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Theoretical explanations for maintenance of behaviour change: a systematic review of behaviour theories #184

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0. 論文タイトル・URL

Theoretical explanations for maintenance of behaviour change: a systematic review of behaviour theories

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2016年にニューカッスル大学が、行動変容の維持に必要な要素は何か、について調べた研究になります。

2. (先行研究とこれまでの問題)

行動を変えるのって難しいですよねー。 心理学の研究では「行動変容」というジャンルがあり、そこでは 喫煙や飲酒、減量に対する介入を行い、被験者の行動を変えることができるか、などを調査していたりします。 ただ、行動変容の研究では「一時的に」行動を変えることはできても、 継続して実験を行ったり、長期的な介入を行わないため、どのくらいの期間その介入が効果的であったのか? については研究されないことがよくあります。

「三日坊主」という言葉があるように、行動変容の本質は維持することが難しいことにあります。 行動を変えよう!と思い立った瞬間はモチベーションが高いので、行動を変えやすいのですが、 そのモチベーションは持続しないため続きません。 つまり、 1.新しく何かを始めるときのモチベーション 2.新しい行動を持続させるときのモチベーション 上記の2種類は性質が異なっており、多くの人は前者しか考えないため、持続させられないんだそうな。

3. その論文の目的(具体的に)

そこで研究チームはシステマティックレビューを行い、100件の研究から行動変容の維持に必要な要素を見つけました。

4. 結果

行動を持続させる3つの方法

1.行動の楽しさと、結果に対する満足感 ・人は、自分がやっていることが「正しい」と感じ、その行動にポジティブな認知や、意味を見つけることができれば、より取り組むことができる。 ただし、人は長期的で合理的な結果よりも、即時的な感情を優先するため、合理性よりも行動変化による、「感情的にポジティブな結果」があるかどうかが重要となる。 例:早く寝ることが自分の健康を考えれば長期的にも合理的な選択だが、その瞬間の感情に優先されてしまう生き物であるため抗えない。しかし、「早く寝ること」により、ポジティブな結果を経験することで、早く寝ることに価値を見出し、その行動を持続させやすくなる。 └ 早く寝たことで、次の日の体調がよく、仕事もうまくいった └ 朝から運動する時間を確保することができ、頭がよく回り、仕事が捗った、など。

2.自己決定 ・自分で決めたことの方が行動を持続させやすいが、それだけでは足りない。 ・新しい行動が本人の価値観に近くて、本人との関連性がある場合、行動変化は維持されやすい。

★3.アイデンティティ ・セルフコンセプト理論:自分自身について持っている信念や、アイデンティティに沿った行動を維持しやすい └ 「それ」をすることが自分にふさわしいと感じられたなら、人は簡単にその行動を実行し続けることができる ・★アイデンティティが行動を持続させるには最も強力であり、長期的な変化すら可能にする

例:健康的な生活を送り、40代になっても若々しく生きたい、というアイデンティティ・価値観を持っている人は、20代や若い頃から、習慣的に運動をしたり、食習慣に気を付けたり、喫煙をせず、健康的な行動が多い。 └ 自分のアイデンティティを強く自覚することで、自分は健康的な生活を過ごすために、(喫煙は絶対しない・加工食品は基本的に食べない)などの自分なりの強いルールを維持することができる。 └ 逆に、無力感のアイデンティティが形成されている人は、「どうせ~しても変わらない」「自分は~~だから変わりたくない」などの、変化を拒む態度が強化されている場合もある。

5. どんな使い方ができる?

最近、行動変容は私の中でもブームの概念でして、特に3.アイデンティティは行動変容の持続に関しては もっとも強力であると思われます。 結局のところ、人間は自分の行動に一貫性を持たせようとする心理が強いので、 「自分は健康的な行動を常に心がける人間なんだ」と強く刻み込むことで、 運動習慣や食習慣、睡眠習慣まで改善されるようになります。 これと組み合わせてプリコミットメントなどで友人や他者にもそのことを公言しておけば引き下がれなくなりますよね。 睡眠に関する本を出版している人の睡眠の質が悪かったら笑いものだし、 地中海式食事療法を勧めるユーチューバーが、ジャンクフードばかり食べていたら説得力にかけますもんね笑 他者の目があろうと無かろうと、自分のアイデンティティに反する行動を人は取ろうとしないものです。 この心理はかなり強力なので、使わない手はないなーと思います。

ちなみに、この論文ではほかにも行動変容の持続に関して、あと4つの方法を紹介していますが、 あまり本質的な内容ではなかったので、紹介しておりません。気になる人は読んでみてくださいましー。