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働きがいの実態調査2020/働きがいとワークモチベーション #176

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0. 論文タイトル・URL

働きがいの実態調査2020/働きがいとワークモチベーション ・https://www.works-i.com/research/works-report/item/hatarakigai-survey.pdfhttps://acguacjc.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=143&item_no=1&page_id=13&block_id=21

1. その論文の目的・どこのリサーチか

リクルートワークス研究所が2020年に行った「働きがい」に関する調査をしたものと、 青森中央短期大学が2019年に行った働きがいとワークモチベーションに関する論文を合せたものになります。

2. (先行研究とこれまでの問題)

はじめに断りを入れておきますと今回の研究は企業が行った研究になっていますが、サンプルも多く分析もしっかりなされているものだったので精度は比較的高めな方だと思ったので紹介します。2本目に載せている青森中央短期大学の論文は実験や質問紙調査ではないのですが、背景の説明としては「なるほど」と思えることが書いてあったので載せました。 今回は日本語論文なので、普段英語論文を読んでいない方でも原文を見てもいいかもしれませんね。

で、もうひとつ付け加えると、個人的にはかなりおもしろい内容になっていたので書いてみました。 なぜ働き方改革や働きがいなど、働くについての意識が高まっているにも関わらず、日本人の労働満足度が上がらないのか、についてお話しています。普段の科学論文とは少し異なる角度ではありますが、これまでの知識をどう応用できるのかも繋がってくる内容になっていますのでぜひとも。

さて、本題に入ります。 今回の研究を一言でいうと、「働きがい」ってそもそも何なの?「働きがい」を感じるってどういう状態なの? ということを調べた研究になります。 ◆長時間労働の減少 これまで日本人は長時間働いていまして、週労働時間が60時間以上の労働者の割合は13.0%でした。 2018年は6.9%と前年から-0.7ptと大きく低下し、長時間労働者の比率は着実に低下していますね。 そして、2019年4月からは、働き方改革関連法案の施行により、月45時間以上の残業は原則禁止となりました(まあ原則ですが)。 さらには、テレワークや時短勤務、有給休暇の取得促進、地域限定勤務など働き方のバリエーションは格段に増えました。 ところが、従業員の満足度はあがっていない。リクルートワークス研究所で調査したところ、会社で実施している働き方改革に対して56.3%が不満もしくはやや不満という回答を持っていることがわかり、その理由は「早く帰れと言われるため、仕事が終わらない」「残業代が減ってしまった」などがあります。

つまり、働く時間が減っていたり、個人に合わせて様々な働き方ができるようになってきている現状があるにも関わらず、 従業員満足度は上がっていないという現状があるわけです。

◆そも働きがいとは? そも、「働きがい」とは何でしょうか。まずは「~しがい」とは何なのかついて見ていきましょう。 2019年の青森中央短期大学の論文によると、「~しがいがある」という言葉は,学問的定義がなく日本独特の使いまわしであることがわかっていまして、海外ではこのような言い回しはしないのだそう。 脳科学者の茂木健一郎氏が「ikigai」という本を海外で出版されましたが、ここで初めて「ikigai」という英単語が生まれたそうです。

生きがいや働きがいの「かい(甲斐)」は「かひ」として,万葉集にも出てくる言葉でもあり,日本国語大辞典では,自身の心の満足や価値を表す言葉として説明されているんだそうな。また、「働きがい」「仕事のやりがい」をテーマにした先行研究・調査のうち,「働きがい」について明確に定義している文献は3文献しかないそうで、ハーズバーグの動機付け理論をもとにした働きがいについて述べた研究では、「働き甲斐とは,その人の仕事生活の中で,職務満足感の重要な構成要因である能力の十分な発揮や成長,達成感,充実感などを感じることができ,そして,それが自己の人生の肯定に繋がること」と定義し,「働きがい」を職務満足(Job Satisfaction)の概念から捉えていました。あとはワークモチベーションに関する研究も近い概念としてはありますが、これも働きがいとはまた少し異なっています。 また、「どのような時に働きがいを感じるか」について質問をすると、人によって働きがいを感じる瞬間が異なるため、、個人差があまりにも大きいのですなー。

3. その論文の目的(具体的に)

そのため、「働きがい」という概念についてはまだ学問的な定義がないというのが現状でして、その正体を明らかにしようというのが本研究の目的です。

4. 方法

企業で働く9716名に対し、インターネット調査を行いました。 参加者には性別や年齢などの基本項目、会社の規模感、役職、仕事内容、労働時間や通勤時間など、パーソナリティや人間関係に関する質問など、多岐にわたる質問に回答してもらいます。 また、「生き生きと働いている状態とはどういう状態であるか」「あなたは、ここ1カ月の間、生き生き働いていましたか?」について質問を行い、自由記述で回答してもらいました。

その自由記述の結果と、これまでに示された既存の尺度と新規の尺度に含まれる「生き生き働く」ことに関連する項目が全体で101項目抽出され、重複している概念もあるためそれを整理、分析するために因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い、「働きがい」に関する要素を抽出した結果、8つの因子に分類することができました。

5. 結果

◆働きがいに関する8つの因子 人が働きがいを感じる要素として8つの要素があります。 特徴としては ・何に働きがいを感じるかは個人差がある ・特定の因子が低い場合、その要素を補強することで働きがいをより感じられるようになる可能性がある

●活力実感 この得点が高いほど、自分に任された仕事に没頭し、熱意あふれる取り組みを通じて活力を得ている。逆に点数が低いほど、仕事に没頭したり情熱を 注ぐことによって活力や幸福感を得ていない傾向がある。仕事をドライに淡々とこなすことを好む場合はこの点数は低くなる。 その他の特徴としては、 ・自ら積極的に行動する人ほど、活力実感は高くなる ・自由で個人が尊重される職場であるほど、働いている個人は活力を実感しやすくなる

●強みの認知 この得点が高いほど、これまでの仕事を通じて得た経験や専門性を、 自分の強みとして自覚している傾向がある。また、それを誇りに思い、働く人としての自分らしさとして認識することもある。一方、そういった経験や、ほかの人には見出せない強みが見いだせない場合はこの得点は低くなる。また、強みや個性を発揮する職場よりも、没個性的に誰でも同じ程度に仕事ができることが望ましいと考える場合もこの得点は低くなる。 その他の特徴としては、 ・ポジティブかつ開放的にに物事を捉え、積極的に行動する人ほど、自らの強みを認識している程度が高い ・柔軟で個が尊重されるな組織であるほど個人の強みが認識されやすい

●職務満足 責任ある仕事への取り組みを通じて、周囲からの信頼と会社への誇りを感じているとこの得点が高くなる。一方で、職務条件や周囲の人間関係、会社の社会的イメージに満足できていない場合はこの得点は低くなる傾向がある。要求水準が高い場合においても、この得点は低くなると考えられる。

・他者との人間関係において同調的な人ほど、職務への満足度が高い 「自由闊達・開放的」「成果主義・競争」「個の尊重」からの影響が大きい。強みの認知同様、個が尊重される職場ほど職務満足は高くなりやすい。

●有意味感 取り組んでいる仕事の意味や価値を理解しており、自分自身の成長を実感している場合、この得点は高くなる傾向がある。また、自分の仕事が社会に貢献しているという感覚がある場合にも高くなると考えられる。一方で、自分の行っている仕事に、社会的な意味や価値を見いだせていない場合や、あるいは、そもそもそれを考えようとしない場合にはこの得点は低くなると考えられる。

・ポジティブで社交性、行動力があり、「こうあるべき」という強い信念を持ちやすい人ほど、自らの仕事に有意味感を見出しやすい。 ・柔軟で個が尊重される組織ほど、有意味感は見いだされやすい

●オーナーシップ 仕事のプロセスを理解し、進め方やペースを自分で主体的に考えながら効率的に取り組むことができている場合、この得点は高くなる。一方、 仕事の進め方などについて、自己管理ができていない場合や、効率的に変更することができずにいる場合は、この得点は低くなると考えられる。また、受動的に仕事を行い、管理されたり指示されることを好む場合もこの得点は低くなる

・楽観性と行動力からの影響が大きいほど、自ら主体的に仕事にかかわって効率的に変化させていきやすい ・「柔軟性・創造性・独自性」「個の尊重」からの影響が大きいことが示され、これらが高いほど、自らの仕事を主体的に変化させて、工夫をしながら仕事ができていると感じやすい

●居場所感 この得点が高い人は周囲のメンバーからの期待を理解し、職場の一員としての信頼と安心感を強く感じている傾向がある。一方、得点が低い場合は職場で大事に扱われていない、期待されていないという感覚を感じている程度が高いと考えられる。また、職場において人間関係や交流を必要と感じていない場合や、人間関係を築くことが苦手で避けている場合も低くなるだろう。

・楽観性と社交性、協調性の影響が大きい ・個人が尊重されるほど居場所感が高くなる

●持ち味の発揮 現在の仕事の内容と、やりたいことが合っており、自分の強みや自分らしさを発揮できている場合、この得点は高くなると考えられる。一方で、自分のやりたいことと今の仕事があっていない、自分が生かせてないという感覚が ある場合は低くなる。また、自分の個性や持ち味を発揮する必要がないと考えていたり、それらが求められていない場合も低くなるだろう。

・行動力の影響力が高く、自ら積極的に行動する人ほど、自分の持ち味を発揮できている ・「自由闊達・開放的」「柔軟性・創造性・独自性」「個の尊重」からの影響が大きい

●多忙感 周囲のメンバーや仕事の状況にかかわらず、いつも全力で忙しく働いているほどこの得点が高くなるだろう。また、忙しくしていることに対して充実感を感じ、場合によっては仕事をやりすぎてしまうこともあると考えられる。一方、仕事だけに注力するような働き方をしていない場合やそのような働き方を好まない場合にはこの得点は低くなると考えられる。

・「多忙感」については、認知の「断定的表現」、パーソナリティの「神経症傾向」からの影響が大きいことが示された。何かを「やるべき」「こうあるべき」という考えにとらわれやすく、また細かいことまで気にしやすい人は、仕事を増やしてしまい、多忙感が高くなると考えられる。 ・「権威主義・責任回避」「成果主義・競争」からの影響が大きいことが示された。特に、成果主義の組織風土がある場合には多 忙感が高くなる傾向が見られた

6. 結論・まとめ

今回はざっくりとこんな感じの結論になりました。 研究者のコメントも参考になるものでしたのでご紹介しておくと、

総合的に考えて、生き生き働けているかどうか」に関しては、全ての因子の得点を高めなければいけないという必要はない。本研究においてはさまざまなプロフィールが見いだされ、特定の因子が突出していることによって生き生き働いていると感じている個人もいれば、全体的に中程度かほどよくバランス がとれていることで生き生き働いている個人も見いだされた。 おそらく、8因子の中でも特に重視する因子や、重視しない因子についての個人差も存在しているものと考えられる。そのことは、各因子と他の変数との関連性からも推測できるだろう。すなわち、多面的に自分の「生き生き働いている」状態像を捉えると同時に、その中でも何が自分にとって重要で、何が重要でないのかについても考慮する必要があると考えられる。キャリアの転換期すなわち、入職時や転職時、あるいは異動や働き方が変化する時には、8因子に基づいた多面的な自己理解とその重みづけの判断をすることが望ましいのではないだろうか。日々の仕事において、自分の「働きがい」が見えなくなったり、迷ったりした時にも、この視点で考えることが役に立つだろう。

とコメントしていまして、この8つの側面から「自分はどんな時に働きがいを感じるか/どの因子を重視しているのか」を考えてみたり、重みづけしてみると、働きがいを感じる瞬間が言語化しやすくなるかもしれません。 結論、働きがいを感じられることで何が良いかといえば ・ポジティブ感情の増加 ・物事への積極的な関わりの増加 ・他者との良い関係の構築 ・人生の目的や意味の自覚 ・達成感 ・自尊感情の増加 ・主観的健康度 ・ネガティブ感情の減少 ・孤独感の低下 に繋がるため、働きがいを感じられると、仕事も楽しくなるし、日常生活において幸福感や、毎日が充実している感覚を感じられるようになるということですなー。

7. どんな使い方ができる?**

質問項目がたくさんあるので、テストしてみるのが面倒、、という方は、それぞれの項目ごとに7段階で評価してみるのもいいかもしれません。そして同じように重みづけもしてみるとよいでしょう。 どれかの数値が低いとしても、それが自分にとって重要か、そうでないのかによっても異なるので、 数値が低いからといって高くしなきゃ、と思う必要もありません。自分が重要だと思っているけれど低い場合には、その点を改善していくことで働きがいを感じられるようになるということでした。

自分の場合、オーナーシップは重要視していますが、実際にそれがうまくできているかというと、7点中4点くらいなので、若干の乖離があるので、改善の余地がありそうですね。 また、こうあるべき、みたいな考えに囚われやすい傾向もあるので、多忙感は感じやすいものの、重視しているか、というとやり過ぎは疲れる、、と感じてしまうのでこの辺のバランスは難しいなと思いますね。ですが暇な方が働きがいを感じられなくなるので、意外と重視していることなんだろうなーとも思いますが。。

ぜひ自分の働きがいを感じられる要素を分析してみてはいかがでしょうか~。