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Associations between sleep disturbances, personality, and trait emotional intelligence #169

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0. 論文タイトル・URL

Associations between sleep disturbances, personality, and trait emotional intelligence https://ir.ua.edu/bitstream/handle/123456789/2662/file_1.pdf?sequence=1

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2016年にアラバマ大学が行った研究で、性格特性、情動知能が睡眠障害の発症に及ぼす影響について調べた研究になります。

2. (先行研究とこれまでの問題)

不眠症は日本人の20%、およそ5人に1人が症状を訴えていまして、60歳以上においては3人にひとりが不眠症と言われております。 不眠症の定義としては、

睡眠開始、睡眠維持、または早朝の覚醒が困難で、睡眠に戻ることができない継続的な苦痛、それに関連する日中の障害、および睡眠に対する懸念または不満のこと

を指していまして、睡眠障害というほどでなかったとしても、質の高い睡眠を取ることが難しくなっております。 また、不眠症だけでなく、いくら眠っても疲労感がとれないことを「非回復性睡眠 (NRS)」と言いまして、 こちらは不眠症に見られるような入眠の障害、中途覚醒などがなくても発生する場合があり、睡眠の質が低い場合に見られる睡眠障害のひとつでもあります。

睡眠の質が低くなりやすい人の特徴として、以前NewsPicksさんの記事で 「完璧主義傾向や、自己批判が強い人ほど、睡眠の質が低くなりやすいよ!」という記事を書かせていただきました。 というのも、ストレスが睡眠の質を低下させる要因の1つだと考えられていますが、それを踏まえると、 自己生成ストレスが強い人も、睡眠の質が低下しやすいということでもあり、こちらは青年期の学生を対象とした先行研究でも確認されていました。

ということは、性格特性によっても睡眠の質って影響するのでは?ということが考えられるわけで、 実際に神経症傾向が高い人は、低い人に比べて、入眠に時間がかかり、眠りが浅く、睡眠の質が悪く、全体的に睡眠時間が短く、急速眼球運動(REM)密度が低いこともわかっているんだそう。

ただ、NRSと性格特性がどのように関係しているのかを示した研究はなかったみたい。 また、性格特性に近い概念として、emotional intelligence(日本ではEQ)があります。 EQは自己認識、感情の管理、自己の動機づけ、共感、人間関係の処理などの能力を含み、自分の感情状態を識別し調整する能力として説明されるもので、 EQの高さは、精神的、心身的、身体的な健康状態の向上と関連しており、感情的知性の能力よりも精神的健康と強く関連していることがわかっています。 睡眠と感情が密接に関係していることを考えると、EQの高低も睡眠の質に影響するのでは?ということですな。

3. その論文の目的(具体的に)

そこで本研究ではビッグファイブ性格特性、TEI(Trait emotional intelligence)、不眠に伴う睡眠困難、NRSの質との関連を調査することを目的としています。

4. 方法

・不眠症重症度指数(Insomnia Severity Index) ・睡眠の回復指数(Restorative Sleep Questionnaire):起床時間、完了時間、NRSの特性を評価する9項目に回答。スコアは0から100まであり、スコアが高いほど回復的な睡眠であることを示す。 ・ビッグファイブ性格特性(The Big Five Inventory)(44項目) ・感情的知性(TEI):(The Trait Emotional Intelligence Questionnaire)(30項目)

5. 結果

感情的知性は、不眠症の重症度(β=-0.33, p<.001)と非回復性睡眠(β=0.45, p<.001)の最も強固な予測因子であった。

感情的知性が高い人は、自身の気分の変化を理解する能力が高く、より回復的な睡眠をとり、不眠症の程度が低い傾向があった

神経症は不眠症の重症度(β=0.18, p<.001)と非回復性睡眠(β=-0.25, p<.001)を予測する2番目に強い性格変数であった。

誠実性が高い人は睡眠の質がより回復的であり、不眠に関する問題がより深刻でないと認識しており、自分を律して行動する傾向があるため、計画的な行動ができることから、不眠症の重症度が低く(β=-0.14, p<.01)、回復指数においても誠実性が機能している部分も大きかった(β=0.22, p<.001)

協調性と外向/内向性は、睡眠の質には特に関係がなかった

これまでの研究では「開放性」と睡眠障害との関連は研究によって報告されていないが、本研究では(β=0.08, p<.01)という結果になり、かなり小さいが不眠症やNRSに影響を与えていることが示された。 これは自身の周囲で起きる刺激・欲求のために睡眠衛生が悪く、睡眠スケジュールを乱すような刺激的な活動や自発的な活動をする可能性が高いことが考えられる

6. 結論・まとめ

この結果に対して研究者は

神経症が高い人は、自分の睡眠が非回復的であると認識し、さらに入眠、睡眠維持、または短い睡眠時間でも十分に機能できるかどうかについて過剰な心配をするため、不眠症の問題がより深刻である可能性がある。本研究の知見は臨床現場に性格特性やTEIスクリーニングを加えることで、治療成績に悪影響を及ぼす可能性のある個人差に対処することに応用できるだろう

ということでして、まず性格特性としては神経症傾向が高いと、就寝時に反芻や身体的覚醒が高まり、入眠がより困難になり、睡眠障害に陥りやすくなってしまうということ。ただし、EQによって、自分の感情の知覚や処理に対処できることや、誠実性が高い人は、自身の睡眠の課題にも積極的に取り組み、改善していけるってことみたいですね。

7. どんな使い方ができる?

これまでの睡眠に関する研究を読んできて改めて思ったことは、 普通に生活しているだけでは、睡眠の質は低下していく一方であることです。 いまの人類のハードウェア自体、はるか昔につくられたもので現代のシステムに対応するようにはアップデートされていないため、 スマートフォンやPCなど、ブルーライトを発するものを夜間に使用してしまうと、一発でその悪影響を受けます。 照明も同じです。古代の生活では、日が落ちたら灯りを照らすものは焚火くらいしかなかったもので、 電気が発明される頃になっても、夜の部屋の灯りをともすのはランタンや小さなランプだったりします。

つまり、睡眠の質について意識を向け、睡眠の質の低下につながる”生活の何か”を変えない限り、現代の一般的な生活では、睡眠の質が下がるようになってしまっている、というわけです。

そういった現状を認識したうえで、自分の眠りを妨げる要因を排除したり、睡眠の質をできるだけ悪くならないようにするために、何ができるのかを考えて行動することができれば、そこまで睡眠は悪くならないのかもしれないですね。そこに性格的な要因や、感情処理能力も関与しているんだぜーみたいなお話でした。