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Reexamining Adaptation and the Set Point Model of Happiness: Reactions to Changes in Marital Status https://static1.squarespace.com/static/54694fa6e4b0eaec4530f99d/t/54c7048ee4b0da34c29ca646/1422328974467/Reactions+to+change+in+marital+status+2002.pdf
2003年のミシガン大学らが行った研究で、結婚と離婚が幸福感に与える影響に関する研究です。
Q.結婚した方が幸せだと思いますか?
あなたはこのような質問をされたらどう答えますか? 「人によるんじゃない?」とか 「女性は結婚した方が幸せなんじゃないの?」とか 「高齢になってからひとりっていうのも寂しそうだよね」とか 色々な答えがあると思いますが、科学的にはどう答えられるのか気になったので調べてみました。
適応に関する先行研究によると、 『人は時間の経過とともに、最も極端なポジティブおよびネガティブな生活環境にも適応していくため、安定したレベルの幸福を経験する運命にある』 という理論があります。主観的な幸福度はどんな人でも対して変わらない(ばらつきが少ない)ようで、 宝くじで1億円当たった人と、衰弱したり、骨折を経験してしまった人でも、平均的な主観的幸福度はそんなに大差ないということ。実際の研究では、宝くじで当たった人とそうでない人では、予想よりも幸福感に差がなかったようで有意ではなかったみたい(若干幸せなくらい)で、また脊髄損傷者もそうでない人に比べて、予想よりも幸福感が低くなかったみたい。 ※ただ、この実験の弱点としては、同じ人物のイベントが起こる前と後を比較しているわけではないので、 宝くじが当たった人と、脊髄損傷者を単純に比べられなくない? みたいな話があったりします。
また、人は人生に起こるライフイベントに対して、その時は強く反応することがあっても、 最終的には(一定期間時間が経つと) 当初(ベースライン)の幸福レベルに戻ることが証拠によって示されています。 これをヘドニック・トレッドミル理論といいまして、人間の適応は必然的なものであり、 主観的幸福感の長期的な変動は、生活環境ではなく性格や遺伝的素質によって説明できると結論づけているというのが現在の定説になっております。
と、いうことであれば、、 結婚しても適応してしまうのだから、幸福度は結婚している人でもしていなくても、 大して変わらないんじゃないの? と言えるのではないか?ということ。
そこで本研究では、大規模な縦断的研究のデータを用いて、婚姻状況の変化に適応するかどうかを検証することを目的としました。具体的には、生活満足度(主観的幸福感の構成要素の1つ)のレベルが、結婚生活の変化後にベースラインのレベルに戻るかどうかを検証します。
ドイツに住む24763名を1984年から15年間にわたって追跡調査して、 ・人口統計的な質問(年齢・性別とか) ・配偶者の有無 ・雇用に関する質問 ・生活満足度(Life Satisfaction)→主観的幸福度の要素 を質問しました。
・結婚前と結婚後の生活満足度を比較したところ、結婚後の満足度は0.115点だけ上昇した(10段階中)。 (独身時の満足度が6.7だったのに対し、結婚後は6.8でしかなかった。) ※調査開始前に未婚で、調査開始後にどこかのタイミングで結婚し、離婚していない場合
・結婚した夫婦は、結婚の1年前から幸福度が上昇したが、結婚の1年後にはもとのベースラインまで戻っていた。 ・離婚した夫婦は、離婚の1年前から満足度が低下し始めていた。 ・結婚して最初の数年間は、独身時代の満足度よりも低下する傾向にあるが、数年経つと適応が起こり、もとのベースラインまで戻る。
・死別または離婚して、再婚しなかった夫婦は、8年後に最もベースラインに近い状態まで戻った(平均6.55) (ただし、初期のベースラインレベルを0.15ポイント低い)。 ・結婚は個人差による部分が大きく、結婚前のベースラインがもともと低かった人は結婚後に満足度が向上した。 ・しかし、結婚に対してそこまで大事に思っていなかったり、否定的な考えを持っていた人は、 幸福度が結婚前と変わらない、もしくは結婚したことで、むしろ満足度が低下した。
今回の結果に対して研究者は次のようにコメントしておりまして、 『適応はしばしば起こるが、それはゆっくりとした部分的なものであり、適応を示さない人も多くいることを示していた。このような適応の個人差は、平均的な傾向だけを見ていると見落とされがちであり、 結婚生活の変化に対する個人の反応や適応にかなりのばらつきがあることを示している。 結婚後、すべての人が元の満足度に戻るということはなく、結婚前よりも幸せになる人もいれば、同じくらいの割合の人が結婚前よりも幸せでなくなるのです。ほとんどの人が結婚をポジティブな出来事だと考えているにもかかわらず、結婚前よりも幸せでなくなった人と、結婚前よりも幸せになった人が同じくらいいることがわかりました。 これは結婚は楽しいものであり、やりがいのあるものでもあるが、非常にストレスの多いものでもあるという事実を反映していると思われます。 これらの結果から、主観的幸福の長期的なレベルは、性格や遺伝的素質だけで決まるわけではないということが示された。**』 と仰っておりました。
ごちゃっとしてしまったのでざっくり総括すると、 ・結婚してもそこまで幸福度・生活満足度が上がるわけではない。 ・結婚によってメリットが得られる人とそうでない人の違いとしては、結婚から得られるメリットがその人にとってどれほど大きいかに依存しており、 もともと外向的で出会いや刺激も多い人は、結婚によってそれが損なわれるか、結婚によるメリットが小さい。 ・逆に、孤独だったり、神経症傾向的で人との出会いもあまり少ない人にとっては、パートナーの存在が支えにもなり、 結婚によって得られるメリットが大きいため、満足度が向上したと考えられる。 ・ただし、こうしたパーソナリティの要因だけでなく、パートナーとの関係性や、自分やパートナーに起こる外部要因など、様々なライフイベントが結婚生活を左右するため、満足度は総合的な状況によって決まる。 ・そのため、ある程度人生満足度が高い(独身時に人生がうまくいっていると主観的に感じられている人)は、 結婚によるポジティブな変化と引き換えに、元々持っていたもの(自分だけの時間や人間関係)を損なう可能性が大きい。 ・離婚しても数年経てば適応する(個人差もある)。 とまあこんな感じでしょうか。
個人的におもしろかったのは、 心理学者が「どうすれば幸福感を高められるか?」を考えたときに、 「何をすれば幸せになるか?」をやってもだめで、 これは主観的幸福感は、ライフイベントなどの客観的な出来事に依存しないから、なのですね。 だから研究者が行うのは、「幸せな人の特徴を集めて、その人がどんな特徴、考え方を持っているのかを調べて真似る方が幸せになれるはずだと考えたわけです。例えば幸福学の第一人者の前野先生ならこんな感じに。 ①自己実現と成長(「やってみよう」因子) 夢、目標、自分の強みを持ち、夢や目標を達成しようと努力する。 ②つながりと感謝(「ありがとう」因子) 多様な人とつながり、感謝する。 ③前向きと楽観(「なんとかなる!」因子) 物事を前向きに、また楽観的にとらえる。 ④独立とマイペース(「あなたらしく!」因子) 自分らしく、他の人に左右されずに、マイペースで生きる。
この研究でわかったことは、結婚してもしなくても幸福度に関しては大して変わらない! という話だけでなく、結婚ほど大きいライフイベントでさえ、主観的な幸福感にそこまで大きな影響を与えない! こともわかりました。
また別の研究では 自分の意志で独身を選択する人は人生の満足感が高いこともわかっているので、 一人身でうまくいっている時はそれでもいいんじゃない? 無理して結婚とか再婚とかしなくても、幸せになれるかどうかは変わらないんだぜ!
というお話でした。それでは!
0. 論文タイトル・URL
Reexamining Adaptation and the Set Point Model of Happiness: Reactions to Changes in Marital Status https://static1.squarespace.com/static/54694fa6e4b0eaec4530f99d/t/54c7048ee4b0da34c29ca646/1422328974467/Reactions+to+change+in+marital+status+2002.pdf
1. その論文の目的・どこのリサーチか
2003年のミシガン大学らが行った研究で、結婚と離婚が幸福感に与える影響に関する研究です。
2. (先行研究とこれまでの問題)
Q.結婚した方が幸せだと思いますか?
あなたはこのような質問をされたらどう答えますか? 「人によるんじゃない?」とか 「女性は結婚した方が幸せなんじゃないの?」とか 「高齢になってからひとりっていうのも寂しそうだよね」とか 色々な答えがあると思いますが、科学的にはどう答えられるのか気になったので調べてみました。
適応に関する先行研究によると、 『人は時間の経過とともに、最も極端なポジティブおよびネガティブな生活環境にも適応していくため、安定したレベルの幸福を経験する運命にある』 という理論があります。主観的な幸福度はどんな人でも対して変わらない(ばらつきが少ない)ようで、 宝くじで1億円当たった人と、衰弱したり、骨折を経験してしまった人でも、平均的な主観的幸福度はそんなに大差ないということ。実際の研究では、宝くじで当たった人とそうでない人では、予想よりも幸福感に差がなかったようで有意ではなかったみたい(若干幸せなくらい)で、また脊髄損傷者もそうでない人に比べて、予想よりも幸福感が低くなかったみたい。 ※ただ、この実験の弱点としては、同じ人物のイベントが起こる前と後を比較しているわけではないので、 宝くじが当たった人と、脊髄損傷者を単純に比べられなくない? みたいな話があったりします。
また、人は人生に起こるライフイベントに対して、その時は強く反応することがあっても、 最終的には(一定期間時間が経つと) 当初(ベースライン)の幸福レベルに戻ることが証拠によって示されています。 これをヘドニック・トレッドミル理論といいまして、人間の適応は必然的なものであり、 主観的幸福感の長期的な変動は、生活環境ではなく性格や遺伝的素質によって説明できると結論づけているというのが現在の定説になっております。
と、いうことであれば、、 結婚しても適応してしまうのだから、幸福度は結婚している人でもしていなくても、 大して変わらないんじゃないの? と言えるのではないか?ということ。
3. その論文の目的(具体的に)
そこで本研究では、大規模な縦断的研究のデータを用いて、婚姻状況の変化に適応するかどうかを検証することを目的としました。具体的には、生活満足度(主観的幸福感の構成要素の1つ)のレベルが、結婚生活の変化後にベースラインのレベルに戻るかどうかを検証します。
4. 方法
ドイツに住む24763名を1984年から15年間にわたって追跡調査して、 ・人口統計的な質問(年齢・性別とか) ・配偶者の有無 ・雇用に関する質問 ・生活満足度(Life Satisfaction)→主観的幸福度の要素 を質問しました。
5. 結果
・結婚前と結婚後の生活満足度を比較したところ、結婚後の満足度は0.115点だけ上昇した(10段階中)。 (独身時の満足度が6.7だったのに対し、結婚後は6.8でしかなかった。) ※調査開始前に未婚で、調査開始後にどこかのタイミングで結婚し、離婚していない場合
・結婚した夫婦は、結婚の1年前から幸福度が上昇したが、結婚の1年後にはもとのベースラインまで戻っていた。 ・離婚した夫婦は、離婚の1年前から満足度が低下し始めていた。 ・結婚して最初の数年間は、独身時代の満足度よりも低下する傾向にあるが、数年経つと適応が起こり、もとのベースラインまで戻る。
・死別または離婚して、再婚しなかった夫婦は、8年後に最もベースラインに近い状態まで戻った(平均6.55) (ただし、初期のベースラインレベルを0.15ポイント低い)。 ・結婚は個人差による部分が大きく、結婚前のベースラインがもともと低かった人は結婚後に満足度が向上した。 ・しかし、結婚に対してそこまで大事に思っていなかったり、否定的な考えを持っていた人は、 幸福度が結婚前と変わらない、もしくは結婚したことで、むしろ満足度が低下した。
6. 結論・まとめ
今回の結果に対して研究者は次のようにコメントしておりまして、 『適応はしばしば起こるが、それはゆっくりとした部分的なものであり、適応を示さない人も多くいることを示していた。このような適応の個人差は、平均的な傾向だけを見ていると見落とされがちであり、 結婚生活の変化に対する個人の反応や適応にかなりのばらつきがあることを示している。 結婚後、すべての人が元の満足度に戻るということはなく、結婚前よりも幸せになる人もいれば、同じくらいの割合の人が結婚前よりも幸せでなくなるのです。ほとんどの人が結婚をポジティブな出来事だと考えているにもかかわらず、結婚前よりも幸せでなくなった人と、結婚前よりも幸せになった人が同じくらいいることがわかりました。 これは結婚は楽しいものであり、やりがいのあるものでもあるが、非常にストレスの多いものでもあるという事実を反映していると思われます。 これらの結果から、主観的幸福の長期的なレベルは、性格や遺伝的素質だけで決まるわけではないということが示された。**』 と仰っておりました。
ごちゃっとしてしまったのでざっくり総括すると、 ・結婚してもそこまで幸福度・生活満足度が上がるわけではない。 ・結婚によってメリットが得られる人とそうでない人の違いとしては、結婚から得られるメリットがその人にとってどれほど大きいかに依存しており、 もともと外向的で出会いや刺激も多い人は、結婚によってそれが損なわれるか、結婚によるメリットが小さい。 ・逆に、孤独だったり、神経症傾向的で人との出会いもあまり少ない人にとっては、パートナーの存在が支えにもなり、 結婚によって得られるメリットが大きいため、満足度が向上したと考えられる。 ・ただし、こうしたパーソナリティの要因だけでなく、パートナーとの関係性や、自分やパートナーに起こる外部要因など、様々なライフイベントが結婚生活を左右するため、満足度は総合的な状況によって決まる。 ・そのため、ある程度人生満足度が高い(独身時に人生がうまくいっていると主観的に感じられている人)は、 結婚によるポジティブな変化と引き換えに、元々持っていたもの(自分だけの時間や人間関係)を損なう可能性が大きい。 ・離婚しても数年経てば適応する(個人差もある)。 とまあこんな感じでしょうか。
7. どんな使い方ができる?
個人的におもしろかったのは、 心理学者が「どうすれば幸福感を高められるか?」を考えたときに、 「何をすれば幸せになるか?」をやってもだめで、 これは主観的幸福感は、ライフイベントなどの客観的な出来事に依存しないから、なのですね。 だから研究者が行うのは、「幸せな人の特徴を集めて、その人がどんな特徴、考え方を持っているのかを調べて真似る方が幸せになれるはずだと考えたわけです。例えば幸福学の第一人者の前野先生ならこんな感じに。 ①自己実現と成長(「やってみよう」因子) 夢、目標、自分の強みを持ち、夢や目標を達成しようと努力する。 ②つながりと感謝(「ありがとう」因子) 多様な人とつながり、感謝する。 ③前向きと楽観(「なんとかなる!」因子) 物事を前向きに、また楽観的にとらえる。 ④独立とマイペース(「あなたらしく!」因子) 自分らしく、他の人に左右されずに、マイペースで生きる。
この研究でわかったことは、結婚してもしなくても幸福度に関しては大して変わらない! という話だけでなく、結婚ほど大きいライフイベントでさえ、主観的な幸福感にそこまで大きな影響を与えない! こともわかりました。
また別の研究では 自分の意志で独身を選択する人は人生の満足感が高いこともわかっているので、 一人身でうまくいっている時はそれでもいいんじゃない? 無理して結婚とか再婚とかしなくても、幸せになれるかどうかは変わらないんだぜ!
というお話でした。それでは!