manimanicocco / PsychPapersProject

18 stars 3 forks source link

Beyond Willpower: Strategies for Reducing Failures of Self-Control~前編~ #179

Open mentalistL opened 2 years ago

mentalistL commented 2 years ago

0. 論文タイトル・URL

Beyond Willpower: Strategies for Reducing Failures of Self-Control https://static1.squarespace.com/static/5353b838e4b0e68461b517cf/t/5cda5ada6e9a7f5573458d7e/1557813983729/beyond+willpower.pdf

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2018年にペンシルベニア大学が自己コントロールに関する20の戦略をご紹介してくれていたのでメモメモ。

2. (先行研究とこれまでの問題)

これまで「自分をコントロールするには意志力が大事だ!」なんて言われてきましたが、 Will Powerの概念は心理学の世界からはエビデンスが弱いってことで重視されにくくなってきてます。 (どちらかと言えば実行機能として表現されていますかね。) それでは自己コントロールには意志力ではなくて何なのか?といいますと、 「そもそも人間は目先の欲求に負けるハードウェアである」という 進化論ベースの考え方が主流になってきています。

これは遅延割引や、現在バイアスと呼ばれるもので簡単に言えば「未来よりも今の方が大事」 という物の見方をするわけです。 これは当然のことで、人間の肉体の生命活動だけは長寿化していますが、 数万年前と同じハードウェアを使っています。そのため、元々は長い間生きていける 生き物ではないためできるだけ目先の欲求に従って生きた方が生存率が高かったわけです。 衝動的に食べてしまうことも、欲しいものを衝動買いしてしまうのも、衝動的に 生きていた方が生存率が高かったことを考えると自然な行動といえます。

3. その論文の目的(具体的に)

しかし、近年では衝動的に生きていて良いことのメリットが少なくなってきてしまったので、 自制心を効かせて自分のすべきことをする方のメリットが大きくなってきました。 健康的な肉体を作るために運動したり、食事をコントロールしたり、 SNSを控えて自分の勉強の時間を確保したりする方が遥かに成功に近づくわけですね。 自制心を働かせて、「やるべきこと」を行う難しさは全人類共通の悩みであるわけですな。

4. 方法

そこでペンシルベニア大学の研究チームが自己コントロールをするための20の戦略を まとめてくれておりましたのでご紹介いたします。

研究チームは自己コントロールの戦略を下記の4象限にわけて 戦略を構築しておりまして スクリーンショット (108)

1.Self-Deployed型ーSituational:自身の周りの状況を変える 2.Self-Deployed型ーCognitive:自身の認知を変える 3.Other-Deployed型ーSituational:他者の状況を変える 4.Other-Deployed型ーCognitive:他者の認知を変える これら4つの軸にわけて戦略を分類しております。 1つずつ紹介していきましょう。

5. 結果

1.Self-Deployed型ーSituational ①コミットメントデバイス これは自己コントロールできなくなる対象を物理的に排除する方法です。例えば、 ・将来にゲームをプレイして時間を無駄にしないために、iPadから意図的にゲームを削除する ・自由にネットサーフィンができる時間を制限するようなソフトウェアをダウンロードする ・スマホを長時間触れないようにするために一定時間経たないと開かない金庫を買う 効果は高いものの、これを実行に移すのが難しいのが弱点ですね(笑) 自己コントロールできずにどうしようもなくなった時の最終手段としてどうぞ。

②テンプテーション・バンドリング(Temptation bundling) これは誘惑になるものとやるべきことを同時に行うことで、やるべきことを行いやすくする方法です。 やるべきことをすると、やりたいことを「報酬」として受け取れるように設定するのがコツでして、 例えば ・運動をしながら自分の見たいテレビ番組を見る(運動することでテレビが見れるようになる) ・掃除をしながら、聴きたかったオーディオブックを聴く(youtubeとかもOK) ・出勤しながら読みたかった本を読む など、やるべきことと、やりたいことをセットでやるようにするテクニックです。 実証研究は少ないものの効果は期待できそう。 自分も最近は掃除しながらオーディオブックを聴いたり、 料理をする=オーディオブックを聴く みたいなアレンジをしているので、仕事から帰ってきてご飯を作らなければならない 面倒くさいなーと感じている時にも効果的な手法です。

③シチュエーション・モディフィケーション(Situation modification:状況の修正) これは①に少し似ていますが、誘惑となる刺激を視界から消す方法になります。 例えば ・お菓子を買わないようにするのではなく、コンビニの前を通らないルートを歩く └スーパーで買い物していてお菓子を買いたくならないように、お菓子売り場を避けて買い物する ・スマホを触りたくならないように帰宅後は玄関で充電する みたいな方法です。根本的に刺激となるものを排除するやり方ですね。

2.Self-Deployed型ーCognitive ④目標設定(Goal setting) 目標設定は主に小さな目標です。サブゴールを達成することで、スモールウィンが生まれ、進歩の感覚を育み、自己効力感を高めることができますし、(Amabile & Kramer, 2011; Nunes & Drèze, 2006; Stock & Cervone, 1990)具体的な金銭的結果を伴う期限を設定することで先延ばしを減らすこともできます。 注意したいのは、「目標設定をしたからといって自己コントロール感が高まる」わけではないということです。 大事なのは、スモールゴールを達成することで「前に進んでいる」を得ることー これが自己コントロール感につながる=認知が変わる、という公式です。 目標設定をして満足していてはだめです(笑)

⑤計画ーIf then Planning お馴染みのIf then Planningです。 習慣をつくるときにはIf then Plannningが効果的と言われていますが、 自己コントロールの文脈でも同様です。 実際、94の独立したテストのメタ分析では、If-Thenプランを立てることで目標達成度が上がることがわかりました (d = 0.65)。その効果は、年齢層や障害の種類の影響を受けないので、どんな方にも効果的な手法です。 例えば、 ・スマホを触りたくなったらPCを開く ・皿洗いがめんどくさいと感じたらオーディオブックを聴く みたいな感じでして、②テンプテーション・バンドリング(Temptation bundling)と組み合わせて使うのもありですね。

⑥メンタル・コントラスティング こちらはメンタル・コントラストという手法になります。 ある目標を達成したときのポジティブな結果を鮮明に想像し、その後に、現在その目標を阻んでいる(もしくは障害となりそうな)ネガティブな障害を思い浮かべるという手法です。 例えば、 ・仕事から帰ってきたら勉強がしたい→ごりごり勉強している自分の姿を想像する(ポジティブな結果) →シャワーしてからスマホ見てそうだなー/ゲームしてそうだなー(ネガティブな障害) メンタルコントラストがうまく行く理由として、 ・対処すべき課題がわかる ・イメージできるので行動に移すための計画ができる ことだと言われています。効果量も大きめなのでやる価値は高いものの、1年ほどで効果が切れてしまう ようなので、まず3ヶ月お試しでやってみてはいかがでしょうか(笑) ============================================ 今回は数多いので数回に分けて掲載いたします。 どれも使えるテクニックがぎっしりまとめられていますし、 組み合わせて使うことでより強化されるます。

残りの手法についてもおたのしみに。それではどうぞよしなに。