ma96o
commented
2 years ago TD;LR
- エフェクチュエーション（effectuation: 実効理論）とは起業家の思考様式を理論化したもの
- 起業家がどのような意思決定をするのか，その「論理」「プロセス」「5つの原則」を体系化
- ざっくりというと，既存のリソースをフル活用して，損失を上限としたリスクコントロールをして，あくまで創るという能動的な行為をしていこう，そのための戦略論という感じ
- あくまで特定の文脈において有効な特殊解である
- この「特定の文脈」とは「未来が予測不能で、目標が不明瞭で、活動が環境を駆動する」場合
- 簡潔に言えば，経営における 0 → 1 のフェーズ
- 「causation (因果推測)」の対概念として提唱された造語
- キーワード
- 手段主導，損失が許容可能か，パートナーシップ，偶然をテコとして活用，予測ではなくコントロール
エフェクチュエーション（effectuation: 実効理論）とは
- 不確実性の高い市場環境に対処する起業家の思考様式，あるいは思考プロセス
- 「エキスパート」の起業家を対象とした意思決定実験を通して発見された
- インド出身の経営学者サラス・サラスバシー(Saras Sarasvathy)が2008年に書籍『Effectuation: Elements of Entrepreneurial Expertise (New Horizons in Entrepreneurship)』（接頭語Eで韻踏んでやがる）の中で体系化した
前提
- エフェクチュエーションは，特定の文脈に埋め込まれた特殊解としての戦略である
- 市場は発見されるものではなく「つむぎだされる（fabricated）」ものである
- 未来は予測可能であり、ゆえに目的から逆算する「コーゼーション（因果推測）」という従来の考え方の対比
- 「cause and effect」から着想を得た
- ただし，２つは対立関係ではなく、状況に応じて二つの手法は使い分けられる
以下引用とメモ
エフェクチュエーションに基づく戦略マネジメントは、永遠の優位性を追い求める代わりに、自発的なイグジットと結びついた、活力と創造力を重視し、製品、事業単位、企業、市場のやがて訪れる衰退の運命さえも、経済の発展と繁栄を築くための効果的な方法と捉える
- ポジションを取っていないからこそできる態度
- 現代の経営学の競争戦略論においては，「持続的競争優位の源泉の一般化（ / 競争戦略の一般化) 」なんてないよねって感じらしい
- エフェクチュエーションも同じような立場を取ってる
市場は創造するものであり、エフェクチュエーションは、人間が作った世界において物事を生み出すための「デザイン」原則でもある
- 起業をサイエンス的行為ではなくアート的行為として実践する
エフェクチュエーションが有効となる不確実な状況下では、日々状況を観察し、周囲の人々に働きかけて、現在を起業家自身の戦略によってつむぎ出せば良い
- 洞察と注意，DIYスピリット
コーゼーション（causation: 因果推測）とは
- 従来の経営学が重視してきた因果論
- そのアプローチは，目的に対して最適な手段（原因）を追求するもので，つまり，因果性を重視する
- 目的が明確で，環境が(情報収集による)予測可能で，それを前提に計画を立てられる場合に，有効である
- 予測を根拠に合理的な選択が行える
- しかし，「予測の限界」はあらゆる分野で発現している
- causation によって対応できない不確実性というのが存在している
- ちなみに，このリスクもコストとして換算することが不可能なレベルの不確実性にリスクをとるからこそ，起業家は市場を独占できると言えるらしい
- ref. フランク・H・ナイト『リスク，不確実性，利潤』
causation / effectuation
前提の違い
思考プロセスの違い
ref. 優れた起業家の思考を体系化「エフェクチュエーション」とは | ウゴイテワカル研究所
エフェクチュエーションのプロセス
ref. エフェクチュエーションとは何か 吉田満梨(神戸大学) - YouTube
- まず所与の手段から始める
- 3つの問いによって導き出す
- 何をするべきかではなく，何ができるか？で実行する
- 実行の意思決定は，うまくいくか/リターンがどれほどかではなく，損失が許容できるか？で決める
- うまくいくか/リターンがどれほどかは，不確実性が高いと判断不能
- 実行の意思決定は，うまくいくか/リターンがどれほどかではなく，損失が許容できるか？で決める
- 他者とネットワーク関係を構築する
- パートナーシップを構築する
- ↑の過程で，新たな手段 / 新たな目的を獲得したら，フィードバックする
- 予期せぬ手段の生成・目的の変更を偶然として活用する
- 目的/手段の再定義によって，以上のプロセスを繰り返す
- プロセスに「予測」は一切不要
- このプロセスをコントロールしていく結果として，新たな企業/製品/市場を創り出す
５つの原則
- エフェクチュエーションを構成する5つの原則
「手中の鳥（Bird in Hand）」の原則
- 「目的主導」ではなく，既存の「手段主導」で新たなものをつくるということ
- 既存のリソース（能力、専門性、社会的ネットワークなど）を活用し新しいビジネスチャンスを形成する
- 「３つの資源」を再考する
- 「私は誰であるのか（who I am）」特質、能力、属性
- 「何を知っているのか（what I know）」教育、専門性、経験
- 「誰を知っているのか（whom I know）」社会的ネットワーク
「許容可能な損失（Affordable Loss）」の原則
- 期待利益の大きさではなく，損失が許容可能かに基づいてコミットすること
- 予測不能な未来に対し、どの程度まで損失を許容できるか、ということを事前にすり合わせておくこと
- 投資に対するリターンが見えない中で、事前に決めていた許容可能な損失を上限として行動することで、リスクコントロールをする
- 少額の投資でトライ&エラーを繰り返し次のプロセスへと進むことの重要性を示唆
「クレイジーキルト（Crazy-Quilt）」の原則
- ユーザーや競合他社，従業員など，起業家をとりまく全ての関与者と関係性を保ち、パートナーシップを築くこと
- ref. crazy-quilt: 大きさも柄も違う布切れを縫い合わせて作られた布のこと
- 一連の関係者として競合他社が含まれているのが大きな特徴で、予測不能な状況下で、対立関係としてつながりを断絶するのではなく、パートナーとして巻き込む
「レモネード（Lemonade）」の原則
- 予期せぬ事態をさけるのではなく，むしろ偶然をテコとして活用すること
- 失敗作や欠陥品（lemon）も見方を変えたり、使い方を工夫すれば新しい価値を生み出せる
- ref. 「When life gives you lemons, make lemonade（人生がレモンをくれたら、レモネードを作ればいい）」
「飛行機の中のパイロット（Pilot-in-the-plane）」の原則
- 予測ではなく，コントロールによって望ましい成果を帰結させる
- 操縦桿を握る飛行中のパイロットのように、常に変化する計測器の数値を確認しながら、刻一刻と変わりゆく状況を冷静に観察し、臨機応変に対応するということ
- ここまでの4つの原則を網羅した上で、その状況に応じた行動をする重要を語る原則
最近，事業計画に向けてパートナーと2人で，リサーチして，コード書いてということをしている．リサーチする，書く&話すで共有，わからないこと/ 解決されていないことがわかる，リサーチする，，みたいなループを2人で短期間で繰り返していると，割と学習効率が良い．なので，こういうの学習プロセスとして理論化されていないかな，と調べていた．
しかし，ちょうどいいのが見当たらない．教育者と学習者がいるような教育実践における理論とか組織の学習理論などは見つかるが，うまくはまらない．調べていた中で目に止まったのが「エフェクチュエーション」という経営学の理論．上述の学習プロセスとは全く関連がない．が，気になってしまったので，整理した．