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Uncovering the dark side of gamification at work: Impacts on engagement and well-being https://dial.uclouvain.be/pr/boreal/object/boreal%3A235840/datastream/PDF_01/view
ナミュール大学などの研究チームによって行われた2021年の最新研究です。 仕事におけるゲーミフィケーションのダークサイドに関する研究になります。
これまでの研究で、ゲーミフィケーションのメリットや内発的動機との関係性など紹介してきましたが、ゲーミフィケーション研究は得られるメリットに焦点を当てた研究が多く、ゲーミフィケーションによって顧客のエンゲージメント(Eisingerich, Marchand, Fritze, & Dong, 2019; Shankar, 2016)、創造性(Agogué, Levillain, & Hooge, 2015; Scheiner, 2015)、学習(Landers, 2014)、行動変容(Hamari & Koivisto, 2015)に関して、その有効性が確認されており、ゲーミフィケーション様様ともいえるような結果です。 しかし先行研究では、ゲーミフィケーションがストレスの増加、過剰参加、脱力化をもたらす可能性があることを示唆する証拠もあり(Friedrich, Becker, Kramer, Wirth, & Schneider, 2020; Vesa et al., 2017)、逆効果や、意図しない効果を最小限に抑えるための実証研究が必要とされています(Leclercq, Hammedi, & Poncin, 2018)。
そこで本研究では、職場の幸福度は仕事の満足度だけでなく、従業員の仕事へのエンゲージメントも伴うという認識のもと、従業員のエンゲージメントを促進する技術がFLEs(フロントラインの従業員)の幸福に与える影響について調べました。 つまり、ゲーミフィケーションによって、仕事の満足度や仕事のエンゲージメントにどのような影響を与えるのかについて調べた研究になります。
研究1ではゲーム化された仕事が従業員の福利厚生やエンゲージメントに悪影響を与えるプロセスを調べるために、コールセンターで働く26人のFLEとチームマネージャーを対象に、インタビュー調査を行いました。
研究2と3では、ゲーム化された仕事が、仕事のパフォーマンスに与える影響と、ゲーム化された仕事が従業員のエンゲージメントにどのような影響を与えるのか、また緩和する要素は何かを調べるために、コールセンター内でコンテストを実施し、社員一人ひとりが獲得した売上をマネージャーが確認し競い合いました。優秀者には報酬が与えられました。マネージャーは、社員一人ひとりにコンテストが始まったことやルールを知ってもらうために、ポスターやメッセージでイベントを宣伝しまして、コンテストの前後で従業員の仕事へのエンゲージメントとパフォーマンスを測定し比較しました。
研究1 ・仕事の経験と同僚との関係の質が、FLEsのエンゲージメントと幸福感の主な要因であった ・ゲーミフィケーションが課せられた場合、従業員のストレスや離職率を増加させる可能性があること示唆された 研究2 ・従業員がゲーミフィケーションの導入について良く思っていない場合(ゲームを達成することで報酬を与えるようとしているのではないか、と疑っているなど)、エンゲージメントと仕事のパフォーマンスに悪影響を与える 研究3 ・仕事のエンゲージメントとパフォーマンスに対するゲーミフィケーションの効果を説明する上で、仕事の満足度が媒介的な役割を果たしていた。 ・ゲーミフィケーション活動への参加意欲がゲーミフィケーションと仕事の満足度との間の負の関係を緩和する
この結果に対して研究者は、 ”従業員のためにゲーミファイドタスクを設計する際に顧客の同意が暗黙のうちに残っているが、経営者は明示的な同意を求めるべきである。そうでなければ、従業員はゲーミフィケーションの課題を、自分のパフォーマンスの外部規制として認識するリスクがあり、ストレスや離職につながる可能性がある。” と述べていました。
つまり、ゲーミフィケーションを導入する場合は、従業員や顧客などの関わる人が、ゲーミフィケーションに積極的でない場合や、ゲーミフィケーションを導入して自分たちをコントロールしようとしているのではないか、と疑念を抱いてしまうと、ゲーミフィケーションは逆効果になってしまうということです。その証拠に、ゲーミフィケーション活動への参加意欲は仕事の満足度に与える負の影響を低減してくれることも示されています。
心理学的な視点から考察するなら、 ・コントロールされたくないという心理が人間にはあるので、ゲーミフィケーションがその認知を与えてしまう可能性があるということ ・ゲームが好きだったり、ゲーミフィケーションに対して好印象を抱いている場合は効果的 ・ゲーミフィケーションの設計がうまくいっていない場合は、効果がないどころか逆効果になる まとめるとこのようなところでしょうか。 やはりこの研究結果から考えても、外発的な動機付けを与えるようなゲーム化は内発的にならないので、エンゲージメントを高めたりするのは難しそうですね、、どうぞよしなに。
0. 論文タイトル・URL
Uncovering the dark side of gamification at work: Impacts on engagement and well-being https://dial.uclouvain.be/pr/boreal/object/boreal%3A235840/datastream/PDF_01/view
1. その論文の目的・どこのリサーチか
ナミュール大学などの研究チームによって行われた2021年の最新研究です。 仕事におけるゲーミフィケーションのダークサイドに関する研究になります。
2. (先行研究とこれまでの問題)
これまでの研究で、ゲーミフィケーションのメリットや内発的動機との関係性など紹介してきましたが、ゲーミフィケーション研究は得られるメリットに焦点を当てた研究が多く、ゲーミフィケーションによって顧客のエンゲージメント(Eisingerich, Marchand, Fritze, & Dong, 2019; Shankar, 2016)、創造性(Agogué, Levillain, & Hooge, 2015; Scheiner, 2015)、学習(Landers, 2014)、行動変容(Hamari & Koivisto, 2015)に関して、その有効性が確認されており、ゲーミフィケーション様様ともいえるような結果です。 しかし先行研究では、ゲーミフィケーションがストレスの増加、過剰参加、脱力化をもたらす可能性があることを示唆する証拠もあり(Friedrich, Becker, Kramer, Wirth, & Schneider, 2020; Vesa et al., 2017)、逆効果や、意図しない効果を最小限に抑えるための実証研究が必要とされています(Leclercq, Hammedi, & Poncin, 2018)。
3. その論文の目的(具体的に)
そこで本研究では、職場の幸福度は仕事の満足度だけでなく、従業員の仕事へのエンゲージメントも伴うという認識のもと、従業員のエンゲージメントを促進する技術がFLEs(フロントラインの従業員)の幸福に与える影響について調べました。 つまり、ゲーミフィケーションによって、仕事の満足度や仕事のエンゲージメントにどのような影響を与えるのかについて調べた研究になります。
4. 方法
研究1ではゲーム化された仕事が従業員の福利厚生やエンゲージメントに悪影響を与えるプロセスを調べるために、コールセンターで働く26人のFLEとチームマネージャーを対象に、インタビュー調査を行いました。
研究2と3では、ゲーム化された仕事が、仕事のパフォーマンスに与える影響と、ゲーム化された仕事が従業員のエンゲージメントにどのような影響を与えるのか、また緩和する要素は何かを調べるために、コールセンター内でコンテストを実施し、社員一人ひとりが獲得した売上をマネージャーが確認し競い合いました。優秀者には報酬が与えられました。マネージャーは、社員一人ひとりにコンテストが始まったことやルールを知ってもらうために、ポスターやメッセージでイベントを宣伝しまして、コンテストの前後で従業員の仕事へのエンゲージメントとパフォーマンスを測定し比較しました。
5. 結果
研究1 ・仕事の経験と同僚との関係の質が、FLEsのエンゲージメントと幸福感の主な要因であった ・ゲーミフィケーションが課せられた場合、従業員のストレスや離職率を増加させる可能性があること示唆された 研究2 ・従業員がゲーミフィケーションの導入について良く思っていない場合(ゲームを達成することで報酬を与えるようとしているのではないか、と疑っているなど)、エンゲージメントと仕事のパフォーマンスに悪影響を与える 研究3 ・仕事のエンゲージメントとパフォーマンスに対するゲーミフィケーションの効果を説明する上で、仕事の満足度が媒介的な役割を果たしていた。 ・ゲーミフィケーション活動への参加意欲がゲーミフィケーションと仕事の満足度との間の負の関係を緩和する
6. 結論・まとめ
この結果に対して研究者は、 ”従業員のためにゲーミファイドタスクを設計する際に顧客の同意が暗黙のうちに残っているが、経営者は明示的な同意を求めるべきである。そうでなければ、従業員はゲーミフィケーションの課題を、自分のパフォーマンスの外部規制として認識するリスクがあり、ストレスや離職につながる可能性がある。” と述べていました。
つまり、ゲーミフィケーションを導入する場合は、従業員や顧客などの関わる人が、ゲーミフィケーションに積極的でない場合や、ゲーミフィケーションを導入して自分たちをコントロールしようとしているのではないか、と疑念を抱いてしまうと、ゲーミフィケーションは逆効果になってしまうということです。その証拠に、ゲーミフィケーション活動への参加意欲は仕事の満足度に与える負の影響を低減してくれることも示されています。
7. どんな使い方ができる?
心理学的な視点から考察するなら、 ・コントロールされたくないという心理が人間にはあるので、ゲーミフィケーションがその認知を与えてしまう可能性があるということ ・ゲームが好きだったり、ゲーミフィケーションに対して好印象を抱いている場合は効果的 ・ゲーミフィケーションの設計がうまくいっていない場合は、効果がないどころか逆効果になる まとめるとこのようなところでしょうか。 やはりこの研究結果から考えても、外発的な動機付けを与えるようなゲーム化は内発的にならないので、エンゲージメントを高めたりするのは難しそうですね、、どうぞよしなに。