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Forgiveness and Collective Guilt Assignment to Historical Perpetrator Groups Depend on Level of Social Category Inclusiveness #150

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0. 論文タイトル・URL

Forgiveness and Collective Guilt Assignment to Historical Perpetrator Groups Depend on Level of Social Category Inclusiveness https://www.researchgate.net/publication/7895378_Forgiveness_and_Collective_Guilt_Assignment_to_Historical_Perpetrator_Groups_Depend_on_Level_of_Social_Category_Inclusiveness

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2005年にカールトン大学とカンザス大学が行った「カテゴリー化と許し」に関する研究です。

2. (先行研究とこれまでの問題)

先日Twitterを見ていると、「他人と比較することをやめたら自己肯定感が上がっていいよ!」という趣旨の投稿を見かけたのですが、比較をやめようと思ってやめられるなら苦労はしないし、その方法が知りたいんだよなーと思いまして調べた次第になります。

心理学では他人と比較してしまうことを全般に社会的比較と呼んでいまして、 自己評価を正確に把握するために、各個人の内部にひとつの衝動があるという人の習慣 と定義されています。 人が他人と比較してしまったり、比較が中々やめられないのは、自分の自己評価を他人と比べることでより正確に把握できるからだ!という理論なのですな。

実際に、成功した他者と自分を比較することや、1vs1のゲームに負けると相手との物理的、心理的な距離が無意識的に離れることもわかっていまして、比較することで精神的な健康に良くないとわかっていても、比較してしまうことで苦しんだ経験がある人もいるのではないでしょうか。

また、こういった「自分」と「他者」の対立だけでなく、人は「私たち」と「彼ら」という集団的な比較も行います。 宗教や人種、普段きている制服ですら、どのグループ、集団、組織、団体に所属しているかを示すサインになり、こうした境界線をもつことで、人は所属の安心感や受容感を感じられるといいます。ただ、これがいきすぎると選民思想や他のグループ間との対立にもなってしまうこともあります。 例えば、ドイツ人がユダヤ人を大量虐殺したホロコーストはその最たる例でもありますね。

先行研究によれば、祖先の人の行いと現在に生きている人の行いが直接的には関係のないことだったとしても、人の認知はその世代を超えるように働き、悪事を働いた祖先と、その祖先の子孫(や関係者)は共通のカテゴリー・メンバーシップとして捉えられる傾向があることがわかってます。 これは人間の本能として仕方がないことで、彼らは「自分たちにとって危険な人種」と認識しておけば生存率は高まりますし、次の世代になっても、彼らは「自分たちにとって危険な人種」と伝えていくことで、その集団の生存率が高まるわけです。 (仮に、自分たちにとって危険な人種が更生して、グローバルで多様性あふれる社会になったとしても、一度根付いた認識を変えるのは難しいものでもあります。)

3. その論文の目的(具体的に)

そこで本研究では、ユダヤ人の大学生を対象にホロコーストという歴史的事実を踏まえて、現代のドイツ人に対して許そうとする意志について尋ねる研究を行いました。

4. 方法

47名のユダヤ人の大学生を2つのグループに分けて、 ・社会的アイデンティティ条件:ホロコーストは、ドイツ人がユダヤ人に対して攻撃的な行動をとった出来事である ・人間的アイデンティティ条件:ホロコーストは、人間が他の人間に対して攻撃的な行動をとった出来事である と説明した上で、ホロコーストについて現代のドイツ人を許すかどうかを評価してもらいました。

5. 結果

その結果何がわかったかといいますと、 ・社会的アイデンティティ条件に比べて、ホロコーストは人間が他の人間に対して攻撃的な行動をとった出来事であると説明された人間的アイデンティティ条件の参加者は、現代のドイツ人に対して許そうとする傾向があり、ドイツ人を自分たちと同じ人間であると回答する傾向が高かった

逆に社会的アイデンティティ条件の参加者は、ドイツ人を許す気持ちが低くなり、現代のドイツ人に罪悪感を経験させたいと思う傾向が強かった

6. 結論・まとめ

ということでこの研究のポイントをまとめると、 ・上位のカテゴリーで分類するように認識すると、社会的距離が縮まる

・相違点ではなく、共通点を見つけると「自分たちと同じなんだ」と思えるようになる

という訳ですね。 確かに、人には内集団バイアスというものがあるため、自分の所属している集団のことを良く見ようとする性質があります。相手のグループをより大きな括りで捉えて、自分と近い集団、もしくは同じ集団なんだなーと認知することで、 内集団の枠組みが広がり許せるようになった、見方が変わった、という変化が起きたのではないか、ということみたい。

7. どんな使い方ができる?

この研究は集団という枠組みでしたが、 ・上位のカテゴリーで分類するように認識すると、社会的距離が縮まる

・相違点ではなく、共通点を見つけると「自分たちと同じなんだ」と思えるようになる この点については個人間でも同じことが言えるでしょう。 冒頭でお話した、「他人と比較しない」の方法として、 ・違いではなく共通点を見つけるようにする

・「あの人は自分と違って~ができるし、すごいな。自分は全然だめだ」と自己批判していることに気づいたら、 「同じ人間なのだから、得意なことも苦手なこともあるよな。同じ人間なんだし」という風に、大きな枠組みで見るようにする

ということができるのではないかと。 もし他にも「比較しないためにできること」がありましたら、ぜひコメント欄やTwitterにコメントくださいましー