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Experimental effects of mindfulness inductions on self-regulation: Systematic review and meta-analysis. #175

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0. 論文タイトル・URL

Experimental effects of mindfulness inductions on self-regulation: Systematic review and meta-analysis. https://psycnet.apa.org/record/2018-12098-001

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2019年にシェフィールド大学が行ったマインドフルネスが自己規制に与える影響についての研究です。

2. (先行研究とこれまでの問題)

心理学の世界では自己コントロールのことを自己規制、自己調節(self regulation)と言ったりします。 (漢字から意味がわかりやすいのは自己調節なので調節で統一します)

◆自己調節とは 自己調節とは、目標に向けた行動と一致するように、感情、認知、行動を調整すること(Karoly, 1993)と定義されていまして、 自己調節には、3つの要素を含むと考えられています。

①思考、感情、行動を捉えたり、モニタリングすること ②スタンダードな状態と、現実の状態との間のズレを減らすための動機付けをすること ③障壁や誘惑に遭遇しても、それを軽減する能力があること(Baumeister & Heatherton, 1996; Carver & Scheier, 2012)

自己調節の失敗は、これら3つの領域のいずれでも起こりうるものであり、自己調節を成功させるためには、すべての要素が必要だと考えられています。 中でも、自己調節を支えるものとして重要なのは、実行機能(思考や行動を制御する認知システム)と感情調節と考えられています。 実行機能は注意と感情にまつわるシステムに影響を与えて、自己コントロールできるように促しているんだそうな。 なので実行機能がやられると、自己調節もきかなくなるわけです。 例えば、ストレス、酩酊状態、ネガティブな感情は、実行機能を損ない、結果として自己の失敗の原因となります。 ネガティブな感情は、欲求の増幅させたり、モニタリング力を低下させ、限られた能力の枯渇させ、自分の望まない行動を促進させる力があるので、たいてい物事がうまくいかなくなるのは、ネガティブな感情を感じている時なわけです。

もうひとつは感情調節で、感情生成には4つの段階があると言われています。

①感情を抱く出来事が起きる ②そこに注意を向ける ③認知的評価をくだす ④感情表現としてあらわれる

これはアドラーもいっていまして、

まずは怒りを感じる前に一次感情として不安や悲しみなどがあり、それが二次感情として怒りになる

なので、感情調節の戦略としては各フェーズにテコ入れをすることができると考えるわけですね。 例えば、「②そこに注意を向ける」であれば、注意を向けてしまった時に気づくことができれば、「別の方向に注意を向けて逸らす」という戦略が取れるわけです。 「③認知的評価をくだす」についても、評価を下す前に「評価を変える」という戦略も取ることができますよね。 また、これは①や②のような感情の初期段階で対応する方が認知的資源を消費せずに済むので、 「注意を向ける」のところでコントロールできると便利なわけです。

注意のコントロールと言えば同じみ、マインドフルネスでしょう。 マインドフルネスがメンタルや感情コントロールに良いというのはこうした原理が背景にあったりするわけですね。 そのトレーニングとしてマインドフルネス瞑想がありますが、呼吸に注意を向け、悲しみの感情から遠ざけるなど、選択した対象への注意を自発的にコントロールすることで、困難な経験への気づきと注意を高めることができたり、一時的に感情を伴う体験から注意をそらすことで、感情を伴う体験の強度が下がり、習慣的な行動反応が実行される可能性が低くなると考えられているので、マインドフルネス瞑想が効果的と言われる所以であります。

3. その論文の目的(具体的に)

そこでマインドフルネス介入が自己調節に及ぼす効果に関連する既存の知見をメタ分析を用いて検討しました。

4. 方法

メタ分析を用いて、マインドフルネスと自己規制に関する27件の研究が抽出されました。 (表が表示されていないため人数は不明なのが残念。。ただこの内、11件はメタ分析が含まれているため、それなりに期待はできるかと) また、介入の際のマインドフルネスは平均10分程度でした。

5. 結果

その結果何がわかったかといいますと、 ・マインドフルネス介入は、否定的感情の調節において対象群(ぼーっとしたり、気晴らししたりする)より優れていた(d = -.28)。

ただし、マインドフルネス介入が感情調節戦略に有意な効果を示す証拠はまちまちであり、有意な効果は反芻の測定に限られ、マインドフルネスは反芻思考を減少させた

感情調節には「気晴らし」もマインドフルネスと同等に有効であり、気晴らしは「注意を逸らす」ことに有効であり、 マインドフルネスは注意と認知的評価のフェーズにおいて有効であることがわかった。 (マインドフルネスによって経験を受容できたり、評価・判断をくだすことから一歩離れて捉えることができるようになるため)

マインドワンダリングのような状態(ぼーっとしたり注意散漫な状態)は、ネガティブな感情を感じている時に、それを増幅させることがある

6. 結論・まとめ

ざっくりとまとめると、 ・マインドフルネスは反芻思考のような散漫な状態にはより効果的

感情表出として感情が外に現れるまでには、注意の方向と認知的評価の段階があるので、 気晴らし行動やマインドフルネス瞑想などで、注意力や自己認識力を高めることである程度調節できる

注意力の向上は、1日10分程度のマインドフルネス瞑想でも十分身に着けられる

あたりが考察込みのまとめでした。研究者のコメントによると、

自己調節モデル(Baumeister & Heatherton, 1996)によれば、人には限られた容量を持つ共有認知資源があり、それは自己調節システムにかかる要求によって消耗されると提唱している。否定的な感情は、自己制御資源を消耗し、その結果、前駆反応を抑制したり、注意を持続させたりする能力を低下させることがある。マインドフルネスは、より効果的に感情を調節することによって間接的に実行機能を強化し、それによって認知負荷を軽減し、その後の実行機能への要求に利用できる資源を増加させた可能性がある。

とありまして、要するに人間には意志力などをコントロールする「資源」があって、この資源が自分の感情や意志力を調整できる燃料になっていると。 そのため、例えば目の前にお菓子がある時に「食べてはいけない」と支持されると、これを我慢することによってこの資源がどんどんすり減ってしまい、資源が少なくなった頃にはちょっとのことでイラついてしまったり、入眠前にYoutubeで時間をつぶしてしまったり、まともな判断ができなくなってしまうということでした。 (ただ、このあたりの意志力に関わるお話はだいぶあいまいで、じゃあその資源の正体は何?というと、 「ブドウ糖です。でもはっきりしたことは言えません」みたいな状態になっていたりするようなので、まだ参考程度にしていただければ。ラムネが集中力に効くと言われるのもこの辺の眉唾でしょうね。)

7. どんな使い方ができる?

そんな感じで今回は自己調節(self regulation)に関するお話でした。 今回はせっかくなので、感情調節には4段階あって、マインドフルネスや注意力次第で感情は調整できるんだぞ~ということだけでも覚えて帰っていただければと思います。それではそれではー。