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Requirements for Japanese Digital Text Layout
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日本語組版の読みやすさ #12

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日本語組版の読みやすさ

ドキュメントの読みやすさは,組版を行う際に最も重視しないといけない要素である.しかし,その評価は簡単ではない.ここではいくつかの課題を示すことにする.なお,ドキュメントの読みやすさは,その内容の難易度,構成のあり方,ナビゲーションの方法なども大きく影響する.ここでは,これらのことは除外し,主に文字をいかに配置するか(文字組)という点に限定する.

1 文字組評価のむつかしさ

文字組の読みやすさの評価は,以下のような問題もあり,簡単ではない.

1)文章の量によりやみやすさの影響は異なる.短い文章であれば,ある程度の読みにくさがあっても,なんとか読んでしまう.印刷した辞書などでは,かなり小さいサイズの文字が使用される.これでも問題がでないのは,一般に文章の量が少ないので,読むことができるからである.

2)人が文字を読むことができるのは,読むことを学ぶことで可能になるといわれている.したがって読む行為には,その学習の程度も影響する.また,ある種の慣れも影響する.例えば,縦組と横組の読みやすの評価は,その人の慣れの影響もある.また,近視や老眼,その他の身体的な能力も影響し,個人差も大きい.

3)ドキュメントを読む目的や方法の違いにもよる.急いで,ざっと内容を確認するために読む場合も多い.段落の構成がしっかりしている場合は,段落の先頭の文だけを読んでいく方法もある.この場合は,段落の区切りが重要になる.

4)そのドキュメントを読みたいという人の欲求の強さも影響する.少々読みくいものでも,読みたいものであれば,人は努力して読んでしまう.

5)評価は,一般に読む時間で行われるが,長文の場合,疲労度も考慮しないといけない.

2 印刷されたドキュメントとモニタに表示されたドキュメント

印刷されたドキュメントとモニタに表示されたドキュメントの読みやすさは,どう異なるか. 印刷されたドキュメントについては,これまでの実務経験から,いくつかのことが指摘されている.そうしたことは,モニタに表示されたドキュメントで,どの程度が有効であり,異なってくるのかを問題として考えていく必要があるが,不明の事項も多い. 小林潤平さんが慶應義塾大学SFC研究所から公開されている“日本語書記技術WG報告書”(2019年3月31日) https://www.aplab.jp/_files/ugd/eb8538_e921485ff03b4900aff942b28019d9f4.pdf に“読み効率を高める日本語電子リーダー設計の試み”という論文を発表している(ここから,さらに元の論文にたどることができる). こうした取り組みとともに,実務の世界では日々考えていく必要がある.

3 検討する必要があるいくつかの事項

1)読みやすいフォントは何か 印刷物,特に長文のドキュメントでは明朝体が読みやすいといわれている.それは,明朝体では,ほどよいアクセントがあり,語句の区切りがない日本語組版で,漢字と仮名の曲線の違いや字面のサイズの違いにより漢字が目立ち,語句が認識しやすという点があることが指摘されている.この考えはモニタの場合にあてはまるか,そうでないとすると,どう考えたらよいのか,特に長文のドキュメントをモニタで読む場合に,何が望ましいか,考えていく必要がある.

2)文字サイズ 印刷物では,ある程度の読みやすい文字サイズという共通の認識はあった.これに対し,モニタでは,表示の文字サイズは変更できるから,読者が選択できればよいということでよいのか.その際に問題となるのは,表示できるテキストの分量とのバランスであり,このことを考慮し,さらに画面サイズに応じた選択の方法を考える必要はないのか.前述したように読者は努力して読んでしまうので,与えられたものを変えることはしないことが多い.そこでどのような選択肢を示したらよいのか,工夫した方法を考える必要がある.

3)1行に配置する字数(行長) 1行に配置する字数(行長)は,読みやすさに大きく影響する.行長が可変の場合の行長の制御はどうあるべきか.最短の行長,最長の行長が設定できるようにする必要はないか.また,行長が長すぎる場合は,余白を大きくする,あるいは段組にするという制御方法は考えられないか.

4)行間の大きさ 日本語組版では行間が読みやすさに大きく影響する.この行間は,行長にもよる.印刷物の場合,行間の大きさ(1ページに配置する行数)はページ数に影響するので,ある意味で理想というよりは妥協の結果として採用される行間である例も多い.したがって,必ずしも理想の行間ではないともいえる.モニタでは,ある意味で読みやすさに最適な行間を考えることが可能になったともいえる.それでは,モニタでは,どの程度の行間が望ましいのか.また行長が可変の場合,その行長にあった行間にする処理は考える必要はあるのか.

5)単語または文節区切り 印刷物の場合,特別な場合を除外し,単語または文節区切りを行うことはない.モニタに表示する場合,単語または文節区切りが実現できる選択肢を作成することは必要か(単語または文節区切りの場合,行そろえは行頭そろえとなる).また,単語または文節区切り,あるいはその他の方法を含めて,読みやすさにどのように影響するか検討する必要がある.

6)段落の区切り 段落の区切りをしっかり示すことは,読むやすさに大きく影響する.印刷物の場合は,段落の先頭行を1字下げることでよいのか,その他の方法も含めて,読みやすさの影響を考えていく必要がある.

7)見出しの表示方法 見出し,特に小見出しは印刷物では,いろいろと工夫してきた.こうした方法はモニタに表示するドキュメントでは,どこまで有効か.モニタに表示する見出し,特に小見出しの表示方法は考えていく必要がある.

8)行中における強調 行中における強調はいくつかの方法がある. —括弧でくくる(山かっこ,かぎ括弧,2倍ダーシでくくるのこれに近いかも) —書体を変える(ゴシック体,明朝体の太字など) —文字サイズを大きくする —圏点を付ける —下線,傍線を付ける —文字に色を付ける —文字を枠でくくる,背景に色を付ける —字間を空ける こうした方法は,印刷物とモニタでは同じか,異なるか.それぞれの方法の効果を考える必要がある.

逆に補足などで,強調の反対の処理を行う場合がある.印刷物ではパーレンでくくる,あるいはパーレンでくくり,さらに文字サイズを小さくしていた.モニタに表示する方法としては,どれが望ましいのか,また,文字サイズをどの程度ちいさくするのかを考えていく必要がある.

9)文字のカラー 印刷する書籍の本文の文字カラーは,多くは黒である.わずかであるが,本文を色文字にしている例がある.しかし,長文の本文を色文字にするのは,あまり読みやすいとはいえない.雑誌の場合は,見出しなどで色文字にしている.見出しを目立たせる,見せ方に変化をつける等の目的があるためである.大きな文字であることと,短い文章なので,読みやすさには,あまり影響しない,と考えられよう. Webでは,どう考えたらよいであろうか.印刷物でカラーを利用するのは費用がかかるが,Webでは,そのように考える必要がない.もっぱら読みやすさの面から考える必要がある.となると,特に読ませる目的のテキストについての地色と文字の配色は,読みやすさの面から考えていく必要がある.