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Future Time Perspective: A Systematic Review and Meta-Analysis #170

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0. 論文タイトル・URL

Future Time Perspective: A Systematic Review and Meta-Analysis https://www.researchgate.net/profile/Ruth-Kanfer/publication/324712384_Future_Time_Perspective_A_Systematic_Review_and_Meta-Analysis/links/5b295dbf0f7e9b1d00362600/Future-Time-Perspective-A-Systematic-Review-and-Meta-Analysis.pdf

1. その論文の目的・どこのリサーチか

ティルバーグ大学らが2018年に行った未来時間展望に関するメタ分析になります。

2. (先行研究とこれまでの問題)

未来展望という理論をご存知でしょうか。 日本においてはまだ、この理論の理論的共通性が検証されていないため、あまり知られていないのですが、 欧米では最近よく研究されている分野になりつつあります。

これはFTP(future time perspective)と呼ばれているもので、簡単にいうと ・現在の行動に影響を与える、未来時間の視野のこと です。 例えば、 ・健康に気を使い,定期的に運動をしたり健康診断を受けたりする ・喫煙,飲酒,危険なスポーツなど,健康に害を及ぼすと考えられる行動を避ける といった行動は自分の未来を見据えて起こすものですよね。

つまり、「未来」という時間軸はそれ自体が現在に影響を与える要因になっている、という考え方です。

逆に「過去」の方がイメージしやすいでしょう。 例えば「トラウマ」は「過去」のネガティブな経験が、現在の選択に影響を与えるわかりやすい例ですね。

FTPもこれと同じで、「未来」という時間の捉え方によって、人間の選択や行動は変化すると考えられています。 そしてこのような「未来志向」の人は、結果的に長生きする傾向があることもわかっています。

最近の研究では, ・後期高齢者の死期が迫っているという主観的な知覚は,客観的な死期の近さと一致していることから、人間はかなり高い精度で自分の寿命を把握できる ・FTPは加齢と共に先が長いものから限られているというものに変化することから、 「時間が有限である」という知覚が増すと同時に「時間が無限でない」と認識するようになる。自分の余命が長いと知覚する人は,短いと知覚する人よりも,より多くの保険に加入する傾向がある ことがわかっていたりしまして、未来の時間を意識すると現在の選択に影響が出ることが、なんとなくイメージできるかと思います。

つまり、人生の時間を「無限」と知覚するか「有限」と知覚するかによる時間の捉え方が、 個人の目標設定や、人間関係の選択の際に大きな影響を及ぼすということです。

またFTPは、集中力やモチベーション、仕事のパフォーマンス、積極的な仕事行動、学業のパフォーマンス、メンタルヘルス、感情経験、身体運動、薬物使用、リスク行動など、仕事や教育環境での多くの指標にも影響を与えているとされています。

研究者はこのようにまとめておりまして、

・人が時間を「無限」と知覚したときは,情報の獲得や知識の習得など、将来見返りが期待できる知識 関連の目標を優先する。そのため、多くの人との出会いを期待し、人間関係はより広くなる

・一方で,時間を「有限」と知覚したとき、人は将来よりも「今」を重視し,今の情動的満足や価値を含ん だ情動的目標を優先する。

ということみたいですな。

FTPが高い人=時間を無限と捉えている人は、 ・時間を無限と捉えている人は予測力が高く、計画力が高い ・自分の将来について考え、現在の行動が将来の目標達成につながると信じ、その将来の目標を大切にする傾向がある ・健康行動も増える こともわかっています。

なんとなく時間を無限と捉えることって良くないように感じがちですが、未来展望の考え方としては 時間は無限だからこそ、その未来に生きる自分のためになる行動をするべきだ! ということみたいですな~。

3. その論文の目的(具体的に)

そこで本研究では、FTPに影響を与える(強めたり緩和したり)する要因の特定を目的としたメタ分析を行いました。

4. 方法

未来展望に関する過去65年分の212件のデータでメタ分析を行いました。

5. 結果

その結果何がわかったかといいますと、 ・FTPが高い人ほど学業成績が高かった(思春期の学生において)

・FTPは生活満足度と主観的健康度と正の相関があったが、幸福度とは関係が無かった

・FTPは不安とうつ病に負の相関があった

・FTPは健康関連行動と正の関連があった

・FTPは年齢において逆U字を示すことがわかった。つまり、年を重ねるほどFTPは低下していくということになる

・女性の方が男性よりも若干FTPが高い傾向にあった

・FTPは協調性、外向性、開放性、誠実性、肯定的感情、希望、楽観主義と正の相関があった

・ただし、FTPはネガティブ感情と負の相関を示したが、神経症傾向とは関係を示さなかった

・とりわけ相関が強かったものは、誠実性と金融知識が高い人ほど、FTPが高い傾向にあった

6. 結論・まとめ

ということでメタ分析の結果をざっくりまとめますと、 ・FTPは達成、幸福、健康行動、金融知識と正の関係があり、リスクテイキング行動とは負の関係があった。

・予想外だったのは、FTPが幸福と有意に関連していないことであり、FTPが高い人は将来に対してポジティブな見通しをもっているものの、将来の目標に気をとられており、今この瞬間に集中し、楽しむ能力が低いためと考えられる(Drake, Duncan, Sutherland, Abernethy, & Henry, 2008)

・特に、誠実性と希望はFTPと強い関連を示したが、FTPは性格特性以上に、達成度、幸福度、健康行動とリスク行動と関連することを示した

という感じでして、図にするとこのようになり、FTPそれ自体が媒介要因になっているのではないか、ということみたいでした。 スクリーンショット (101)

それでも誠実性はかなり大きな要因になっていそうで、誠実性が高いとFTPも高くなる傾向があり、 やはり人生の成功因子と言われるだけのことはありますなー。

もともとこの研究自体が組織心理学への応用を考えられている研究なのですが、 結論としてはこのように述べておりまして、

誠実性が高い人は、将来を見据え、将来の目標を設定し、その目標を達成するために特定の行動をとるため、仕事においてより良い成果をあげることができるかもしれない。その結果、彼らはより成功するのである。これらの知見とそれに関連するプロセスの説明は、仕事の成果や, 他の関連する仕事の成果を支える基礎的なプロセスを説明することで、組織心理学の理論を発展させるものである などとコメントしておりまして、FTPが高い人はそれ単体で見つかればよいですが、誠実性や希望(楽観主義みたいな)が高い人は より組織でも成果を出しやすいっぽいとのことでした。どうぞよしなに。