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Consumption of Fermented Milk Product With Probiotic Modulates Brain Activity https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3839572/
2013年にUCLAが腸内細菌(プロバイオティクス)が脳の活動に与える影響をRCTを用いて調べた研究になります。
今回から腸内細菌やプロバイオティクスなど、腸の健康に関する記事も紹介していきます。 では初回、行ってみましょう~。
◆腸内細菌とは何か 皆さまは腸内細菌やプロバイオティクスという言葉をご存知でしょうか。 「単語はきいたことあるけど、詳しくはわからない」という方が多いかと思います。 腸内細菌は文字通り腸内に宿っている細菌のことで、 ・体に良い細菌(善玉菌) ・悪い細菌(悪玉菌) ・どちらか優勢な方に加勢する菌(日和見菌) などがいます。
私たちの腸内には多種多様な細菌が生息しており、その数なんと1000種類、100兆個、腸の大きさはバスケコート一面分ほどの広さがあります。 腸内細菌は特に小腸から大腸にかけて生息しており、これらの様々な細菌がバランスをとりながら腸内環境を良い状態に保ってくれているんだそうな。 顕微鏡で腸の中を覗くと、まるで植物が群生している「お花畑( flora)」のようにみえることから、『腸内フローラ』と呼ばれるようになりました。
そして「腸内フローラ(腸内環境)のバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」のことをプロバイオティクスといいます。これが近年注目されているものですね。プロバイオティクスのサプリなどもありまして、食事から摂取することもできますし、サプリから摂取して腸内環境を整えることもできるわけですな。
◆腸内環境を整えると何がいいのか? 「腸内環境を整えるって言っても、お腹痛くならないとか、おならが臭くないとか、そういう感じでしょ?」 もちろん腸内環境を整えることでこのようなメリットはありますが、 他にも ・便秘や下痢になりにくくする ・肌荒れやアレルギーを防ぐ ・免疫機能の調整(向上) ・慢性的な身体の不調を改善 ・発がん性物質を防ぐ など、様々なメリットがあります。腸内環境が悪いと感染症にもかかりやすくなるというのは意外かもしれません。
「とりあえずヨーグルトにはビフィズス菌とかガセリ菌とか含まれてそうだから、ヨーグルト食べとけばいい感じ?」 確かにヨーグルトには乳酸菌やビフィズス菌など含まれているのでおすすめではあります(私も毎日食べていますし。) 他にも発酵食品がおすすめで、酵母菌、麹菌などの善玉菌が含まれておりまして、継続的に食べるとより効果的だとされています。味噌や納豆、チーズもよいですね。
他にもおすすめの食べ物はありますが、それはまた次回ご紹介していきます。
ここまで前提知識を紹介してきましたが、ではこの研究では何をしているのかというと 「腸内環境が脳、つまり感情に与える影響について」調べております。
というのも、先行研究によれば、 腸内細菌の変化によって痛み、情動変化、脳の性質などが変化しマウスの不安行動が減った! ということが明らかになっておりまして、腸内細菌が変化することで、 ・不安感が減少 ・扁桃体(感情コントロールを司る領域)の活動の変化 といった情動調節機能に影響を与えるのではないか、ということが言われてきましたが、ヒトにおけるランダム化比較での研究は行われてきていなかったのだそう。
そこで本研究では、 ・情動的注意課題に対する反応と脳回路は、腸から脳へのシグナル伝達によって影響を受けるのか ・プロバイオティクスの長期的な摂取によって腸内細菌叢(そう)が変化し、情動刺激に対して脳がどのように反応するのか を調べてくれました。
36名の女性を対象に次のグループに分けました。 ・1日2回、プロバイオティクスの発酵乳製品を4週間にわたって接種するグループ ・プロバイオティクスを含まない発酵乳製品を4週間にわたって接種するグループ ・ヨーグルトなどの乳製品も摂取しないグループ
実験の開始前には ・健康状態 ・不安レベル ・気分 ・便通状況 などの質問を行い、参加者の ・糞便のサンプル ・エストロゲンやプロゲステロンのデータ を収集。また、参加者には Emotional faces attention task:fMRIで参加者の脳をスキャンしながら、参加者には他者の表情(怒り、悲しみ、恐怖など)から情動を読み取る課題 を行ってもらいました。
その結果何がわかったかといいますと、 ・プロバイオティクスを含まない乳製品を接種した参加者・無介入の参加者に比べて、4週間プロバイオティクスを接種した参加者は脳領域間の結合度合いが低下した。 →つまり情動を司る脳のネットワークの反応が低下した
・無介入群では課題の遂行と同時に情動領域が活性化した(正の相関が見られた)が、 プロバイオティクスを接種したグループは情動領域の活性と負の相関が見られた。
・糞便性細菌を調べたところ、摂取したプロバイオティクス以外の変化は見られなかった →つまり腸内細菌叢自体が変化したわけではない
ざっくりまとめますと、 ・ネガティブな文脈に対する情動反応を抑える反応が見られた
・プロバイオティクスに刺激を受けて生成された代謝物質の一部が、血流、迷走神経を介して脳に伝わり、 情動反応を変化させたっぽい
研究者のコメントによると、
本研究は、ヒトにおいてFMPPの摂取が腸と脳のコミュニケーションに影響を与えることを初めて実証しました。腸内細菌叢を調節することで、腸内細菌叢の異常に伴う痛みやストレス反応の異常を訴える患者の治療にも貢献できるだろう。
と述べておりました。
この研究の大きなポイントとしては、腸内細菌(プロバイオティクス)を摂取し続けるだけで、 感情的な反応に対する脳領域が変化した、という部分でして、 ヒトにもプロバイオティクスが効果があり、それが腸内環境だけでなく、不安や恐怖、悲しみ、緊張などのネガティブ感情を抑制するカギになりそうだよ! ということが画期的だという研究でした。
2013年なので少し古めではありますが、腸内環境に関する基本知識として知っておくといいかなーと思い紹介しましたー。それではー。
腸内フローラとは何か 腸内細菌学会
0. 論文タイトル・URL
Consumption of Fermented Milk Product With Probiotic Modulates Brain Activity https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3839572/
1. その論文の目的・どこのリサーチか
2013年にUCLAが腸内細菌(プロバイオティクス)が脳の活動に与える影響をRCTを用いて調べた研究になります。
2. (先行研究とこれまでの問題)
今回から腸内細菌やプロバイオティクスなど、腸の健康に関する記事も紹介していきます。 では初回、行ってみましょう~。
◆腸内細菌とは何か 皆さまは腸内細菌やプロバイオティクスという言葉をご存知でしょうか。 「単語はきいたことあるけど、詳しくはわからない」という方が多いかと思います。 腸内細菌は文字通り腸内に宿っている細菌のことで、 ・体に良い細菌(善玉菌) ・悪い細菌(悪玉菌) ・どちらか優勢な方に加勢する菌(日和見菌) などがいます。
私たちの腸内には多種多様な細菌が生息しており、その数なんと1000種類、100兆個、腸の大きさはバスケコート一面分ほどの広さがあります。 腸内細菌は特に小腸から大腸にかけて生息しており、これらの様々な細菌がバランスをとりながら腸内環境を良い状態に保ってくれているんだそうな。 顕微鏡で腸の中を覗くと、まるで植物が群生している「お花畑( flora)」のようにみえることから、『腸内フローラ』と呼ばれるようになりました。
そして「腸内フローラ(腸内環境)のバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」のことをプロバイオティクスといいます。これが近年注目されているものですね。プロバイオティクスのサプリなどもありまして、食事から摂取することもできますし、サプリから摂取して腸内環境を整えることもできるわけですな。
◆腸内環境を整えると何がいいのか? 「腸内環境を整えるって言っても、お腹痛くならないとか、おならが臭くないとか、そういう感じでしょ?」 もちろん腸内環境を整えることでこのようなメリットはありますが、 他にも ・便秘や下痢になりにくくする ・肌荒れやアレルギーを防ぐ ・免疫機能の調整(向上) ・慢性的な身体の不調を改善 ・発がん性物質を防ぐ など、様々なメリットがあります。腸内環境が悪いと感染症にもかかりやすくなるというのは意外かもしれません。
「とりあえずヨーグルトにはビフィズス菌とかガセリ菌とか含まれてそうだから、ヨーグルト食べとけばいい感じ?」 確かにヨーグルトには乳酸菌やビフィズス菌など含まれているのでおすすめではあります(私も毎日食べていますし。) 他にも発酵食品がおすすめで、酵母菌、麹菌などの善玉菌が含まれておりまして、継続的に食べるとより効果的だとされています。味噌や納豆、チーズもよいですね。
他にもおすすめの食べ物はありますが、それはまた次回ご紹介していきます。
3. その論文の目的(具体的に)
ここまで前提知識を紹介してきましたが、ではこの研究では何をしているのかというと 「腸内環境が脳、つまり感情に与える影響について」調べております。
というのも、先行研究によれば、 腸内細菌の変化によって痛み、情動変化、脳の性質などが変化しマウスの不安行動が減った! ということが明らかになっておりまして、腸内細菌が変化することで、 ・不安感が減少 ・扁桃体(感情コントロールを司る領域)の活動の変化 といった情動調節機能に影響を与えるのではないか、ということが言われてきましたが、ヒトにおけるランダム化比較での研究は行われてきていなかったのだそう。
そこで本研究では、 ・情動的注意課題に対する反応と脳回路は、腸から脳へのシグナル伝達によって影響を受けるのか ・プロバイオティクスの長期的な摂取によって腸内細菌叢(そう)が変化し、情動刺激に対して脳がどのように反応するのか を調べてくれました。
4. 方法
36名の女性を対象に次のグループに分けました。 ・1日2回、プロバイオティクスの発酵乳製品を4週間にわたって接種するグループ ・プロバイオティクスを含まない発酵乳製品を4週間にわたって接種するグループ ・ヨーグルトなどの乳製品も摂取しないグループ
実験の開始前には ・健康状態 ・不安レベル ・気分 ・便通状況 などの質問を行い、参加者の ・糞便のサンプル ・エストロゲンやプロゲステロンのデータ を収集。また、参加者には Emotional faces attention task:fMRIで参加者の脳をスキャンしながら、参加者には他者の表情(怒り、悲しみ、恐怖など)から情動を読み取る課題 を行ってもらいました。
5. 結果
その結果何がわかったかといいますと、 ・プロバイオティクスを含まない乳製品を接種した参加者・無介入の参加者に比べて、4週間プロバイオティクスを接種した参加者は脳領域間の結合度合いが低下した。 →つまり情動を司る脳のネットワークの反応が低下した
・無介入群では課題の遂行と同時に情動領域が活性化した(正の相関が見られた)が、 プロバイオティクスを接種したグループは情動領域の活性と負の相関が見られた。
・糞便性細菌を調べたところ、摂取したプロバイオティクス以外の変化は見られなかった →つまり腸内細菌叢自体が変化したわけではない
6. 結論・まとめ
ざっくりまとめますと、 ・ネガティブな文脈に対する情動反応を抑える反応が見られた
・プロバイオティクスに刺激を受けて生成された代謝物質の一部が、血流、迷走神経を介して脳に伝わり、 情動反応を変化させたっぽい
研究者のコメントによると、
と述べておりました。
7. どんな使い方ができる?
この研究の大きなポイントとしては、腸内細菌(プロバイオティクス)を摂取し続けるだけで、 感情的な反応に対する脳領域が変化した、という部分でして、 ヒトにもプロバイオティクスが効果があり、それが腸内環境だけでなく、不安や恐怖、悲しみ、緊張などのネガティブ感情を抑制するカギになりそうだよ! ということが画期的だという研究でした。
2013年なので少し古めではありますが、腸内環境に関する基本知識として知っておくといいかなーと思い紹介しましたー。それではー。
8 .参考文献
腸内フローラとは何か 腸内細菌学会