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Do daily mood fluctuations activate ruminative thoughts as a mental habit? Results from an ecological momentary assessment study #145

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mentalistL commented 2 years ago

0. 論文タイトル・URL

Do daily mood fluctuations activate ruminative thoughts as a mental habit? Results from an ecological momentary assessment study https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0005796721000310

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2021年にアイスランド大学らが行った研究で気分の変化が反芻思考に与える影響を調べた調べた研究になります。

2. (先行研究とこれまでの問題)

反芻思考という言葉をご存知でしょうか。

反芻思考とは「自分の感情や苦痛の原因、意味、結果について繰り返し思い悩むネガティブな思考スタイル」のことを指す言葉で、心理学ではよく耳にする単語の1つでもあります。 反芻思考は自動的な思考なので、なかなか反芻思考に気づけないというのが厄介な点。 例えば入眠の直前は反芻思考の機会が多く、「いろいろなことをぐるぐる考えてしまって眠れない」というのは 反芻思考が原因の可能性が大きいですね。

で、最近の研究では 『反芻思考は習慣と同じだ!』ということが言われているようでして、どういうことかというと、 まず習慣というのは皆さんご存知の習慣で、 ・Aという行動(感情)の後にBという行動を繰り返し行っていると、自然とするようになる。 ・いったん形成されると、文脈手がかりは行動の自動トリガーとなり、個人の目標や動機ではなく、文脈上の手がかりによってコントロールされるようになる ・習慣は意識や意識的な意図がないことが特徴で、精神的に効率的であり、コントロールが難しい場合がある ってのが習慣の特徴ですが、反芻思考も同じような特徴を持っています。 ・ネガティブ感情と反芻思考を繰り返していると、ネガティブ感情になるだけで反芻思考が引き起こされるようになる反芻思考は習慣と同様に、意図的でなくコントロールが難しい ・うつ病の人も同じような思考を抱える傾向がある といった感じで、 「ネガティブな感情によって反芻が起きるのであれば、習慣的にネガティブ思考をしている人なら、もっとネガティブな感情を感じやすくなったり、反芻思考をしやすくなるんじゃない?」と考えたわけですな。

3. その論文の目的(具体的に)

普段からネガティブに物事をとらえている(習慣的ネガティブ思考をする)と、ネガティブな感情を感じやすくなったり、反芻思考をしやすくなるのか? ・ポジティブな感情が低下する(ネガティブまではいかない)だけでも、反芻思考をしやすくなるのか? ということを調べています。

4. 方法

アイスランド大学の97名の男女を対象に、実験室で ・The ruminative responses scale (RRS):抑うつ傾向や反芻思考の傾向を探る尺度 ・Habit Index of Negative Thinking (HINT):ネガティブ思考の習慣の傾向 ・Beck Depression Inventory (BDI-II):過去2週間のうつ傾向 に回答してもらいます。そのあと翌日以降からは ・Negative and positive affect:ネガティブ感情・ポジティブ感情の測定 ・Momentary Ruminative Self-Focus Inventory - abbreviated (MRSI-A):反芻的な自己注目を測定 にスマホに通知が来たタイミングで上の2つの尺度に回答してもらい、その時のポジティブ感情やネガティブ感情のレベル、どんな反芻思考を思考をしているかといった特徴を探る質問に回答してもらいました。

5. 結果

その結果何がわかったかといいますと、 ・瞬間的にネガティブな感情を経験するだけでも、反芻思考の増加を有意に予測していた

習慣的にネガティブ思考を行いやすい人ほど、より強い反芻思考が見られた

ポジティブな感情が低下(目標達成が阻害され続けるなど)するだけも、反芻思考のきっかけになる可能性はある

ポジティブな感情が低下したときに反芻すると比較的早く回復するのに対し、ネガティブな感情に反応して反芻すると、現在のネガティブな感情状態から抜け出せなくなる傾向があった

6. 結論・まとめ

先述したように、反芻思考自体が習慣としての特徴を持っているため、意図していなくても自動的に反芻思考をしやすい特徴を持っています。そこにネガティブ感情に反応して反芻思考のレベルを強めたということがわかりました。 つまり、 ①ネガティブな出来事を経験する(ネガティブ感情の増加)例:電車に乗り遅れる、仕事が思うように進まない、上司に怒られる、など ↓ ②反芻思考が増える ↓ ③反芻から抜け出せずに、ネガティブな感情(怒り、悲しみ、苦しさ、緊張など)が大きくなる ↓ ④反芻が増える...... みたいな感じですね。一度反芻が始まると底なし沼になってしまうということでした。

研究者のコメントとしては、

ネガティブな感情に反応して、反芻思考を予測したことから、うつ病の脆弱性は、反芻が意識や意図を伴わずに、文脈的な要因で習慣的に引き起こされ、コントロールが難しいという形で存在している。(中略) 個人の信念や態度を修正する介入は、習慣的な行動を変える可能性は低い(Webb & Sheeran, 2006)。したがって、習慣的な反芻を変えるのには効果的でない可能性があり、標準的な認知行動療法(CBT; Jones & Siegle, 2008; Schmaling, Dimidjian, Katon, & Sullivan, 2002)では効果が期待できない可能性がある。反芻が感情的な背景(ネガティブ感情やポジティブ感情)に左右されるようになったことを考えると、反芻の内容だけでなく、感情と反芻の文脈の関連性をターゲットにする必要があります。例えば、具体的思考、マインドフルネスやリラクゼーションなどに置き換えて、新たな文脈でトリガーを構築する必要がある(Watkins & Nolen-Hoeksema, 2014; Wood & Neal, 2007)。 有望な介入策としては、感情的に困難な状況に直面したときに代替的な適応反応を繰り返し訓練する認知バイアス修正(CBM(cognitive bias modification); Hertel, Holmes, & Benbow, 2014)や反芻に焦点を当てたCBT(Watkins, 2018)などが有効だろう。

と仰っておりました。

7. どんな使い方ができる?

反芻思考は比較的簡単に起きてしまう傾向でもありますし、反芻していることに気づきにくいので、止められなければどんどんネガティブな感情は膨れ上がっていきます。

対策としては定番ですが、

マインドフルネス瞑想や座禅などで、自分の思考に気づくトレーニングをする ②何となく「あーずっと同じことばかり考えてるなー」と気づいたら、一旦諦めて他のことをする ③具体的な思考で考えてみる(自分は何に悩んでいるのだろう、何が不安なのだろう、など)

こういった対策は定番ではあるのですが、効果も大きいです。「他にもっとないの?」と思われがちですが、 この3つで何とかなるケースも多いです。 ①は日常的にトレーニングする形ですが、②③に関しては反芻対策として使えるのでお試しいただければと思います。 私の場合、ずっと②で対策してたのですが、なんだかんだ考え続けてしまうことがあって、 結局③で問題を解決できた、というケースもありましたので、③は使えるかなーと個人的には思いました。

ただ、この3つで対処できないのは「根本的な問題が解決できない場合」です。 例えば、 ・自分にとってストレスをかけてくる上司 ・安心感のない環境 ・一向に進まないプロジェクト など、場合によっては変えたくても変えられないケースが多々あります。 そういった場合、どうしてもきつい場合は多少リスクを取ってでも環境を変えたり、 休息を取れる環境を確保してから、相談したり、冷静に考えてみる、といったあたりはこちらもシンプルですが有効です。

もし他に自分なりの解決策などありましたら、コメントくださいませ~、それではー。

tmk3t commented 2 years ago

ネガティブな反芻思考の増加は、環境要因が大きい、という研究ですかね!

パレオさんの『無』でいう負の感情は無意識レベルで出ちゃうから、その次に生じる「二の矢」は頑張って防ぎたいよね、という話を想起しました

対策として、メタファーで感情を捉える(感情を雲の流れ、電車から見た外の景色等に喩える)とかですかね。

mentalistL commented 2 years ago

@tmk3t そうですね、環境要因と言ってもかなり広いのですが、例えば対戦ゲームで遊んでいて負けただけでも、 「あの時にこうしておけば勝てたかもしれなかったのに、、」みたいな反芻もあると思いますが、これも広い意味では環境要因になりますので、そういった意味で環境要因というのはあっていると思います。

確かに、反芻は「二の矢」のお話でも触れていましたね! ネガティブな出来事は基本的に起きるのは避けられないので、二の矢をブロックしていくのがいいのですがこれが何とも難しいところ(笑)そういう意味では、二の矢ブロックを習慣的思考にできたら最強ですなー。

メタファーで捉える方法もありですね!コメントありがとうございます!