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Life Crafting as a Way to Find Purpose and Meaning in Life #193

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0. 論文タイトル・URL

Life Crafting as a Way to Find Purpose and Meaning in Life https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2019.02778/full

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2019年にエラスムス大学が、「ライフ・クラフティング」という手法を開発しておりまして、 簡単にいうと、 ・「どうすれば自分の人生のやりたいことを見つけ、人生をおもしろくできるか?」 ・「どうすれば、自分の価値観に合った生活を送ることができるようになるか」 このような問いに対しての効果的なアプローチ方法を開発してくれました。

2. (先行研究とこれまでの問題)

「人が人生でどれだけ成功しても、自己決定的な目標は幸福感を高めるが、他律的な目標の追求は幸福感を高めない」 これは自己決定理論で有名なデシとライアンの言葉です。人は自分で決め、自分の能力を実感することができ、人とのつながりを感じることに対して高いモチベーションを発揮するという理論ですね。これはあらゆる国、性別において見られる特徴であり、人間のモチベーションの本質ともいえます。また、「人生の目的」がある人はストレス、抑うつ、不安といった心理的不安を抱えにくい傾向があります。

しかし近年では、それとは反対に他者の基準に合わせて生きようとする人や、親や恋人の期待に応えようとする人もいたり、他者の承認を強く求めてしまう人もいます。このような社会的に定められた完璧主義は、燃え尽き症候群やうつ病、意味感の欠如と関連していることが指摘されておりまして、最終的には ・人生の日々の出来事だけで精一杯になり、自分がやりたいことがわからない ・やりたいことがあっても着手できない ・忙殺の中の束の間の休息が幸せになる ・何か副業とか挑戦してみたいけど、自分にできることとかやってみたいこともない こんなパターンもよくあります。 人生の目的や生きがいを持つ人ほど、身体的にも精神的にも健康に人生を送ることができるという研究は数知れず。 しかしながら、科学的根拠のある手法で取り組まなければ、そのような目的、生きがいを見つけることも難しいと言われております。

Q. どうすれば「生きがい」や「やりがい」を見つけられるか? 働きがいといった仕事における文脈では、 ・どうすれば仕事に対して意味を見出せるか ・仕事をもっと面白くするには? を見つけていくための手法をジョブクラフティングといいます。 このジョブクラフティングは非常に効果が高く、仕事のパフォーマンス向上、エンゲージメント向上、ストレスの減少、ポジティブ感情の増加などが挙げられておりまして、自分の仕事に意味、意義、おもしろさ、自分の価値観との一致などが見つけられて、人生が変わると言っても過言ではないほどの効果があるわけですな。

そこで本研究では「仕事だけでなく人生の重要な領域においても同じようなことができるのでは?」と考え生まれたのがライフ・クラフティングという手法になります。 簡単にいうと、ジョブクラフティングの人生Ver.なので、 ・どうすれば、自分の人生がよりおもしろくなるか ・どうすれば、自分の価値観に合った生活を送ることができるようになるか を考えるプロセスで、「自分自身の現在と未来について内省し、生活、キャリア、余暇などの、人生の重要な領域について、 目標を設定し、自分の価値観や希望により合致した形に人生を変化させるための、具体的な計画や行動を行う手法のこと」です。 このライフクラフティングがすごいのは、ただ自分の価値観を見つけるということにとどまらず、具体的な行動計画まで立てることができることにあります。

こういった話をすると、 ・「未来のことについて考えるのが苦手」 ・「5年後、10年後のキャリアを考えてください、と言われると何も思いつかない」 という人も多いでしょう。 そういう人は「仕事でどんな人と一緒に働きたいか」、だったり「どんなライフスタイルで過ごしたいのか」ということを言語化できていないケースが多くあるのですが、 ライフ・クラフティングは、自分の「理想や大事にする価値観」を言語化し、現在の自分の状態も言語化することで、そのギャップを具体的な計画を立てて埋めていくプロセスになるので、未来のことについて考えるのが苦手、という人ほどぜひやってみてほしい手法になります。

3. ライフ・クラフティングのプロセス

ここからはライフ・クラフティングの方法をまとめていきますので、ぜひ以下の質問に回答してみてください。 ノートとペンを用意し、箇条書きでも文章でもよいので、自分の価値観を見つけ、自分が望む未来のための具体的な方法を考えていきます。正解はないので、自分の言葉で書いてみてくださいね。

1.価値観と情熱の発見 人は「好きなこと」に注力するのではなく、「重要なこと」に注力する方が、高いモチベーションを維持しやすいことがわかっています。実際にキャリアに関する研究でも、「好き」な活動に尽くすよりも、「重要」だと感じること(価値観に沿ったこと)を追求する人の方がモチベーションが高いため、このプロセスでは、自分の価値観・重要なことを見つけていきましょう。 価値観を発見するための質問は次のようなものです。 ・自分のマイブームは何か ・仕事とプライベートで、どのような人間関係を築きたいのか ・どのような職業に就きたいか ・どのようなライフスタイルを選択したいか

例:コーヒーを淹れるのがマイブーム。おいしいドリップを淹れられるようになりたい。 週末はピクニックをしたり、自然の中でごろごろしたり、運動したりしたい。 在宅勤務と出社を自分のペースで選べる方がいい。 人間関係は機械的にならず、もう少し人間味のある人間関係をつくっていきたい。。。など。

2.現状と未来のギャップを知る 人間の行動の8割は習慣に左右されると言われているが、最も行動を変化させ、維持しやすくなる方法は、自己一致目標を持つことです。人は自分のアイデンティティに沿って行動をする傾向が強いため、「健康的であり続けたい」と考える人は、睡眠や運動、食生活に気をつけやすくなります。このプロセスでは、現状と未来のギャップに気づく質問をしていきます。 ・他人に憧れる資質、憧れることは何か ・どんな人を尊敬しているか、憧れの人物は誰か、その人のどんな特徴に憧れているのか ・自分が持ってる能力は何か ・身につけたい能力は何か ・自分の好きな習慣、嫌いな習慣は何か 例:キムタクや福山雅治さんみたいな人に憧れる。理由は~~~。 :好きな習慣はコーヒーを淹れること、運動、料理する習慣を持っていること

3.現在と未来の社会的価値観(理想を叶えるための、現在の環境の確認) ・自分をやる気にさせるものは?/やる気を失わせることは何か? ・自分にとっていてほしい友人は誰か?その人はどんな特徴を持っているのか ・理想の生活や、理想の家族生活は? ・どんな場所に住みたいか ・どんな風に生活したいか ・それを実現した時に、どんな気持ちを抱きながら生活することになるだろうか? 例:他人からとやかく指示されるとモチベーションが下がる。自分のペースで仕事したい。 企画やオペレーション周り、分析などは自分のペースで進められるため楽しい。 理想の住環境は、家の周りが静かで、すぐ近くに自然があること。。。などなど

4.これからのキャリアについて ・仕事で大切にしていることは? ・どんなことをするのが好きか?(趣味、副業、プライベート、本業の仕事) ・どんな内容の仕事をやってみたいか

5.「理想の状態」と「行動を起こさなかった場合の未来」の比較 Q, もし行動を起こさなかったら、どんな未来になるだろうか? →現在の延長線上のなれの果てを想像してみるのもよいです。基本的にネガティブなシーンが浮かぶと思います。

6.目標達成計画を立てる(現状と未来のギャップを埋める) ここまで、現在と未来の価値観や考え方について考えてきました。ここからは、具体的に自分に足りないものは何かを考え、未来と現状の差を埋めていくための具体的な計画を立てていきます。

例 ・自分の生活に余白がなさすぎるため、心に余裕が持てていない →一日の中に、あらかじめ空白の時間をブロックしておく。ここに予定を入れてはいけない。 ・寝る直前まで電子機器を使用しているせいで、睡眠の質が悪い →少なくとも入眠30分前には作業をやめて読書したりゆっくりする。0時には電子機器を使用をやめて、触りたくなったら代わりに本を手に取り、一ページだけ読む。

※この行動のプロセスは、自身が知っている科学的根拠のあるテクニックをふんだんに使用してもらって構いません。 目標達成の計画も思い浮かぶ人はたくさん書いてOK。 ただし、いっぺんに変えていこうとすると挫折してしまうので、今週やることを1つ決めたらやり通してください。 上手くいかないことが当たり前なので、うまくいかなくても挫折するのではなく、なぜ失敗したのかを考えて修正していくと、メンタル的にも続けやすく、取り組みやすいです。

7.パブリックコミットメントをする 自分の目標を他者(友人や親しい人、SNSなどでもよい)に開示することで、目標達成のために努力する可能性が高めます。 ※最後のパブリックコミットメントが上手くいかないことが良くありますが、 「果たさなくてもよい目標」「破っても咎められない関係」におけるコミットメントはあまり効果がありません。 自分がやると誓ったことを見守ってみてくれる人に行うのがよいでしょう。

4. 結論・まとめ

1~5のプロセスは自分の価値観や理想の未来について考え、6~7のステップで具体的な計画に落とし込んでいきます。 1~5で自分が思うように書けばよい、というのはここで重要なのが正しいことを書くのではなく、自分が「本当は」どんな未来にたどり着きたいと思っているのか、考えているのか、それを言語化し、引っ張り出してくるプロセスなので、自分が思い浮かんだものでよいです。 「5年後、10年後のキャリアを考えてください、と言われると何も思いつかない」という人は、この1~5の言語化が苦手か、未来のことについてあまり深く考えない人(現在や過去にアンテナがある人)なので、未来のことよりも、どんな生活や日常の延長線上に自分は居たいか、という視点で考えると思い浮かびやすいかもしれません。 最後に重要なのは6のステップで、この計画がどこまで具体的で、行動障壁が低く、達成の実現度が高いかによって、未来と現実の差が埋まっていく速度が変わってきますので、入念に考えてOKです。

私も実際にライフクラフティングを通して、「今までの生活でもやもやしていたけど、日常の忙しさに見落としていた、見て見ぬふりしていた要素」をたくさん拾い上げることができたので、半年に一度でも構いませんので考えてみると良いかもしれませんー。