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The Autonomy Paradox: The Implications of Mobile Email Devices for Knowledge Professionals #195

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0. 論文タイトル・URL

The Autonomy Paradox: The Implications of Mobile Email Devices for Knowledge Professionals https://pubsonline.informs.org/doi/abs/10.1287/orsc.1120.0806

1. その論文の目的・どこのリサーチか

2011年にカルフォルニア大学が、携帯電話を使って仕事することで、心理的にどんな影響があるのか?ということを調べた観察研究になります。

2. (先行研究とこれまでの問題)

皆さんは自分のスマホに仕事のためのツールを入れたり、スマホからチャットやメールを返したりしていますか? 現代はほんとに便利になったもので、いつでもどこでも仕事できるようになり、以前よりも働き方の自由度も増えました。 在宅勤務もできるようになり、海や森の近くのコワーキングスペースから仕事したりもできるようになりました。 ですが、その自由度が高くなった半面、働く時間を選ばなくなり、クライアントや会社の期待に応えるために 夜遅くまで働くこともできるようになったわけです。

つまり、いつでもどこでも働けるようになったことで見かけの自由は増えているけど、逆に制御しなければ遅くまで働くこともできるようになったから、本当の意味で自由になっているの?というわけですな。

この研究は2011年の研究なので、スマートフォンがまだ出回っていない時代の研究ではありますが、 業務のために携帯電話を使用しているナレッジワーカー(医師、薬剤師、建築家、エンジニア、科学者、公認会計士、弁護士、編集者、VCなど)を対象にインタビューを行い、業務で携帯電話を使用することで、 ・本人たちはどのように感じているのか? ・なぜ業務に携帯電話を使うのか ・使用するメリットやデメリットは何か ということを調査しました。

3. 方法

48名のナレッジワーカーを対象に様々なインタビューを行いました。例えば、 ・仕事内容やコミュニケーション方法 ・起床から就寝までの行動 ・メッセージを受け取ったとき、どのくらいで返信しなければならないと感じるか? ・自宅からメールをチェックせずに出社することはあるか?チェックしている場合、それはなぜか? など、「いつ」「なぜ」「どのように」使用しているのかを質問することで、携帯を使って仕事をすることの動機などを調べました。

4. 結果

参加者のインタビューから、次のようなことがわかりました。 ・電子メールによるコミュニケーションを常に把握することは、ナレッジワーカー自身のパフォーマンスだけでなく、 チームや組織のパフォーマンスにとっても極めて重要であった。そのため、「携帯電話を使用することで仕事のコミュニケーションを管理したり、柔軟性を高める」と考えることで使用されることにつながっていた。 ・業務のために携帯電話を使うことが増えると、柔軟性と生産性が向上し、同時に仕事へのやる気(エンゲージメント)も向上した。こうしてどんどんモチベーションも高まり、「仕事ができる人材」に成りあがっていくことで、本人たちの自律性は低下していき、夜中にメールが来れば返信することで「自分はいつでも仕事ができるプロフェッショナルなのだ」という認識も高まっていた。 ・しかも恐ろしいことに、自分の意思で選択して行動しているため、強制されている感覚もなかった。 ・しかし、こうした働き方によって、完全なプライベートの時間や空間が減少していき、クールタイムの減少、ストレスの増加にもつながっていた。 ・このような働き方は、仕事に携帯電話を使用しない従業員に対しての無言の同調圧力のような影響も見られた。

5. 結論・まとめ

このように、自由に働けるようになったはずなのに自由でなくなってしまう現象を「自律性のパラドックス」と呼ばれておりまして、最近ではフリーランスを対象にした研究も増えているのでまた今度紹介します。 それにしても、自由に働けるようになったのに、「いろんなことをできるようになりたい」「有能だと思われたい」という願望が動機になり、期待に応えようとして潰れてしまったり、大きなストレスを感じてしまったり、、というケースが多いわけです。 しかもこの研究はまだスマートフォンではなく、ガラケーの時代の研究なので、現代のSlackのようなアプリケーションを使っている場合はなおさら影響も大きくなっていそうなんですよね、、。

しかも使っている本人は、「自分のため」と思って使っているわけで誰に言われたわけでもなく進んでやっていることが厄介、、パフォーマンスも高いわけですし。でもずっとそんな働き方をしていると疲れてしまうので、 だからこそ大事なのは、 ・仕事とプライベートを完全に切り離せるように工夫すること ・他者に同じような働き方を強制しないこと は重要だなーと思いますね。

私もスマホにSlackを入れていて、何かあった時に連絡できるようにしておこう、とか思ってしまうわけですが、 ・業務時間以外は通知をオフにしておくようにする ・アプリが目に入らないところに配置する みたいに工夫しています。 役職にもよると思いますし、個人の裁量によりますが、いずれにせよプライベートと切り離す工夫はした方がよさそうーというのが見解になりますねー。どうぞよしなに。