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落語ネタ:阿Q正伝から1Q84へ #324

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tlk714 commented 2 years ago

大家さん:先日、村上春樹の「1Q84」を自炊していてね、カヴァーを眺めていたら、何だかへんな妄想が浮かんできて。 はたして、このQは日本語なのだろうか、そうではないのだろうか、って。そうしたら、魯迅の「阿Q正伝」を思い浮かべて、あたまグチャグチャ。 (img) (img) ご隠居さん:ありゃりゃ、今回は、大家さんかい、面倒な問題を持ち込むのは。 魯迅の阿Q正伝が発表されたのは、1921年から1922年にかけてだから、このころすでにラテンアルファベットが日本語の中に混在していたことは間違いないね。というか、幕末の開国以来、日本語と英語などのまさに横文字との混在は、本の執筆や出版の上で、まさに、頭の痛い問題だったからね。今でも、いろいろな意味で、スッキリしないことがたくさんあるよ。 はっつあん:そうなんですよ、ご隠居さん。この前も、横組ですけど、日本語本文と欧文との間のアキを、やれ4分にしろ6分にしろって、担当編集者とその上司が、オイラの前で、言い争いを始めて、あげくのはてに殴り合いになったりしてね。

KobayashiToshi commented 2 years ago

ご隠居さん:ありゃりゃ、今回は、大家さんかい、面倒な問題を持ち込むのは。 魯迅の阿Q正伝が発表されたのは、1921年から1922年にかけてだから、このころすでに ラテンアルファベットが日本語の中に混在していたことは間違いないね。というか、 幕末の開国以来、日本語と英語などのまさに横文字との混在は、本の執筆や出版の上 で、まさに、頭の痛い問題だったからね。今でも、いろいろな意味で、スッキリしな いことがたくさんあるよ。

ラテン文字と和文の混ぜ組ですか.いわゆる和欧混植ですね.私が若い頃は縦組ではあまり欧字は使っていなかったと思うが,最近はラテン文字の使用は増加傾向にあるんじゃないかな.OECDやfMRのような頭字語,日本でもJASRACという団体もある.今はやっているのはCOVID–19だし,WindowsやWebは,昔だったら片仮名表記だったでしょう.ラテン文字が多い場合は横組を考えたものだが,今や縦組でも,けっこうラテン文字を使用している例は多いね.

このラテン文字と和文とは,文字設計の考え方が基本的に異なっている.つまり,和文とラテン文字はデザインの面からみると異質な文字である.それを組み合わせる組版では,いろいろな問題が出てくる.特に行送り方向の位置をそろえる問題については,活字組版時代から意見の相違があった.例えば,“和文に対して,ラテン文字を下げろ”,“下げるとおかしい”,“ラテン文字の文字サイズを大きくした方がよい”,“それはフォントを選ぶ際に注意すればよいことでしょう”,……,といったように,そこでは共通の認識に到達することは難しい面があった.

字詰め方向で考えても,和文では全角の文字の外枠を基本としてしており,ある程度のまとまりごとに読んでいくが,基本は1字1字で読んでいく.これに対し,ラテン文字は,プロポーショナルであり,単語を単位に読んでいくので,単語としてもまとまりが大切で,単語内の文字間も和文よりも狭く,その字間は均等に見えるように設計されている.

混植するラテン文字のフォントや文字サイズをどう選択したらよいか,そのうえで,基本はプロポーショナルのラテン文字を使用するとして,大きな問題としては次の3つがあると思う.  1 縦組ではラテン文字の向きをどうするか.正常な向きにする場合はどのような方法によるか.  2 ラテン文字の行送り方向の位置はどう考えたらよいか.  3 字詰め方向では,ラテン文字と和文との字間はどうしたらよいか.

KobayashiToshi commented 2 years ago

ラテン文字列が,大文字だけ,小文字だけ,しかも短字(a,c,eなど)だけと条件が揃っていれば,ある程度の正解はでてくる.あるいは装幀で本のタイトルを処理するように個別ケースで,時間を掛けることが可能な場合は,たぶん正解は出てくる.しかし,各種の字形が出てきて,しかも機械的な処理をする場合は,ある程度の線で妥協しないといけない.

KobayashiToshi commented 2 years ago

和文の明朝体とラテン文字の混植におけるフォントの選択等の問題についてまとめてみた.

 1 文字の画線の太さが一様でない(変化している)明朝体の場合,その線の特徴が似ているラテン文字のローマン体を選ぶ.

 2 文字の画線の太さも似たものを選ぶ(和文のブロックの濃度とラテン文字のブロックの濃度をそろえる).    3 明朝体の仮名とのバランスを考慮し(明朝体の仮名は漢字の明朝体とは画線の設計が異なる,その意味で仮名は明朝体とはいえないかもしれないが,漢字と合う仮名を作製してきた),その線のカーブが似たものを選ぶ.例えば,ボドニーのように直線的な画線のフォントを選択しない(漢字だけだと似ている感じはあるが).

 4 字面の大きさを考慮し,また,通常は混組に使用されるラテン文字は小文字が多くなるので,字面が和文とラテン文字との大きさのバランスを考慮し,ラテン文字はできるだけ“x-height”の大きなものを選ぶ.もちろん,和文よりラテン文字のサイズを大きくする方法もある(DTPではよく行っている)が,機械的な処理を考えれば,同じサイズでよい.

 5 横組(縦組で文字を横に回転した場合を含む)の場合,仮想ボディの天地左右中央の位置にある和文に対し,短字のラテン文字,あるいは大文字をを並べると和文の下端(縦組では左端)より,字面が上がって(縦組では右に寄って)見える.しかし,この位置を変えるとアッセンダーとデッセンダーがある小文字が行間にはみ出してしまうかもしれない.そこで,和文と欧文の仮想ボディの位置を揃えるしかないということになる.多少は不満が残るがやむをえない.

 6 和文フォントにはプロポーショナルのラテン文字を含んでいる例が多い(以下,付属文字という).そこで,ラテン文字に,この付属文字を選ぶか,別のラテン文字のフォントを選ぶかが問題になる.和文文字を組み合わせるラテン文字の条件を前述したが,付属文字は,そのことを考慮して設計されていると思われる.その意味では,通常は,この付属書体を選べばよい.もちろん,その付属書体を使用しないで,別のフォントを選ぶことも可能であるが,その選択は,それなりに経験のいることであり,それをデフォルトとする必要はないであろう.

 7 フォントの選択にもよるが,ラテン文字の行送り方向の字面と仮想ボディとの空白(サイドベアリング)は,和文文字より狭いのが一般的である(1字1字の独立性がややある和文文字と主に単語を単位に読んでいくラテン文字との差異による).そのような和文文字とラテン文字をベタ組で配置すると,和文とラテン文字の字間が詰まった印象を与える.そこで,活字組版時代には,和文とラテン文字の字間として四分アキにしていた.今日では,この和文とラテン文字の字間は,必ずしも四分アキにする必要はないが,なんらかのアキを確保するのが望ましい.(混植のパターンもラテン文字1字の場合,単語の場合,複数の単語の場合,文字種もアラビア数字,小文字,大文字といったように各種のパターンがあり,一律の処理を前提にしたときは,個別ケースでは多少はバランスを欠く配置となるケースも出るが,それはやむを得ないことであろう.)

 8 和文の(ある程度の画線の太い)ゴシック体との混植について,少しだけ補足しておく.和文のゴシック体との混植では,以下の2つの方法がある.  a ラテン文字のサンセリフと混植する  b ラテン文字のローマン体で画線の太いボールドと混植する この場合,aは画線のデザインと画線の太さをそろえているのに対し,bが画線の太さだけをそろえている.和文でもゴシック体の漢字とアンチック体(明朝体風の仮名で画線を太くしたフォント)の仮名を組み合わせる例があり,それなりにバランスをとれているので,bの選択もありえるが,通常は,aの方が望ましいといえよう.(ゴシック体の漢字とアンチック体の仮名の組合せは活字組版時代にも行われていた.ただし,その当時は仮名のゴシック体のデザインに優れたものがなかったので,やむなくアンチック体を選んだことによる.最近は漫画の台詞では積極的にゴシック体の漢字とアンチック体の仮名の組合せが選ばれている.これは漢字と仮名との差異をある程度とることにより,漢字という語句のまとまりをはっきりさせるという効果を考えたものと考えられる.)

KobayashiToshi commented 2 years ago

5 横組(縦組で文字を横に回転した場合を含む)の場合,仮想ボディの天地左右中央 の位置にある和文に対し,短字のラテン文字,あるいは大文字をを並べると和文の下 端(縦組では左端)より,字面が上がって(縦組では右に寄って)見える.しかし, この位置を変えるとアッセンダーとデッセンダーがある小文字が行間にはみ出してし まうかもしれない.そこで,和文と欧文の仮想ボディの位置を揃えるしかないという ことになる.多少は不満が残るがやむをえない.

活字組版では,長い間,この方法で処理してきたが,上すぎる,下げるとデッセンダーをどうするんだと,議論があった.手動写真植字でも同じで,デッセンダーをの幅を小さくした書体も作製されていた.もちろん,個別のケースでフォントのサイズやフォントの選択などにより,位置の調整は施すことは採用してもよいが,それがデフォルトということではないだろうということである.(フォントサイズも小文字を主に考えるとバランスをよくても,大文字だけの例は日本語組版では多く,この場合は,ラテン文字が大きく感じる例もある.) したがって,和文文字にベースラインを設定して,その位置を考慮して組むとしても問題は残る.和文文字のベースラインをどこに設定しても(たぶん,仮想ボディの上端から88パーセントの位置が正解に近いかもしれないが),その和文のベースラインにラテン文字のベースラインを揃えれば正解が出てくるということにはならない.かならず不満が残る. 最近の書籍では,ラテン文字のベースラインを和文文字の外枠の下端か,その近くに設定した例をよく見かけるが,特に縦組の場合,ラテン文字の内容にもよるが,ラテン文字が左によってバランスを壊した印象を与えて,何か違和感を感じる.

KobayashiToshi commented 2 years ago

縦組にラテン文字を配置する場合,向きをどうするか.方法は3つある,  1 ラテン文字を正常な向きに配置する.  2 ラテン文字を横転させて配置する.  3 縦中横機能を利用して,ラテン文字を正常な向きに配置する.  4 図版などのように別の領域をページ内に作成し,あるいは1ページ全部を使い,そこだけは横組として,ラテン文字を正常な向きに配置する.

文字は正しい向きに配置すべきだということになれば1か3である.しかし2の方法でも結構読めてしまう.2で組まれたものを校正する場合,校正刷は90度回転させ,文字を正常な向きにして作業しろと,きつく注意されることがある.ということは.90度回転させないで,校正することもあり,横向きにされた文字もけっこう読むことができるということでもある.

KobayashiToshi commented 2 years ago

組版処理を行う場合,以下のようにケースを分けて考えないといけない.  1)タイトルなど,ある特定のケースで,使用される文字が決まっている場合 これは,個別のケースで対応が変わってくるとともに,個別で最適な組み合わせを考えられる.この場合は,個別に細かい指定を行えばよい.和文と欧文で文字サイズを変える,字間や行送り方向の文字位置を1字ごとに決める,といった対応もできるでしょう.さらに極端な場合は,文字をアウトライン化して,字形を修正するという方法も考えれる,  2)例えば,本文のようにどのような組み合わせがでるか不明で,いろんなケースに対応しないといけない.個々の場所での指定もできれば避けたい.この場合は,ある程度の対応を考えるとしても,原則を決めて自動処理することになる.  3)前述の2つの中間的な方法で,ある程度,個々の原稿の内容から和文と欧文の対応をきちんとデザインする.この場合は,考え方に応じて個々の原稿に細かく組版の指示を加えていけばよい.見出しなどの処理では,こうした対応が考えられる.

KobayashiToshi commented 2 years ago

ラテン文字が1字の場合を考えてみよう.

プロポーショナルなラテン文字では,文字の字形によって字幅は異なる.しかし,字幅の一番広い大文字の“M”とか“W”でも,通常の混ぜ組に使用するフォントでは,文字サイズにもよるが,全角か,全角よりやや広いということになろう(活字組版の例であるが,あるフォントでは,8ポイント以下のサイズの場合,“M”と“W”は,全角よりやや字幅は大きい).したがって,通常であれば正常な向きにするということになる.

プロポーショナルなラテン文字を縦組のなかに挿入する場合,一般に横転する.そこで正常な向きに変更しないといけない.次のような方法がある.  1 全角のラテン文字を使用する.  2 文字の向きを書式の設定で行う.  3 縦中横機能を使用する.

2や3はプロポーショナルなラテン文字を使用する.したがって,横転させるラテン文字と同じ文字となる.これに対し,1では,プロポーショナルなラテン文字とは字形が異なることが多い.というは,一般に全角のラテン文字は,プロポーショナルなラテン文字の字形をそのまま使用しないで,いくらか字形を広げた字形にすることが多いからである.プロポーショナルなラテン文字のフォントが付属書体であれば,書体にもよるが,その字形の差は,よく観察しないとわからない程度であろう.したがって,その差は,通常の読書では気が付かないことが多いだろう.別のフォントを選んだ場合は,フォントにもよるが,差異がある程度出るかもしれない.

また,全角のラテン文字を使用する方法では,縦組を横組に変換する場合にも,いくらか問題が出る.一般には,横組では,すべてラテン文字はプロポーショナルなラテン文字を使用するのが原則である.それにより,字数に限らず,全ての字形がそろうことになる.(1桁は全角の字形を使用するという考え方もあるが,これは手動写真植字の作業性を考慮したものであり,また,ワープロでも書式の設定を行わないで,便法として使用されることもあり,あくまで便法と考えた方がよい.)

細かい事項であるが,全角のラテン文字を使用した場合,その後ろに句読点や括弧が配置されると,句読点や括弧の前にアキがでる.また,句読点や括弧の前にラテン文字が配置されると,句読点や括弧の後ろのアキが二分以上に見える.さらに,行頭・行末でもアキがでるケースがある.こうしたことは,できれば避けたい事項である.

KobayashiToshi commented 2 years ago

ラテン文字が複数の頭字語で,すべて大文字の場合について,まず考えてみよう.

組版処理を考えた場合,頭字語は2つに分けられる.1字1字読む場合と,単語のように読む場合である.前者はOECD(経済協力開発機構),後者はOPAC(オーパック,オパック)のような例である.

大文字だけの場合,その言語に慣れていないものにとってあまり読みやすいものではない.小文字の場合は,ある程度の慣れがあれば単語を単位として読むことが可能であるが,大文字の場合は,なかなか慣れないということからであろう.逆にいえば,大文字だけの場合は,どちらかといえば1字1字読んでいる可能性が大きいといえる.特に1字1字読むケースでは,そのように考えてよいであろう.

次に,縦組において,単語として読む場合は,横向きでは可能であるが,縦向きにした場合は,ある程度努力しない単語として読むことがむつかしい.こうしたことを考慮すれば,頭字語,特に1字1字のケースでは,どちらかといえば縦向きの方が読みやすいといってよいのではなかろうか.

実際にも,多くの場合,頭字語は,単語のように読む場合を含め,縦向きにしている. ただし,単語のように読む場合や,文字数の多いCOMECON(コメコン,経済相互援助会議)などでは,横向きにしてもよいのかもしれない.

これ以外にいくつかの問題があるケースがある,例を掲げておく.

1 大文字に小文字が混じった例 fMRI(機能的磁気共鳴画像法),BRICs(ブリックス),ECoG(皮質脳波法) *これらも縦向きにしているが,小文字が混じる場合,縦向きにすると時間が不均一になる場合もある,横組にしてもよいかもしれない.

2 数字交じり:H5N1(鳥インフルエンザ),D20サミット *縦向きにして,2桁の数字は縦中横で処理するのがよいであろう.

3 語間を含む例 FOOD ACTION NIPPON(自給率を赤める運動) *語間を含む例も,一般に縦向きにする例が多いが,横向きにしてもよいだろう.なお,語間は全角アキにする方法と,二分などと狭める方法とがある.

4 つなぎ符号を使った例 NDL–OPAC(エヌディエル・オーパック),CD–ROM,COVID–19(新型コロナ感染症) *縦組にする例が多いが,横向きにしてもよいだろう.つなぎ符号は,横向きにする場合は二分ダーシであり,縦向きの場合も二分ダーシが望ましいが,いろいろなつなぎ符号が使用されている.

5 ピリオドが混じる ワシントンD.C. *縦向きにする例が多い.問題は省略符のピリオドで,全角のピリオドを使用する例とプロポーショナルなピリオドを使う例がある.どちらもあまりバランスがいいとはいえない.特に全角の場合はバランスが悪い.また,“D.”と“C.”とを縦中横で処理している例もある.これも,あまりバランスがいいとはいえない.いっそ横向きにしてもよいだろう.

縦向きにする処理は,全角字形を使用する方法と,プロポーショナルな文字を使用し,文字の向きを書式で指示する方法とがある.

なお,頭字語を縦向きに配置した場合,その字間での2行にわたる分割は認められており,全角字形を使用したときは,一般に分割される.しかし,一体として扱うということで分割を認めない方法も行われている.

このように頭字語や,それに類するケースのラテン文字の向きは,簡単ではない.

KobayashiToshi commented 2 years ago

ラテン文字に上付きや下付きの添え字が付いた場合は,どう処理したらよいのだろうか.

1文字のラテン文字に“O2【2は下付き】”のように添え字が付く場合である.一般にプロポーショナルなラテン文字の字幅は,フォントにもよるが,小文字の多くが二分くらい,大文字ではWとかMは全角くらいであるが,他は三分三分(2/3)くらいが多い.したがって,多少の行間へのはみ出しを許容すれば縦中横などで縦向きにできる.

2文字以上のラテン文字に添え字が付く例は,化学式などで多い.最近よく見かけるのは“CO2【2は下付き】”といった例である.

“CO2【2は下付き】”では,縦向きにし,“O”の後ろに“2”を小さくして右寄せにする例をよく見かける.中には“O”と同じサイズの例もある.こうした配置は上付きや下付きとはいえない.つまり,ラテン文字が2文字以上の文字列中に添え字を含む場合は,縦向きでは正確に表現できない.横向きに配置するのが望ましい,といえよう.

上付き・下付きの付く化学式などでは,文字間で2行にわたる分割は避けるのが望ましい.この処理はプロポーショナルなラテン文字を使用し,横向きに配置することで実現でき,組方向の変更でも影響を受けない.その意味でも横向きに配置するのが望ましい,

ただし,“CO2【2は下付き】”のように広く普及し,意味もとりやすいということで縦向きにする場合は,縦向きもありえるでしょう.

KobayashiToshi commented 2 years ago

単位記号もよく使用されている.

縦組の場合,数字には漢数字を使用し,単位記号は片仮名で示す例が多い..  二五センチメートル 二五センチ なお,片仮名の単位記号に,次のような全角の合字にした文字がある.これは文字も小さくなり,全部の記号がそろっているわけではないので,特に利用する必要がないかぎり用いない方がよいであろう.  25㌣ これに対し,横組ではアラビア数字を使用し,多くはプロポーショナルなラテン文字を使用している.  25 cm 縦組でも最近はアラビア数字を使用する例も増えており,単位記号もラテン文字を使用した例も見かける.縦組と横組の組方向の変換を考慮すれば,横組の方式にすることも考えらる.

それでは縦組においてアラビア数字とラテン文字の単位記号を使う場合,どのように配置したらよいであろうか.いくつかの方式が考えられる.  1 上付きが付く単位記号もあるので,横組の方式にし,横向きで配置する.  2 横組の方式にするが,2桁までの数字は縦中横処理,3桁以上は1字1字正常な向きにし,単位記号で縦中横処理(または1字1字正常な向き)  3 数字は2と同じ処理とするが,単位記号は全角のボディにまとめた文字があるので,それを使用する.  25㎝ 25㎡

一般には1か2ということになる.3は,全部の記号がそろっているわけではなく,字形も他のラテン文字とは異なるので,特別に使う理由がないかぎりは避けた方がよいであろう.もちろん,横組では使用しない.

KobayashiToshi commented 2 years ago

ラテン文字を行中に挿入する場合,和文との間をどうするかも問題となる.一般に以下にようにしている.  1 1字1字正常な向きにした場合は,ベタ組  2 縦中横の処理をした場合は,ベタ組  3 横向きにして配置した場合は,和文との間は四分アキ

1字1字正常な向きにした場合も3にならって四分アキにしている例もあるが,ラテン文字の文字の外枠と字面のアキは,文字の上下と左右では,その考え方が異なっており,左右では狭いが,上下では文字の字形にもよるが,それほど狭くないので,ベタ組でよい.

問題は3である.3は,活字組版の慣習からきている.活字の明朝体とそれにあったラテン文字の組合せを前提としたものである.ただし,活字組版でも,組版の手間をはぶくことからベタ組にしていた例もあった.また,単語間のアキを含んでいる場合,語間の三分アキを考えると四分では狭い,という意見もあった.

この問題は,挿入される文字列の内容,使用するフォントも影響する.

和文とラテン文字の設計の差異があり,活字組版で明朝体を使用する場合,和文(とくに仮名)と比べて,字面と文字の外枠(台)との間のアキが,ラテン文字では狭く,ベタ組にすると窮屈に感じられ,そこでアキをとっていた.また,四分アキとしたのは,一般に最小のスペースは四分であったことによる.

今日においては,各種のフォントが開発され,字面が文字の外枠に一杯に近いものも使用されている.したがって,必ずしも活字組版の方法が最適とは限らない.最適値は,フォントの組合せによる.また,挿入される文字列も1字の場合から文まで各種あり,あるフォントでの最適値も具体的なケースでは最適ではない可能性もある.これを一律に処理するには無理がある.

なお,DTPの初期に,ある組版ソフトで,四分アキが設定できたが,その1/4とするその基準は全角ではなく二分であった.それはそれでよいのだが,その基準が全角であと誤解して認識している人があり,誤解の結果か,これはこれでよいと考えた結果かはわからないが,実際の組版結果として八分アキとなるる例をよく見かけた.実際にも,八分アキでも,それはそれで問題はないように見えた.

したがって,機械的な処理を前提とした場合,四分アキをデフォルトとすることはよいが,フォントの現状を考えると,四分アキではアキ過ぎと思える場合もあり(ベタ組でもよい組合せもある),ある程度の範囲で,このアキを選択できるのが望ましいでしょう.

KobayashiToshi commented 2 years ago

縦組において,文中にラテン文字の単語や文を挿入する場合は,一般に横向きにする.ラテン文字を横組にして字間を空けない配置が,横向きという欠点はありながら,まとまった単語として認識しやすいからである.

ただし“Web”や“Windows”といったよく使用される言葉は,なじみもあり,1字1字を正常な向きで配置する例もある.1字1字を正常な向きで配置する場合,小文字にはデセンダーやアセンダーがある文字もあり,特別に細部の字間を調整しないと字間が乱れるという欠点がある.悩ましいところである.組方向の変換を考慮し,機械的な処理を前提とする場合は,すべて横向きとしてよいであろう.

なお,ラテン文字の単語を文中に挿入する場合,括弧でくくる例が多い.この場合はラテン文字用か和文用かが問題となる.あくまで括弧は和文文脈であり,その中だけが,たまたまラテン文字であると考え,和文用を用いる方法が一般に行われている.

KobayashiToshi commented 2 years ago

人名の省略符

和文中で外国人の人名を片仮名表記とする場合,ラテン文字のイニシャルが入る例がある.このイニシャルに省略符のピリオドが付ける方法がある.縦組のときは一般に省略符(ピリオド)はつけないで,区切りに中点(中黒)を使うことが多い.

横組では,いくつかの方法がある.  1 縦組と同様にイニシャルの欧字に省略符のピリオドをつけないで,中点で区切る.  2 イニシャルの欧字に省略符のピリオド(字幅は約四分)をつけ,中点で区切る.  3 イニシャルの欧字に省略符のピリオドをつけ,中点は使用しない.ピリオドは一般の和文に使用するものを使用し,ピリオドはアキを含めて全角である.  4 前項の3と同様であるが,ピリオドの後ろのアキを詰めて,ピリオドは二分である.  5 イニシャルの欧字に省略符のピリオド(字幅は約四分)をつけ,その後ろを四分アキにしている.  6 イニシャルの欧字に省略符のピリオド(字幅は約四分)をつけ,その後ろに欧文の語間スペースを使用している.5とほぼ似た結果になるが,行の調整処理があると,ピリオドの後ろのアキが変わる場合がある.

イニシャルの欧字には,原則として省略を示すピリオドをつけることになる.この場合,例の2のように区切りに中点を使用すると区切りがダブった感じになる.そこで,例の1のように省略符をつけないで,中点だけにするか,例の3以下のように省略符をつけ,中点をつけないようにする.

3以下の例では,“アカーロフ”の例は問題がないが,“スミス”の例では,“スティーブン”と“A”との間に区切りがないので,やや落ちつかない感じがする.ただし,このような組版処理は実際にも行われている.

なお,縦組で省略符のピリオドを付ける方法もある.  1 縦中横で処理する  2 欧文用ピリオドを欧字の直後に配置  3 和文用ピリオドを欧字の直後に配置 これに区切りの中点を付けるか,付けないか,という問題がある.

省略符のピリオドの組版処理

欧字だけの人名の場合は,省略符としてのピリオドの後ろは,一般の欧文の語間と同じ扱いでよい.ここでの問題は,省略符としてのピリオドの後ろに片仮名が配置された場合である.

まず,省略符としてのピリオドとして和文用を使用するか,欧字用を使用するかである.例の3や4では,欧字とピリオドのベースラインがそろっていない.これは避けたほうがよい.

次の問題はピリオドの後ろのアキである.例の3のようにピリオドのアキを含めて全角にすると片仮名との間が空きすぎである.そこで,例の4以下のように詰めたほうがよい.和文用のピリオドを使用しないとすれば例の5か6となる.処理法としては6が簡単であるが,行の調整処理の結果としてアキが一定しないという問題がある.

どの方式を選ぶか

欧字のイニシャルを含んだ片仮名の人名は,決定的にこれだという方式はない.そこで,表記の方針や出版物の目的に応じて方式を選んでいくことになる.

電子書籍のように縦組と横組の両方で表示されることが予定されている場合は,省略符が使用されていないが,区切りは示されているのであるから,例の1とすることは考えられよう.

横組だけでよいのであれば,やや難点はあるが,例の5が望ましであろう.ただし,処理法を簡便にするということを考慮する必要があれば,例の6を選んでもよいであろう.

ラテン文字との混植は,このようにけっこう複雑な問題もある.

KobayashiToshi commented 2 years ago

ラテン文字は,量を示す記号としても使用される.この場合,イタリック体とするのが慣習である.書名を示す場合などでもイタリック体を使用する.

このイタリック体のラテン文字が挿入されたテキストを縦組にする場合,1文字程度であれば縦向きでよいが,単語などでは横向きにした方がよいであろう.全角のラテン文字のイタリック体は,通常は準備されていないので,プロポーショナルなラテン文字を使用することになる.したがって,縦向きにする場合,プロポーショナルなラテン文字を使用し,書式で向きを変える必要がある.

ところで,1文字のラテン文字やアラビア数字を以下のように並列するケースがある.  a, b, c, …, n  1, 2. 3, …, n このケースでは,コンマを使用し,アキを含めて,その字幅は二分とするとバランスのよい配置ができる.ここに全角のコンマを用いると,文字そのものが全角未満なので,アキ過ぎの印象を与える.

この配置を縦組にする場合,どうしたらよいであろうか.縦組ということで,1字1字を縦向きとしてコンマの読点(、)を使用して配置した例があるが,組合せとしてあまり落ち着きのよいものではない.これをコンマに変えても,あまり改善にならない.コンマを正常な縦向きにした配置も落ち着かない.

文字そのものは1字1字なので,可能なら正常な向きに配置したいところであるが,ここは横向きにするしかない.

こうした例は多く出てこない.しかし,組方向の変更という点では,こうした悩ましい問題もある.