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Celebrating Everyday Success: Improving Engagement and Motivation using a System for Recording Daily Highlights #173

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0. 論文タイトル・URL

Celebrating Everyday Success: Improving Engagement and Motivation using a System for Recording Daily Highlights https://dl.acm.org/doi/10.1145/3313831.3376369

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2020年にPalo Alto Networksというサイバーセキュリティソフトを開発している企業らが行ったモチベーションに関する研究です。

2. (先行研究とこれまでの問題)

日々の業務に追われる中で、ワーカーが自身の成長を大小問わず把握する機会は少なく、モチベーションやエンゲージメントの低下、燃え尽き症候群のリスク上昇につながる可能性があります。 しかし、日々の仕事では個人の成果を把握し、認識する機会はほとんどありません。

アマービル&クレイマーの研究によれば、労働者の最良の日は、仕事が進展しているという感覚の有無によって決められることがわかっていまして、つまり、仕事が前に進んでいるという感覚があるかどうかが、仕事のモチベーションに大きく影響するということです。 逆に前に進んでいるという感覚が得られないと、モチベーションは低下していくということになります。

ここで大事なことは、前に進んでいるという”感覚を得られる”ということで、仕事においてよくあるのは、 目の前のタスクを完了し、実際には前に進んでいるのにもかかわらず、新しい課題やタスクがすぎに生まれてきますし、 職場においては達成された仕事よりも、主に残された仕事に焦点が当てられるため、一度完了した仕事は簡単に忘れ去られ、新たな仕事が無限に続くことになります

その解決策として研究者たちは、「たとえ短い時間であっても、その日のハイライトを記録し、評価する機会を提供することで、職場の幸福度に大きなプラスをもたらす」と考え「ハイライトマトメ」というツールを作成しました。

「ハイライトマトメ」はワーカーが毎日1つの仕事のハイライトを素早く記録し、ランキングすることで、自分自身の成功への気付きを得ることを促進するツールで中身としては以下のようなコンセプトになっております。 ・毎日のハイライトを記録すること自体が「作業」にならないようにすることで、長期的な利用を維持し、ユーザーに過度な負担をかけないようにする。、毎日1分以内を目標に設計。

・ハイライトの入力は自由記述であり、入力するかどうかも自由。ハイライトを記録しないことを罰則の対象とすべきではない。

・ハイライトのない勤務日もある(例:ミーティングばかりの日はハイライトがないと考えるワーカーもいる)

・熟考を促す:このツールは、作業者が自分のハイライトについて考え、評価することを促すものであるべきあり、個人使用を前提とした設計にすべきである。このツールは、他者からの印象を管理することなく、ワーカーが自由にハイライトを記録できるようにする必要がある。同僚や上司に読まれることを知ると、記録することをためらうかもしれないので、私的利用を考慮した設計にする

2日目にハイライトを記録すると、"この2つの仕事のハイライトのうちどちらがより大きなハイライトですか?"と尋ねられ、ハイライトを順位付けできるようにする。

主にこのような点をコンセプトにした振り返りツールということになります。

こうした振り返りの力は絶大でして、先行研究でも ・肯定的な感情体験について書くこと(1日2分程度の短い時間でも)は、健康状態の改善と関連している

労働者が自分の進歩を経験し、より意識するとき、彼らはより良い肯定的な感情を持ち、職場環境がサポートされていると認識し、より内発的に動機づけられ、仕事をより有意義に感じ、プライド、達成感、良い仕事をすることで自分の可能性を感じられる

ことがわかっているため、小さな短時間の振り返りでも行うことがモチベーションやエンゲージメント、さらには健康状態にまで大きく関係してくるのだそうな。

3. その論文の目的(具体的に)

そこで本研究では日米の知識労働者33名を対象とした6週間の被験者間調査で、「ハイライトマトメ」を使用し。使用者と対照条件の参加者を比較、評価を行いました。 リサーチクエスチョンとしては以下の2つでして、

参加者には ・Work Engagement and Dedication:仕事のエンゲージメントと貢献感 ユトレヒト仕事関与尺度(UWES)、特にその超短縮版(UWES-3)を用いた。 例)「朝起きると仕事に行きたくなる」のような質問12項目

・Workplace Self-efficacy:職場における自己効力感(自己効力感尺度) "仕事において、予期せぬ出来事に効率的に対処できるという自信はどの程度ありますか?"といったものに対して10段階、6項目について評価

・Workplace Affect (Positive and Negative) :職場における自分自身の感情について評価 International Positive Affect and Negative Affect Scale-Short Formを用いて評価。

・職場環境における認識と評価:Perceptions and Appraisal of Work Environment 職場環境に対する参加者の認識と評価(PAWE:Perceptions and Appraisal of Work Environment)を測定。 具体的には、自律性や能力開発の機会、同僚や上司との協力的な関係(例えば、「必要なときに、同僚にどれだけ助けやサポートを求めることができますか」)といった労働者の仕事の特徴を評価するもの。

・進歩、振り返り、仕事の意義:Progress, Reflection and Job Meaningfulness "I have a good sense of what makes my job meaningful "という文(私は自分の仕事を意義あるものにするための良い感覚/センスを持っている)について、参加者に評価を求める項目が1つ含まれています。これらの項目はすべて、1(全くない)から7(全くある)までの7段階で評価しました。

5. 結果

その結果何がわかったかといいますと、 ・ユーザーが1日にハイライトを作成し、ランク付けするのに費やした時間は中央値で32秒だった

・メッセージの作成に費やした平均時間は、11秒から146秒だった

・ハイライトマトメ条件では、ユーザーは仕事へのエンゲージメントが増加し、コントロール群の参加者は平均して変化がないか、わずかに減少していた

・自己効力感、職場環境における認識と評価、積極的な内省、進歩の感覚、仕事の意義については、条件間で有意な差は見られなかった

・Highlight Matomeを使用した米国参加者では、報告されたポジティブな感情が全体的に有意に増加した

・否定的感情にも同様の効果が見られ、米国在住のハイライトマトメユーザーのみが否定的感情を有意に減少させ、他の参加者は全体的な変化を経験しなかった。

・日本在住の参加者は、米国在住の参加者に比べ、否定的な内容の割合が多い傾向があった

・日本の参加者は同僚の名前を出すことが多い傾向があったが、米国の参加者はほとんど出さない傾向にあった

・アメリカの参加者では上司に関する言及(「上司が、進行中のプロジェクトでの私の仕事ぶりをほめてくれた」「"クライアントの怒りでCEOに叱られた "」など)があったが、日本人の参加者では上司に関する言及がほとんどなかった

・「好きなハイライトとその理由」としては、「他者との関わり」が上位のハイライトの共通点であった。例えば日本人の参加者では、"後輩と一緒に仕事をして、非常に効率よく進めることができた "であった。他の人の力を借りて、予想以上に作業効率が上がったので印象に残っている」と説明されていた

・ハイライトマトメに対するユーザーの反応 20人の参加者が、ハイライトマトメを使用した結果、自分自身や習慣、仕事について学んだと回答し、共通して挙げたテーマは、「気づきの増加」「記録をつけることの価値とリストの成長」「必要な変化への気づき」「やったこと、続けるべきことを簡単に記録し、その週の次の仕事の計画を立てることができるようになった」と報告していた。

6. 結論・まとめ

とまあこのような結果になりまして、このハイライトマトメのように1日の仕事の終わりや夕方ごろに、

その日、どんな仕事をしたか、どんな気づきがあったか、何が楽しかったか、よくできたことは何か、 など、その日のハイライトを記録するだけで、ワークエンゲージメントの向上、ポジティブな感覚の向上、仕事への貢献感の向上が見られた ・1日の振り返りは毎日やる必要もないし、1日1分程度でも効果があった ・内容としては中立的なもの(その日の仕事内容や、仕事であった出来事、人間関係の話など)でよく、ポジティブな内容である必要性もなく、ネガティブなものでも効果は見られた

という結果になりました。 アメリカと日本でも違いもいくつか見られてそれもおもしろいポイントはいくつかありましたねー。

この結果に対して研究者は

ハイライトまとめの自由形式の記述は、その日の顕著な出来事に注意を向け、ややポジティブな意味合いで記録するものであった。参加者のハイライトの大部分は中立的なトーンであったが、それでも何かしら利益や学びになる経験を記述する傾向にあった。 また、ポジティブなフォーマットや凝った内容のフォーマットを用意する必要もなく、ポジティブまたはネガティブな方向に強く押し出される必要がなくても、労働者は感情とエンゲージメントのブーストから恩恵を受けることができることを示唆している。 とコメントしていました。

なぜこのような振り返りを行うのが良いのかというと、 ・仕事中のハイライトを再評価することで、労働者は仕事の要求に応えるために必要なリソースを探し出すことができたという自己物語を再構築していることを発見した。これらの知見は、一生懸命働くことや、成功することについての物語を参加者に促すことを推奨する筆記療法に関する研究 [29]を拡張するものである。

ということだそうで、つまりハイライトを記述することで ・毎日の忙しい仕事の中で、前に進んでいる感覚を得ることができる

ハイライトを行うことで、「自分なりの仕事の価値」や「仕事で必要なこと、求められていることを認識できる」「仕事で起きたイベント、同僚とのやり取り」など、その日の仕事の場面を振り返ることで、自分なりの解釈を拡げたり、気づきを得ることができる

というのが大きなポイントなのだそう。

7. どんな使い方ができる?

フォーマットがなくてもできますし、1日1分でも十分なのでメモ機能でも十分です。まずは「その日のハイライト」を記録することから始めてみてはいかがでしょうか。

~余談~ ハイライトはやらない日があってもOKとのことでしたが、やらない日が続いてしまうと、やっていないことをプレッシャーに感じてしまうことがあり、そのことがモチベーション低下につながりかねないリスクがあるので、ハイライトがない日(ミーティングばかりの日など)は「ハイライトがない」という記述をすることで、「記入はした」という認知になるため、モチベーションの低下を防げるようです~。