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Not All Telework is Valuable(Journal of Work and Organizational Psychology2021) #152

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0. 論文タイトル・URL

Not All Telework is Valuable https://pdfs.semanticscholar.org/f65f/d054eeba0900b806b60fc1076eb4be1f3394.pdf

1. その論文の目的・どこのリサーチか

ミラノ・ビコッカ大学が2021年に行ったテレワークの有効性に関する研究です。

2. (先行研究とこれまでの問題)

世界中でテレワークがどんどん実施されるようになって1年ほど経って、 テレワークっていいの?生産性やストレス、幸福度上がるの?といった研究は進んできました。

今のところわかっていることとしては スタンフォード大学のRCTでは、 ・仕事の達成度が13%上昇 ・離職率が50%低下 ・仕事の満足度が上昇 サウスフロリダ大学らの研究では、上記のメリットに加え、注意事項として ・新しいプロジェクトの立ち上げには対面が必須 ・顧客との面談や対面のミーティングが必要な仕事では、在宅ワークは週1ぐらいのペースに落とした方がよい ・オフィスのほうが集中できる人もいる ・どうしても同僚との共有事項・共有知識が減るのでそのサポートは必須 ・在宅ワークをしてても、マネージャーが管理し始めると失敗するので自律性は大事 なのだそう。こちら『パレオな男』にても紹介されております。

通勤時間や通勤のストレスも減って、テレワークいいよね!」という風潮もある中、その一方で ・テレワークによる身体的、精神的、そして一般的な健康やウェルビーイングに対する効果を示す強固なエビデンスは見つかっていない ・テレワークが組織パフォーマンス関連の指標(組織および個人のパフォーマンス、従業員のコミットメント、所属感など)にプラスの効果を与えるという証拠はまだ見つかっていない ・テレワークによって孤独感やうつ患者が増える といったネガティブな結果も見られていまして、一概にテレワークいいよ!とは言えない感じでもあるのですね。 特に組織への所属感やコミットメント意識みたいなところは、今まで対面で働いていた人は良いものの、新卒や中途で入ったメンバーがいきなりテレワークから始まってしまうと、 「あれ、本当に自分この組織の一員なんだっけ?」 「全然接点ないから、この会社じゃなくてもよかったのかなあ」なんて感じることもあるかもしれません。

そもそもこれまでの研究ではテレワークと、従来の出勤型を比べた研究は多いものの、 テレワークの質を考慮してこなかったそうで、質が良いテレワークや質の悪いテレワークによっても そのメリットって変わるのでは?ということですな。ここでのテレワークの質というのは、

1)アジャイルワークプレイス:多種多様なワークステーション環境(非公式な会議室、コラボレーションスペース、共有デスクスペース、休憩室、リラックスエリア)が利用可能か

2)フレキシブル・ワーカー:仕事のスケジュールを管理し、どこで働くかを決めるための十分な自律性と柔軟性を持っているか

3)バーチャル・リーダーシップ:「目標による管理」アプローチに厳密に関連した管理手法に関するもので、在宅勤務者の目標は明確に設定されなければならず、リーダーは従業員にインセンティブを与えたり支配したりするのではなく、従業員を信頼し、関与させ、権限を与えているか

こういった指標を基にテレワークの質を評価しています。

3. その論文の目的(具体的に)

そこで本研究では、質の高いテレワーク(HqT)と、質の低いテレワーク(LqT)、そしてテレワークを行わない(NoT)を比較し、テレワークが従業員のワークエンゲージメントとワークファミリーバランスに与える影響を評価することを目的としています。

4. 方法

イタリアの3つの企業から合計260名のデータを集め従業員の仕事のコントロール感、関係の質、従業員同士の支援行動、勤務時間以外の仕事量、ワークエンゲージメント、仕事と家庭のバランスなどを測定。 また組織のテレワークの質も測定しました。

5. 結果

その結果何がわかったかといいますと、 ・質の高いテレワークを実施していた組織は、質の低いテレワーク、もしくはテレワークを実施していない組織と比べて、 仕事のコントロール感、上司からのサポート、同僚のサポート、ワークエンゲージメント、仕事の過程のバランスについて、平均的に有意に高く認識していた

しかし、質の高いテレワークを実施していた人は、従来型の働き方(テレワークを実施していない組織)と比べて、関係の質が高いとは感じておらず、しかも質の低いテレワークを実施している組織と比べても低かった

質の高いテレワークを実施している組織では、勤務時間以外の仕事が多いとは感じていなかった

6. 結論・まとめ

といった感じで、基本的にはテレワークを行うことで従来の働き方よりもメリットは多いものの、オフライン・対面で一緒にお仕事する方が関係の質に関しては高くなりやすいみたい。

従業員が長時間、職場の外にいる場合、デバイスを媒介とした仲間とのやりとりは表面的な関係になりやすく、テレワークによって帰属意識はほとんど生まれない。テレワークの質の高さは、労働者のジョブコントロールと仕事と家庭のバランスに最も高い影響を与え、職場の人間関係の質には最も低い影響を与えることがわかった。全体として、今回の調査結果は、従業員のウェルビーイングの観点からテレワークが有効であることを示す証拠となった

と研究者はコメントしておりました。

7. どんな使い方ができる?

テレワークを実施する場合、推奨されていることとしては

・週1~2回くらいは勤務、それ以外はリモートといったハイブリッド型がベター ・完全にテレワーク、フルリモートにする場合は、オフラインやオンラインで、従業員がコミットメントできるようなイベントや企画などが必要 ・(研究では述べられていませんが)新規のメンバーがリモートで関わり始める場合、関係の質が深まりにくいため、コミットメント意識の低下のリスクが大きいので、可能な範囲でオフラインで交流したり、オンラインでも定期的に交流するなどの関係の質を深めるための工夫が必要

なのではないでしょうか。テレワークを実施している方や検討されている方に参考になれば幸いです~それでは。