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Habits—A Repeat Performance #153

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0. 論文タイトル・URL

Habits—A Repeat Performance https://www.lescahiersdelinnovation.com/wp-content/uploads/2015/05/habits-Neal.Wood_.Quinn_.2006.pdf

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2006年にデューク大学のDavid T. Neal博士が習慣的行動の特徴についてまとめた研究になります。

2. (先行研究とこれまでの問題)

これまでこのGithubでは、習慣についてあまりまとめてこなかったので改めて整理しようと思います。

習慣と言えばIf then Planning というのは有名なところ。If then に関しては以前にも扱ったことがありました。 簡単に説明すると、If then planning とは目標達成や習慣化のテクニックで、 If (もし~したら)then(~する)というIf then の構文に当てはめて行う習慣化のテクニックであり、 その効果も高く習慣化と言えばIf then planning に当てはめて考えれば大丈夫、と言えるほど最強の習慣化テクニックと言われております。

If then Plansは有名ではあるものの、テクニックとしての側面が強く、 ・習慣ってそもそもなに? ・どういうプロセスで起きるの? みたいな話はどうしても省略されやすく、習慣=If then Plannig で解決でOK! となりやすいな気がしていまして、これだと理解が深まらないなーと感じておりました(個人的に。)

そこで本研究では、 ・習慣はなぜやめられないのか ・習慣的反応を辞めるための基本的な原則は何か みたいなお話をしてくれておりますので、習慣の原理を根本から理解したい!という方にはおすすめできるかと

5. 結果

◆習慣とは何か 習慣の定義としては、パフォーマンスコンテキストの側面(環境、先行する行動)によって、手掛かりとなる自動化された反応傾向のこと を指しまして、簡単にいうと、ある刺激(環境や外的要因)によって自分がいつも取っている行動や反応を取りやすくなるというもの。 例えば、学生や社会人を対象とした経験サンプリング型の日記研究では、約45%の日常行動が、ほぼ毎日、同じ場所で繰り返される傾向が見られました(Quinn & Wood, 2005; Wood, Quinn, & Kashy, 2002)。これらの研究では、新聞を読む、運動する、ファーストフードを食べるなど、すべての見解に共通しているのは、多くの行動連鎖(例えば、朝、コーヒーを淹れるルーチン)は、似たような文脈で繰り返し実行されるということでした。

つまり、先行刺激→行動・反応が習慣の土台になっていて、 この先行刺激→行動・反応繰り返し行うことによって、 先行刺激(文脈・コンテクスト)によって、行動・反応が自動的に引き起こされるというメカニズムになります。 具体例を見ていくと、

行動予測 ・Ji Song and Wood(2006)の研究では、大学生が1週間の間にファストフードを購入したり、テレビニュースを見たりする頻度を、行動意図と習慣から予測した結果、 習慣の強さが弱い、もしくは中程度の場合は、「自分の意図・考え」に従って購入したり、ニュースを見たが、 習慣の強さが強い(つまり、習慣的にファストフードを購入している学生)においては、行動意図(お腹が空いているとか、何か食べたいものがあるなど)とは関係なくファストフードを購入し、過去の行動を繰り返した

この結果からわかることは、 ・相手の行動を予測する際の最も精度の高い方法は「いつもやっている文脈(状況)であるか」であって、「意図・考え(お腹が空いているとか)」の精度が落ちるということ。逆に習慣が形成されていない時には意図の精度が上がる。 ・そして、習慣的行動には本人の意図とは関係なく、文脈(状況・環境・コンテクスト)によって習慣的反応が促されるということ →このことから、辞めたい悪習慣があってもやめられない理由がよくわかりますね。

行動変容 Wood, Tam, and Guerrero Witt (2005) が,大学生の習慣行動である「運動」「新聞を読む」「テレビを見る」が,大学に入学・転入したことでどのように変化するかを調べた結果、 学生が文脈(環境・状況)が安定していると認識している場合には、意図とは関係なく習慣的行動を続けたが、 状況が変わったと認識した場合には意図した場合にのみ行動を続けた(つまり、意識的にやろうとしない限りは、環境が変わったことによって習慣が止まった) →これはすごく実感するところがありまして、北海道やアイルランドでは毎日起床してから、散歩や運動していたのですが、東京で5日間滞在していた際には一度も散歩に出かけませんでした。旅行中だったから、というのは言い訳ですが環境が変わった瞬間に習慣が止まるというのはとてもわかりやすいかと。

◆自己調整(自己規制・自己コントロール) Vohs, Baumeister, and Ciarocco (2005) は,自制心が低下したときに習慣的な行動を抑制することの難しさを実験的に示した。(Neal & Wood, 2006)では,4日間のうち2日間は,日常生活で利き手ではない方の手を使わせることで,自己制御のリソースを枯渇させた。リソースが枯渇した状態では、参加者は習慣的な行動はうまく続けられたが、習慣的でない行動を行わなくなった。また、ジムに通うなどの有益な習慣行動を維持するだけでなく、午後にドーナツ屋さんに行くなどの悪い習慣も維持していた。

つまり、脳のリソースが制限されている時(仕事で疲れている時や、寝不足のときなど)は、望ましい習慣も続けることができるが、望ましくない習慣を抑制することもできなくなる諸刃の剣である。

6. 結論・まとめ

まとめると、 ・習慣的行動には本人の意図とは関係なく、文脈(状況・環境・コンテクスト)によって習慣的反応が促される

文脈が変わった場合、意識しない限り、習慣は止まる

脳のリソースが制限されている時(仕事で疲れている時や、寝不足のときなど)は、望ましい習慣も続けることができるが、望ましくない習慣を抑制することもできなくなる

といった感じ。研究者のコメントがおもしろかったので紹介すると、

人々は、食生活や運動量などの日常的な生活習慣を変えようとしても、しばしば失敗する。 このような失敗は、時間帯や場所などの手がかりが、過去の反応を繰り返すきっかけとなるためである。 習慣を変えられないのは、必ずしも意志の弱さや健康問題への理解不足ではなく、状況が過去の反応を引き起こす力を持っているからなのだ。習慣とは、いつもと違うことをしようと思っていても、いつも通りに行動してしまうものである

いやぁ、よもやよもやな結論ですなw

7. どんな使い方ができる?

また、研究者はこんなことも述べていまして、

文脈によって引き起こされる行動(習慣的な行動)は、自分の意志を感じにくいので、習慣についての情報量が減りやすいことが考えられる。また、習慣が手続き記憶に依存していることを考えると、習慣はエピソード記憶からは離れており、したがって自己概念からも離れている可能性がある。

さらっと手続き記憶に依存していると述べていたので、ここはおもしろポイントでした。 手続き記憶とは、例えば自転車に乗る時に用いられている記憶の部位のことでして、 数十年ぶりに自転車に乗っても乗り方って忘れておらず、運転することができますよね。 習慣もこれと同じ脳の部位を使っているというのですな。

つまり、自転車の乗り方が、ある種の文脈(手を置く場所・足の置き方、バランスのとり方、体の使い方)であるとすると、 習慣も同じように、ある種の文脈によって自分の体を動かしているとも考えられるわけです。 例えば、家に帰ってきたら、パソコンを起動し、起動している間に手を洗って、着替えて、パソコンが立ち上がったらパソコンでアニメを見るという習慣があれば、これは自転車を漕ぐのと同じような身体反応であると考えられるわけです。 もっというと、自転車を漕ぐ際にひとつひとつの行動を確認しませんよね?習慣はそれと同じ仕組みということなのですなぁ。