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Neural correlates of the Dunning-Kruger effect https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7920517/
アリゾナ大学が2021年に行ったダニングクルーガー効果に関する研究です。
ダニングクルーガー効果という言葉をご存知でしょうか。 ダニング・クルーガー効果(DKE)とは、ある課題において成績の悪い人は自分の成績を過大評価し、成績の良い人は自分の成績を過小評価する傾向があるという現象のこと。 この研究はもともとユーモア判断、論理的推論、文法能力のテストにおいて、成績下位者は自分の成績パーセンタイルを過大評価し、逆に成績上位者は自分の成績パーセンタイルを過小評価する、ということを示した研究でしたが、このジャンルに限らず実際にパフォーマンスの低い人ほど自分の自信を過大評価し、パフォーマンスが高い人ほど、自信を過小評価する傾向があります。
この問題は個人の範疇に収まればかわいい問題で済みますが、実際の政治や組織などでは自信のある人や熱量の高い人が支持されがちなもので、そのような自信のある人は魅力的に見えるためそういった人についていってしまうのもまた事実。
しかし実際には、自信が低い人の方が能力が高い傾向があり、能力の低い人をリーダーにしてしまうことが多々起きているのですな。 自信が高くて能力もあるならばよいのですが、自信があるということは「私は間違えないはずだ。私のミスは私のミスではない。部下が勝手にやったことだ」などという思考をする人も中にはいらっしゃるということもあるわけです。
これまでの研究では、 ・ダニングクルーガー効果が起きるのはメタ認知能力が低いせいだ! と言われてきていたのですが、記憶に関するテストを行ってみると、 ・自分の記憶に自信がある人も成績を過大評価し、実際の成績は低かった という研究もありまして、どうやらダニングクルーガー効果を引き起こしているのは記憶の想起が関係しているのでは? ということもわかってきたのだそうな。 しかしながら、どのような認知プロセスがダニングクルーガー効果を引き起こしているのか、 ということまではわかっていなかったのだそう。
そこで本研究では、脳波を記録しながら、エピソード記憶テストに散りばめられたダニングクルーガー効果を測定するテストを行い、ダニングクルーガー効果と生理学的反応の両方を同時に調べることを目的としております。 ※ちなみにダニングクルーガー効果について生理学的反応を見たのはこの研究が初なのだそう!期待できますね!
56名の参加者を対象に記憶テストを行ってもらい、 参加者の ・脳波(記憶テスト中に脳のどの領域が活性化しているのかを調べるため) ・ダニングクルーガーテスト を行ってもらいました。
その結果何がわかったかといいますと、 ・成績が悪い人ほど、「自分の成績は上位何パーセントに位置していると思いますか?」という質問に対する回答が早く、下位何パーセントにいるか、についての質問には遅く回答した。
・自分の成績に自信がない人ほど、成績が上位何パーセントにいるか、についての質問への回答速度が遅く、 下位何パーセントにいるかについての質問に対しては早く回答した。
・自分の成績を過大評価する人ほど、記憶の親近感(過去に見たことのある人を思い出すことはできるが、その人の名前や、どこで知ったのかといった具体的な情報を思い出すことができない)に関する脳の領域が活性化していた
・自分の成績を過小評価する人ほど、具体的な記憶、詳細を思い出す際に活性化する脳領域が活性化していた
ということでまとめると、 ダニングクルーガー効果が生じるのは、記憶を用いて自分の成績を評価する際に用いている判断基準が異なっており、 ・成績を過大評価する人ほど、「なんとなく」で自分の成績を判断し、 ・成績を過小評価する人ほど、具体的な詳細や情報を思い出した上で自分の成績を評価しようとする
という結果になりました。
過大評価者は過小評価者よりも,親近感に基づく処理に依存し、一方で過小評価者(最も成績が良かった人)は記憶された情報の明確な詳細を頼りに判断している可能性を示している。 回想という認知プロセスが利用可能であれば、過去の経験の詳細によって保守的なパフォーマンスの自己評価を行うようになり、それによって文脈的に馴染みがあるようなことによって、自身のパフォーマンスを誤って想定してしまうリスクを回避することができる。 反応時間の行動的所見と合わせて考えると、過大評価者は「すぐに自慢したがる」のに対し、ハイパフォーマーは自分の成績を判断するのに時間がかかり、その慎重さがより良いスコアと関連していた。さらに過去の記憶を明確な文脈と詳細で思い出すことが、私たちを謙虚にさせるのに重要な役割を果たしていることを示唆しています。一方、単純な親近感に頼ることが、私たちを過大評価させている。このように、より良い評価判断を導くのは、文脈に縛られた項目の組み合わせを思い出すというゆっくりとしたプロセスなのかもしれない。
と述べておりました。 錯覚的優越感の落とし穴を避けるためには、自己認識と、実践、情報に基づいた適切なフィードバックを得ることが大切で、 その方法の一つとして、 ・直感、思い出しやすさ、親しみやすさによって素早く判断することを避けること ・他人と比較したときの錯覚的優越感を減らすために、詳細の記憶とゆっくりとした反応に頼ること を推奨する結果となりました。
私も自称ダニングクルーガー系男子なので、この研究は非常に勉強になりました。 優秀な人ほど仕事が早いと思われがちですし、受験でも早くに問題を解き終わって眠っているやつほど頭良さそうに見えますよね(笑) でも実際はそういう人ほど成績が低く、 「自分がミスしているかも」「自分の回答は間違っているかもしれないから見直そう」という謙虚さや視点がないため、 実際にはケアレスミスをしていたりする、とも言えるのではないでしょうか。その結果、成績も悪く、時間いっぱいまで見直しをする人の方が成績が良いということですなー。
つまるところ、 「俺は優秀なんだぜ!」と思いたい人は、安直に判断したり、何となくの情報で物事を判断しがちで、 本当に優秀な人は「そういった優越感とかどうでもよいので、事実ベースで淡々と確認しましょうぜ」 という思考プロセスをしているのでしょうねー。 ダニングクルーガー系人間にならないために、「具体的な詳細や記憶」を頼るような思考を心がけたいところ。それではー。
0. 論文タイトル・URL
Neural correlates of the Dunning-Kruger effect https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7920517/
1. その論文の目的・どこのリサーチか
アリゾナ大学が2021年に行ったダニングクルーガー効果に関する研究です。
2. (先行研究とこれまでの問題)
ダニングクルーガー効果という言葉をご存知でしょうか。 ダニング・クルーガー効果(DKE)とは、ある課題において成績の悪い人は自分の成績を過大評価し、成績の良い人は自分の成績を過小評価する傾向があるという現象のこと。 この研究はもともとユーモア判断、論理的推論、文法能力のテストにおいて、成績下位者は自分の成績パーセンタイルを過大評価し、逆に成績上位者は自分の成績パーセンタイルを過小評価する、ということを示した研究でしたが、このジャンルに限らず実際にパフォーマンスの低い人ほど自分の自信を過大評価し、パフォーマンスが高い人ほど、自信を過小評価する傾向があります。
この問題は個人の範疇に収まればかわいい問題で済みますが、実際の政治や組織などでは自信のある人や熱量の高い人が支持されがちなもので、そのような自信のある人は魅力的に見えるためそういった人についていってしまうのもまた事実。
しかし実際には、自信が低い人の方が能力が高い傾向があり、能力の低い人をリーダーにしてしまうことが多々起きているのですな。 自信が高くて能力もあるならばよいのですが、自信があるということは「私は間違えないはずだ。私のミスは私のミスではない。部下が勝手にやったことだ」などという思考をする人も中にはいらっしゃるということもあるわけです。
これまでの研究では、 ・ダニングクルーガー効果が起きるのはメタ認知能力が低いせいだ! と言われてきていたのですが、記憶に関するテストを行ってみると、 ・自分の記憶に自信がある人も成績を過大評価し、実際の成績は低かった という研究もありまして、どうやらダニングクルーガー効果を引き起こしているのは記憶の想起が関係しているのでは? ということもわかってきたのだそうな。 しかしながら、どのような認知プロセスがダニングクルーガー効果を引き起こしているのか、 ということまではわかっていなかったのだそう。
3. その論文の目的(具体的に)
そこで本研究では、脳波を記録しながら、エピソード記憶テストに散りばめられたダニングクルーガー効果を測定するテストを行い、ダニングクルーガー効果と生理学的反応の両方を同時に調べることを目的としております。 ※ちなみにダニングクルーガー効果について生理学的反応を見たのはこの研究が初なのだそう!期待できますね!
4. 方法
56名の参加者を対象に記憶テストを行ってもらい、 参加者の ・脳波(記憶テスト中に脳のどの領域が活性化しているのかを調べるため) ・ダニングクルーガーテスト を行ってもらいました。
5. 結果
その結果何がわかったかといいますと、 ・成績が悪い人ほど、「自分の成績は上位何パーセントに位置していると思いますか?」という質問に対する回答が早く、下位何パーセントにいるか、についての質問には遅く回答した。
・自分の成績に自信がない人ほど、成績が上位何パーセントにいるか、についての質問への回答速度が遅く、 下位何パーセントにいるかについての質問に対しては早く回答した。
・自分の成績を過大評価する人ほど、記憶の親近感(過去に見たことのある人を思い出すことはできるが、その人の名前や、どこで知ったのかといった具体的な情報を思い出すことができない)に関する脳の領域が活性化していた
・自分の成績を過小評価する人ほど、具体的な記憶、詳細を思い出す際に活性化する脳領域が活性化していた
6. 結論・まとめ
ということでまとめると、 ダニングクルーガー効果が生じるのは、記憶を用いて自分の成績を評価する際に用いている判断基準が異なっており、 ・成績を過大評価する人ほど、「なんとなく」で自分の成績を判断し、 ・成績を過小評価する人ほど、具体的な詳細や情報を思い出した上で自分の成績を評価しようとする
という結果になりました。
と述べておりました。 錯覚的優越感の落とし穴を避けるためには、自己認識と、実践、情報に基づいた適切なフィードバックを得ることが大切で、 その方法の一つとして、 ・直感、思い出しやすさ、親しみやすさによって素早く判断することを避けること ・他人と比較したときの錯覚的優越感を減らすために、詳細の記憶とゆっくりとした反応に頼ること を推奨する結果となりました。
7. どんな使い方ができる?
私も自称ダニングクルーガー系男子なので、この研究は非常に勉強になりました。 優秀な人ほど仕事が早いと思われがちですし、受験でも早くに問題を解き終わって眠っているやつほど頭良さそうに見えますよね(笑) でも実際はそういう人ほど成績が低く、 「自分がミスしているかも」「自分の回答は間違っているかもしれないから見直そう」という謙虚さや視点がないため、 実際にはケアレスミスをしていたりする、とも言えるのではないでしょうか。その結果、成績も悪く、時間いっぱいまで見直しをする人の方が成績が良いということですなー。
つまるところ、 「俺は優秀なんだぜ!」と思いたい人は、安直に判断したり、何となくの情報で物事を判断しがちで、 本当に優秀な人は「そういった優越感とかどうでもよいので、事実ベースで淡々と確認しましょうぜ」 という思考プロセスをしているのでしょうねー。 ダニングクルーガー系人間にならないために、「具体的な詳細や記憶」を頼るような思考を心がけたいところ。それではー。