論文リンク

https://www.carf.e.u-tokyo.ac.jp/admin/wp-content/uploads/2020/03/F476.pdf

見つけた方法

・https://www.waseda.jp/prj-wishproject/covid-19.html に被引用

フォーマット

どんなもの？

COVID-19ショックと2011年3月に日本を襲ったもう一つの大規模な自然災害である東北地方太平洋沖地震に対する消費と価格の反応を比較
比較してみると、両危機の間のスーパーマーケットの売上高と価格の日次での反応は非常によく似ていることがわかる
- コロナウイルスの発生から２週間後には、売上高の前年比伸び率が急上昇し、ピーク時には20％に達しており、震災直後の反応とよく似ている
- この２つの危機における消費者のスーパーでの購入品目はほぼ同じである
- 消費者物価の前年比上昇率は、コロナウイルスショックの影響で0.6％ポイント上昇したのに対し、震災後は2.2％ポイント上昇している
２つの危機の間のスーパーの売上高と物価の反応はよく似ていることがわかる
震災後の物価上昇率は震災後の方が高いと予想されていたのに対し、コロナウイルスショック後の物価上昇率は低いと予想されていることが示唆されている
このような期待インフレ率の違いは、COVID-19による景気悪化は、総供給ショックによるものではなく、主にホテルやレジャー、運輸、小売などの対面サービス産業への需要ショックによるものと考えるべきであることを示唆

先行研究と比べてどこがすごい？

技術や手法のキモはどこ？

どうやって有効だと検証した?

議論はある?

本稿執筆時点（3月29日）では、ニューヨーク証券取引所のダウ平均株価は35％、日経平均株価は30％下落していた
（FRB）は3月3日にベンチマーク金利を50ベーシス・ポイント引き下げ、3月15日にはさらに100ベーシス・ポイント引き下げ、ほぼ一挙にゼロ金利に移行・量的緩和を開始
これを受けて、日銀は3月16日の臨時金融政策決定会合で、ETF（上場投資信託）の年間購入目標を6兆円から12兆円に引き上げることで、十分な流動性を確保することを決定
欧州中央銀行（ECB）は3月18日に新たな資産購入プログラムを決定しました。財政面では、米国が3月27日に個人への直接支払い1200ドルを含む2兆ドルの景気刺激予算を可決したほか、欧州連合（EU）の欧州委員会が加盟国の公的赤字に対する厳格なルールを停止
コロナウイルスショックは、世界金融危機を含む過去の経済危機とは、少なくとも2つの点で異なる
- ショックの突発性, 前例がない, 感染が始まってから4週間ほどで、コロナウイルスショックは経済状況を完全に変えた, これまでの世界的な金融危機は人為的な失敗によるものであったため、そのスピードは人間の理解の範囲内であった。しかし、今回の危機では、そのスピードを決定づけるのはウイルスの蔓延であり、人間の日常の理解をはるかに超えている。
- 人々の行動の同期, 新型コロナウイルスから身を守るためには、他人との接触を避ける必要があります。そのために、人混みを避ける、イベントに参加しない、公共交通機関を利用しないなど、人々はできる限りのことをしています。その結果、ほとんどの人が同じ行動をとっています。
  - 普段は人気があってチケットや予約が取りづらい劇場やレストランは空席で、気軽に楽しめるはずだが、今回は行けてない
  - 経済危機の中では、ある人の行動が他の人の行動に追随するという形で同調行動が起こることは珍しくない
  - 今回の危機における同調の度合いは、通常の経済危機とは桁違いである。また、今回の危機は、人が人に合わせるのではなく、自分の意思で同じ行動を選択するという点でも過去の危機とは異なる。

[コメント : コロナウイルスショックとこれまでの金融危機との違いを概説]

新型コロナウイルスの経済的影響の理由は、他者との接触を制限することにある
人は自分の身を守るために他人との接触を避けたいと考え、その制約の範囲内で経済活動を行おうとする
需要と供給に次のような影響を与える
- (供給)
- 人（＝労働者）は家に閉じこもっているので、生産活動ができない
- 工場の生産ラインでの作業のような作業は、共同作業が必要なため、リモートではできません
- 大学の授業のように遠隔で簡単にできる活動でも、対面でしか伝えられない要素があり、生産性が低下
- ウイルス感染による死亡は、労働者数の減少を意味する (家にいる以外の生産性の低下)
- スペイン風邪は世界人口の2％の死者を出したとされており、全盛期の労働者に死者が集中し、生産量の減少を招いた
- 供給能力の喪失は、賃金や物価にも影響を与える
- [Robert Barroらの最近の研究](Robert Barro, Jose F. Ursua, and Joanna Weng, “The Coronavirus and the Great Influenza Epidemic: Lessons from the ‘Spanish Flu’ for the Coronavirus’s Potential Effects on Mortality and Economic Activity,” AEI Economics Working Paper 2020-02. March 16, 2020.) によると、1918年のパンデミックによる労働力供給力の減少は、賃金や財・サービスの価格を約5％上昇させたとされています
- コロナウイルスのパンデミックはスペイン風邪とは異なり、少なくとも現時点ではコロナウイルスによる死亡で生産量が減少するような状況にはなっていない
- (需要)
- 人（＝消費者）が家にいることで消費活動が鈍化
- 特に懸念されるのはサービス消費 (ホテル・レジャー、運輸業、小売業)
- 商品を購入する際には、ネットショッピングなど、他人との接触を最小限に抑える方法はいくらでもあるが、サービスはそうでない
- スタッフや他の顧客との接触は避けられない (スポーツ観戦や映画鑑賞などの娯楽, 電車や飛行機などの交通機関を利用する場合)
- 例えば、世界的な金融危機の震源地は銀行業であったが、今回の危機ではそのような分類は不可能であり、危機の本質を理解することがより困難になっている
- 今回の危機では、最悪の事態を想定した結果、需要が激変し、カップ麺やトイレットペーパーが備蓄された
- コロナウイルスショックは供給と需要の両方のショックであるが、どちらがより顕著なのかを知ることは、コロナウイルスが経済にどのような影響を与えるのかを理解する上で重要な課題である
  - 100年前のスペイン風邪の場合、前述のように価格が上昇し、供給ショックが支配的であった
  - 最近の日本の例で言えば、2011年に東日本大震災が発生したとき、GDPが大幅に落ち込み、物価が上昇した。これも供給ショックが支配的だった
  - 2008年の世界金融危機の際には、日本を含む先進国ではGDPの減少に伴って物価が下落した。これは、需要ショックが支配的であった
- 最近のデータでは、日本を含む先進国ではGDPと物価が連動して下落しており、総需要に対するショックが支配的であることを強く示唆

Days 24 ここまで

コロナウイルスパンデミックの経済への影響については、日本で流行が本格化し始めた 2 月以降の各種データを用いて、①コロナウイルスショックが主に需要ショックなのか供給ショックなのか、②一過性と思われるパンデミックが永続的な経済的ダメージをもたらすのか、を検証
コロナウイルスショックが消費に与える影響を調べるために最も有用なのは、クレジットカードの取引データである
- JCBカードの取引データを基に、JCBカード会員1億人の中から100万人のJCBアクティブカード利用者の取引を用いて算出
- サービスでは、旅行支出が 1 月下半期比で 57％と大幅に減少
- 外食や交通機関などのほとんどのサービスでも支出が減少
- F2F産業への支出が大幅に減少
- ここで注目すべきは、F2F 産業の支出の減少は、一人当たりの平均支出額（インテンシヴ・マージン）の減少よりも、それらのサービスに費やす消費者数の減少（エクステンシヴ・マージン）が主な要因であるということ
- モノの消費に目を向けると、スーパーでの消費は備蓄を反映して大幅に増加
- 他人との接触を避けることができるEコマースも増加
- 全体では、F2Fのサービス購入が大幅に減少
- F2Fサービスの支出の減少は、需要ショックの拡大を意味
- 買いだめは、近い将来に供給が不足して価格が上昇するという消費者の期待を反映
- このことは、需要ショックと供給ショックが並存していることを示す
商品の備蓄について
スーパーマーケット約1,000店のPOSデータを用いて、1日の売上高の前年比変化率をみる
- 3月初旬には前年比20％増
- インスタントのカップ麺や米、トイレットペーパーなどの日用品が買われた
- 備蓄が一巡し、変化率は低下し、コロナウイルス発生前とほぼ同水準に戻っている
- 実はこのようなスーパーの売上や価格の動きは、東日本大震災の時とよく似ている
- つまり、備蓄する理由は、確率は非常に低いかもしれないが、将来的にコロナウイルスが発生して生産が停止することを期待しているからである
- 東日本大震災は資本ストックの破壊による供給ショックであったため、供給のボトルネックが発生し、結果として物価上昇が期待された

[コメント : 買いだめは将来の供給不足によるによ価格上昇の期待とあるが、感染症蔓延下では、単に外部との接触を少なくしたい意図の側面が強いのではなかろうか]

東北地方太平洋沖地震では資本ストックが破壊され、その修復や入れ替えに時間がかかった
100年前のスペイン風邪では、多くの生産年齢層が死亡したが、この人的資本の喪失もまた、交換に時間を要した
このように、資本や労働力などの生産要素の入れ替えには時間がかかるため、自然災害による供給ショックは長期のマイナス成長や低迷をもたらす可能性がある
これに対し、今回の危機では、資本や労働力などの生産要素の損失はなく、近い将来にそのような損失が発生するとは考えられていない
むしろ、コロナウイルス感染リスクへの懸念によるF2F産業の需要減少が危機の主因となっている
したがって、このような懸念が消えれば、需要の減少は消え、F2F 産業は反発するはずである
しかし、株式市場はそのようなV字回復を期待していないようである
懸念されるシナリオ
- 第一は、コロナウイルス感染に端を発した健康危機が金融危機に発展するシナリオ
  - 例えば、ボーイング社は国際線旅客の激減で経営が急速に悪化していると報道されており、同社は配当を停止し、従業員を削減する可能性がある
  - F2F業界では、大手企業が同様の経営悪化を経験している例が多く、中には実際に近い将来に倒産する可能性もある
  - その場合、そのような企業への融資が回収不能となり、金融機関も影響を受ける可能性がある
  - 実際、このような懸念から一部の金融機関の株式は売却されている
- 第二の理由は、パンデミックが終息しても、F2F 産業への需要が戻らない可能性があること
  - F2F産業の少なくとも一部は、コロナウイルスショックが起こる前に技術革新の波にさらされ、衰退に向かっていた
  - クレジットカードのデータによると、映画館や劇場への支出は近年減少しており、代わりにオンラインコンテンツ配信サービスへの支出が増加
  - 一方、プロ野球や大相撲など、観客のいないスポーツ観戦に魅力を感じない人が多い

[コメント : F2F 業界ではコロナ前にすでにオンライン化の煽りを受けて、衰退に向かっていた事実がある]

Days 25 ここまで

osuossu8 / paper-reading

[2020] The Responses of Consumption and Prices in Japan to the COVID-19 Crisis and the Tohoku Earthquake #22

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技術や手法のキモはどこ？

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