bone-VT-bone-ST-bone-Vは常にOtherの計算から除外する」という記述がマニュアルの添付資料2に書かれていました。またExcelファイルを使ったS係数の計算手順について述べている添付資料3でも、同様のことが書かれていました。

この、骨に属する線源領域のOther計算における取り扱いについて、FlexIDではどちらを取るべきでしょうか。

9rnsr commented 3 months ago

この従来の「骨に属するコンパートメントをOther計算から除く」手法がどこから来たのかをざっと調べたところ、ICRP Publ.133 p.30 Para.16に以下のような記述を見つけました。

2.5. Derivation of specific absorbed fractions for distributed source organs

(16) Systemic biokinetic models indicate radionuclide deposition from blood to various identified source regions rS, each with its own compartmental representation in the biokinetic model. In many instances, the balance of radionuclide deposition from blood will be assigned to ‘other tissues’ of the body, which implies all other soft tissues not explicitly identified as source organs. To address this source region, which is generally unique to a given radionuclide biokinetic model, one must derive the SAF for the relevant target tissue rT. This SAF is calculated using the so-called additive approach as:

式 (2.10)

where the summation is over source regions not included explicitly in the systemic biokinetic model. Unless noted specifically in the biokinetic model, deposition to other tissues is not assigned to mineral bone in either its cortical or trabecular form. A summary of reference source tissue masses is given in Table A.3.

おそらくは以下の一文が当該手法の根拠となったと推測しておりますが、

Unless noted specifically in the biokinetic model, deposition to other tissues is not assigned to mineral bone in either its cortical or trabecular form.

しかしそれならば、sregions_2016-08-12.NDXにてC-bone-VT-bone-VのID列が0であればいいだけのはずで、従来のFlexID手法の見解を取った場合、計算処理の説明と上記の一文とが整合していない状態になっています。

以下は私の推測です。

問題の一文は、意訳すると「その他の組織の堆積から、皮質骨と骨梁骨どちらの骨塩(bone mineral, 原文ではmineral boneだがこれはおそらく誤記)への預託は、動態モデルで明示されていない限りは割り当てられない」 となりますが、ここで言及されている「骨塩」は無機質であり、おそらく[CT]-bone-V(骨の体積に含まれる生きた組織)とも[CT]-bone-S(骨の表面にある生きた組織)とも異なるものだと思います。そう読めば、ここで述べられていることは「骨塩が明示的に動態モデルで取り扱われていない限り、残留放射能や線量の計算ではこれを考慮しない」といった自然な内容になり、sregions_2016-08-12.NDXのデータと整合すると思います。

9rnsr commented 3 months ago

@Maron1224 見解を頂けると助かります。

Maron1224 commented 3 months ago

@9rnsr ICRP Publ.133, 134 記載内容に関する見解をお伝えします。以下の計算方法でIDAC Dose2.1OtherのS係数と整合しない場合は、sregions_2016-08-12.NDX の ID=1 の線源臓器を全て含めるなど、想定されるパターンを幾つか試してみませんか?そのため、既に設定したS係数の検証対象核種以外に、MoIDAC Dose2.1のS係数を準備します。

結論

  1. OIR記載元素のうち、Mo以外では Other tissueC-bone-VT-bone-V を含めない。
  2. 骨髄( R-marrow , Y-marrow) は、その他の ID=1 の線源臓器と同様に扱う。

ICRP Publ.133

Unless noted specifically in the biokinetic model, deposition to other tissues is not assigned to mineral bone in either its cortical or trabecular form.

 ➡「mineral bone/bone mineral」は、C-bone-S , C-bone-V , T-bone-S , T-bone-V が該当し、骨髄(Marrow)である 皮質骨骨髄(C-marrow) , 骨梁骨髄(T-marrow) , 赤色(活性)骨髄(R-marrow) , 黄色(不活性)骨髄(Y-marrow) は該当しないようです。

ICRP Publ.134 (p.310, Table 14.3)

OIRの元素の中で、唯一 Mo(モリブデン)で Other tissue骨 を含める 旨の記載が、Moの移行係数が記載されている Table 14.3 の注釈にあります。このように、Publ.133で記載のあった 明記された場合 が Mo になると思います。

Table 14.3 の注釈:Includes bone and all soft tissues other than liver and kidneys.  ➡ Other tissue肝臓・腎臓以外の全ての軟組織を含める。

image

sregions_2016-08-12.NDX

Source Regions 2016-08-12 See notes below | ------ Mass (kg) ------ 79 Male ID Female ID

C-bone-S 0.000E+00 0 0.000E+00 0 C-bone-V 4.400E+00 1 3.200E+00 1 T-bone-S 0.000E+00 0 0.000E+00 0 T-bone-V 1.100E+00 1 8.000E-01 1 C-marrow 2.790E-01 0 2.580E-01 0 T-marrow 3.371E+00 0 2.442E+00 0 R-marrow 1.170E+00 1 9.000E-01 1 Y-marrow 2.480E+00 1 1.800E+00 1

Other tissue の議論における 骨(bone mineral) としては、C-bone-V , T-bone-V が対象であり、Mo 以外の元素では、現状 Other tissue には含めない。また、骨髄(marrow)については、R-marrow , Y-marrow が対象となり、その他の ID=1 の線源臓器と同様に扱う。

9rnsr commented 3 months ago

@Maron1224 OIRの詳細な調査、ありがとうございます。骨を除く、という条件は実際に存在するため、これを正しく取り扱える必要がある旨理解できました。やはり中途半端な知識での推測は役に立ちませんね。

頂いた情報から、OtherのS係数計算については核種毎にカスタムできるよう、FlexIDに機能を追加したいと思います。方向性としては、sregions_2016-08-12.NDXにてID=1の線源領域(あるいはそこからC-bone-V, T-bone-Vを除いたもの)をOtherの既定の内訳としつつ、これらに任意の線源領域を追加あるいは除去することを、インプットで追加指定できるようにすることを考えています。

Maron1224 commented 3 months ago

@9rnsr

やはり中途半端な知識での推測は役に立ちませんね。

→ いえ、ICRPの記載が不明確なものが多く、推察するか、ICRP関係者に直接尋ねないと分らないことが問題なので、貴殿の推察が私には役に立ちました。その後たまたまboneで検索してMoのみに、Other tissue に骨を含めると明記されていたため、今回の方法としようと思いましたが、これも実際にICRPが計算したものと同じとは限りません。そのあたりはICRP Publicationの困ったところです。

9rnsr commented 3 months ago

線源領域Ohterの内訳を調整するためのインプットの機能追加イメージを以下に示します。

[title]
Sr-90 Ingestion:Other

[parameter]
ExcludeOtherSourceRegions = C-bone-V T-bone-V
# IncludeOtherSourceRegions = Breast Lung-Tis

[nuclide]
...

[paraemeter]セクションにて、ExcludeOtherSourceRegionsが既定のリストに対する除外を、IncludeOtherSourceRegionsが既定のリストに対する追加を設定します。優先度は除外>追加です。どちらの設定も、空白区切りで線源領域の名称を列挙する形とします。

あとは既定のOtherの内訳ですが、現状では「正しい計算手順」についてはっきりしていないことから、sregions_2016-08-12.NDXでID=1となっているもの(つまりC-bone-V, T-bone-Vを含む)とするのが無難だと思っています。

9rnsr commented 2 months ago

PR #84 にて、インプット設定によって線源領域Otherの内訳を調整する機能を追加しました。

Maron1224 commented 2 months ago

@9rnsr ありがとうございます。 まずはこの方法でIDAC Dose2.1とOtherのS係数を比較して、要すれば再検討しましょう。