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The Better-Than-Average Effect in Comparative Self-Evaluation: A Comprehensive Review and Meta-Analysis #149

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0. 論文タイトル・URL

The Better-Than-Average Effect in Comparative Self-Evaluation: A Comprehensive Review and Meta-Analysis https://www.researchgate.net/publication/337692412_The_Better-Than-Average_Effect_in_Comparative_Self-_Evaluation_A_Comprehensive_Review_and_Meta-Analysis

1. その論文の目的・どこのリサーチか

ノースカロライナ大学らが2020年に行った平均以上効果(レイク・ウォビゴン効果)に関するメタ分析です。

2. (先行研究とこれまでの問題)

Q.「平均以上効果」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 英語ではbetter-than-average effect (BTAE)(平均以上効果)と言いまして :「自分の現在の能力、属性、または人格特性を、平均的な仲間のそれよりも好意的に評価する傾向」 と定義されています。 例えば、 ・社交性なら他の人に比べたらまだある方だ(平均以上だ) ・自分の学業成績の順位は平均以上であるはずだ(基本的に60点以上を取っているから大丈夫なはずだ) ・自分の足の速さは、同年代の人に比べれば平均的なひとよりは早いはずだ

こういった感じで自分の特性や能力は「まあ、少なくとも平均くらいはあるだろう」と思い込むバイアスのようなものです。 しかもたとえ客観的な指標やデータ(Big5で社交性を測定するなど)を示しても、その指標を信じなかったり、避けたりするものだから驚き。

このお話を聴くと「あれ?ダニングクルーガー効果もこんな感じじゃなかった?」と思う方もいるかもしれません。 ダニングクルーガー効果をおさらいしておくと 「ある課題において成績の悪い人は自分の成績を過大評価し、成績の良い人は自分の成績を過小評価する傾向があるという現象のこと」でして、確かに似ているのですが、平均以上効果が 「比較的永続的な属性、能力、または特性の次元における現在の自己の評価を比較すること」を対象としている点において異なっているようです。 ただどちらも、自分の評価を過大評価するバイアスの一種という点においては共通しているので、そこだけ覚えておいてもらえると良いかと。

Q.人は正しく自己評価ができるのか? 人が自分を平均以上だと認知しやすい傾向があるのはいいとして、では実際にはどこまで正しく評価できるのかを調べた研究によれば、 ・学力、知能、医療スキル、スポーツ能力、職業スキルなど、さまざまな領域にわたる22のメタアナリシスを定量的に統合した結果、能力の自己評価と客観的なパフォーマンス指標との平均的な関連性は中程度だった ・パーソナリティの自己評価は、パーソナリティの他者評価と同一ではないものの、中程度から強い相関があった

とのことで、自分で認識している自分の能力や性格は、他人が認知しているレベルと比べて5~7割くらいは同じ認識をしているんだぜ、って話もあったりするんだそうな。 ただこれまでの研究では「その自己評価がポジティブなものか、ネガティブなものか」までは区別していないみたい。つまり、 自分は神経症傾向が高い(メンタルが弱い)と思っている場合、他人も「彼はメンタルが弱い」と思っていることはだいたいあっているのですが、その判断を当人はネガティブにとらえているかもしれませんが、他者はネガティブにとらえていない可能性もあるわけですね。

3. その論文の目的(具体的に)

そこで本研究では、これまでの平均以上効果に関する研究をメタ分析しまして、 ・平均以上効果はポジティブ、またはネガティブなものに対してあらわれるのか ・どんなカテゴリー(スキル・学業・性格特性・運動能力など)において平均以上効果はあらわれるのか などを分析しました。

4. 方法

平均以上効果に関する957件の研究から最終的に124件の研究、95万人以上のデータを抽出しメタ分析を行いました。

5. 結果

結果を見ていきますとこんな感じ。 ・平均以上効果は、自尊心と生活満足度と中程度の相関があった

平均以上効果は能力よりも、性格においてあらわれやすかった

平均以上効果は、否定的な評価よりも、肯定的な評価においてあらわれやすかった(平均以下に判断するのではなく、文字通り平均以上と考えやすいということ)

6. 結論・まとめ

やっぱりなーという感じでもありましたが、とりわけ性格においては平均以上に考えやすいというのはなるほどなーと思いました。もし人があらゆることに平均以上だと認識できていれば幸福度は高いはずですし、自尊心も高まりそうですが、 どうも防衛的な反応があるような気がしますねー。自分を平均以上だと思っていることで、自分自身が安心できるといった心理が大きいのではないかと。 個人的に平均以上効果のおもしろいと思っているところは、 「自分は平均以上だ!」と思っているのに、自己批判をやめられないということです。 例えば、「自分は平均的な人よりもメンタルが強い!」と思っていても、反芻思考や自己批判をします。 「自分は足が速い方だ!」と思っていても、同年代との競争で負けたら、仮に一緒に走った人たちがたまたま早い仲間であっただけだったとしても「自分は周りよりも足が遅い」と認識するようになるわけです。

こういった要素から考えると、 ・カテゴリーの範囲は狭く、自分が所属しているコミュニティ・認識できる範囲に限られている ・平均以上だと思うことで自分を守っている ということなのではないかと思いましたね。

研究者のコメントとしては

ヒトがなぜ偏った自己観を持つように進化したのかについては、今後の研究が必要であるが、一つの可能性として、自己をよく思おうとする(自己強化)は未知の領域や対人関係の初期段階ではメリットがあるが、コミュニティや組織などの後期の関係段階においてはコストになる

と述べておりまして、つまり、初期の人間関係においては 「自分はメンタルも強いし、社交性もあるし、運動もできるぜ!」と思い、それをアピールできれば周りからも好感が得られてコミュニティ内での評価も上がり、生存に有利になります。 しかし、これを長々とやり続けると「実際にはそこまでメンタルも強くないし、社交性は意外とないし、運動も平均以下だった」みたいなことがバレたりしてしまうことで、平均以上効果が牙を向くわけですなー。

7. どんな使い方ができる?

ということで、バイアスのせいで自己評価が正しくできないのが仕方がないにせよ、中程度くらいには認識できそうなわけなので、平均以上効果を日常生活でどう応用するかという話で言えば ・自分の性格やら能力・得意なことは偽らずに表現する →過大評価していないか不安な場合は、気の合う友人に聴いてみる ・性格や能力において、「自分は本当に平均以上なのか?」と自分に問う。測定できること(性格なら性格分析・能力ならテスト・試験など)を実際に受けてみて客観的な指標を獲得する

あたりが良いのではないかと思いました。とはいえ、そのテストが正しく評価できる品物ではないこともたくさんあるので、何で測定するかも大事になってきますが、、、(笑)

mentalistL commented 2 years ago

https://yuchrszk.blogspot.com/2018/09/blog-post_57.html