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Daytime microsleeps during 7 days of sleep restriction followed by 13 days of sleep recovery in healthy young adults #135

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0. 論文タイトル・URL

Daytime microsleeps during 7 days of sleep restriction followed by 13 days of sleep recovery in healthy young adults https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1053810017302271

1. その論文の目的・どこのリサーチか

パリ・デカルト大学(現在のパリ大学)が2018年に行った睡眠に関する研究で、7日間の睡眠制限と13日間の睡眠回復の影響を調べた研究になります。

2. (先行研究とこれまでの問題)

今回は前回に引き続き慢性的な睡眠不足に関するお話です。

単発的な睡眠不足であれば、次の日にぐっすり眠ることや、昼寝を取ることで睡眠不足を補うことができますが、 慢性的な睡眠不足ほど厄介なものはありません。 事実たった2週間、慢性的な睡眠不足になるだけで、 ・1日~2日徹夜した程度と同レベルの認知機能まで低下する ・慢性的な睡眠不足になっていて、認知機能が低下しているにも関わらず危機感を全く感じていない という、慢性的な睡眠不足は思っているほどヤバいんだぜ、ってお話をさせていただきました。

それほど問題であるにも関わらずなかなか解決できないのが慢性的な睡眠不足。 しかも睡眠不足になっている当の本人は 「まあちょっと眠いくらいでーす」 というレベルの覚醒度を報告する傾向がありまして、 自分がいかに睡眠不足になっているかを正しく評価できなくなっているのですな。

睡眠不足に関する研究では意図的に睡眠不足を引き起こすために睡眠制限をかけるのですが、これまでの睡眠制限と回復期に関する研究では睡眠を制限させて2~3日程度しか回復期間を設けておらず、慢性的な睡眠不足が回復するのにどの程度、リハビリ的な時間がかかるのかを長期的に観察した研究はなかったのだそう。

3. その論文の目的(具体的に)

そこで本研究では、 ・7日間の睡眠制限(4時間睡眠)と13日間の回復睡眠が、日中のマイクロスリープ・覚醒維持能力・主観的眠気にどんな影響を及ぼすのか を調べてくれております。

4. 方法

12名の健康な男性の参加者を対象に実験をおこないました(カフェインを多く摂取している人や、飲酒を頻繁にしている人喫煙者も除外しています)。 参加者には実験8日前から23時~7時の睡眠を行ってもらい、睡眠測定のデバイスで睡眠を記録(1時間以上の逸脱は✖)。 その後実験開始7日間は2時~6時の計4時間睡眠を行ってもらいます(昼寝などはさせない)。 7日間の睡眠制限のあとは13日間の回復期間に入り、23時~7時の8時間睡眠に戻してもらいます。

参加者には ・夜間の睡眠記録 ・日中のマイクロスリープ:(自分では眠気が無いと思っていても目を開けたまま瞬間的に眠ってしまうという現象。慣れた単純作業、退屈な授業、会議など気を抜いても問題ないシーンではよりマイクロスリープが起こる可能性が高くなる) ・覚醒維持テスト(The maintenance of wakefulness test (MWT)):40分間ひたすら起きていてもらう。ただし、歌ったり顔をつねるなど無理に起きるような動作は禁じられている。 ・主観的な眠気の評価(KSS) を測定してもらいました。

この実験のすごいところは、7日間ほぼ監禁状態で日中のマイクロスリープ(どのくらい眠気が襲ってくるのか)を測定する ために、2時間間隔で脳波を測定しているというところなのですな。(参加者は相当大変な実験だったはず、、)

5. 結果

その結果何がわかったかといいますと、 ・睡眠制限を行うと、Deep Sleepの割合が増加し、睡眠制限をやめると元に戻った

睡眠制限を行うとレム睡眠の割合は減少し、レム睡眠は回復期間2日目になって戻った

一週間睡眠制限が続くと、ベースライン時と比較して日中のマイクロスリープが増加した。しかも、その影響は回復期間の2週間の間にも持続していた。

眠気のレベルも睡眠制限6日目以降から強く現れ始めた。

回復期において、参加者はたった一晩の回復(回復期間1日目)でリフレッシュしたと評価したが、 マイクロスリープの回数で証明されるように、眠気のレベルはまだ影響を受けていた。Deep Sleepの割合は増加したものの、レム睡眠が回復していないことから、レム睡眠が回復のために大きく関与している可能性がある。

睡眠回復後12日目の夜には、すべてのパラメータがベースラインレベルに回復した

6. 結論・まとめ

ということでざっくりまとめますと、 ・慢性的な睡眠不足になっている場合、最低でも12日間は8時間睡眠の回復期間を行わないと元のレベルまで回復しない! ・慢性的な睡眠不足を抱えていて、一晩ぐっすり眠ったからといってすぐに回復の効果が表れるわけではない! ・慢性的な睡眠不足の人ほどぐっすり眠る傾向があるが、レム睡眠が少なければ感情や記憶など認知機能は回復していない可能性があるため、Deep Sleepが多ければ良いとは言い切れない!

この辺りは絶対に押さえておきたいポイントかと思います。 また研究者はこのようにコメントしていまして、

大脳皮質は、睡眠不足の急性期の影響を相殺するための代償ネットワークを構築する能力を持っているが、睡眠負債が過剰に蓄積されたり、脳領域がより多くの影響を受けたりすると、これらの代償は失敗し睡眠不足を補いきれなくなる。

と仰っていまして、睡眠不足初期の頃は一週間程度は無理しても何とかリカバリー機能が働いていましたが、 単純に睡眠不足が続くとこの機能が壊れてしまうということですな。 過去の研究では 「4時間の睡眠制限を5日行っても、一晩がっつり眠れば回復するよ!」 なんて研究もあったそうですが、これはもともとのベースラインが9時間睡眠しているグループが回復日に9時間睡眠を行った結果なんで、あまりあてにならない感じはありますね(笑)

7. どんな使い方ができる?

ということで、慢性的な睡眠不足を抱えている(私のような)方は、12日間は頑張らないと元のレベルまで回復しないということになります。おそらくここで、「もとのレベルがそもそもわからないのじゃが!」という意見のあると思います。 私もOuraRingでスコアを測り始めた頃から8時間も睡眠をとっていませんでしたので。

ここでいう元のレベルは、”自分が23時~7時の8時間睡眠を行った場合の睡眠スコア”と判断していただければと思います。 もしいま慢性的な睡眠不足を抱えているのであれば、まずは2週間ほど睡眠改善に取り組んでみては、という感じですね。 睡眠改善についてはたくさん書籍も出ていると思うのでそちらを実行していただくか、 鈴木さんのこちらの記事から取り組んでみるのもおすすめ。私もいまはこちらを試しておりまする。 ※近日中に睡眠改善プログラムに関する記事もアップする予定です。

私も現在2週間の睡眠改善を試しているので、また後日その結果も記事にしますね、それでは。