分子シミュレーションノート
はじめに
このノートは, 勉強した分子動力学シミュレーションの基礎と関連知識をまとめ, 理解を深め, そしてどう理解したのかを整理することを目的に作成した.
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目次
執筆状況を示すための指標として、目次に絵文字を添える.
- 🍊(Mikan): 未完成の項目, 執筆中, Todo.
第1部 物理の復習
- ラグランジュ形式
- ハミルトン形式
- 拘束条件付きの運動方程式
- 分布関数、リウビルの定理
- 等重率の原理とミクロカノニカルアンサンブル
- カノニカルアンサンブル
- 定温定圧アンサンブル
- 熱力学量: 温度
- 熱力学量: 圧力
第2部 分子シミュレーションの方法論
- ミクロカノニカルアンサンブルでのシミュレーション
- 2体力近似
- 周期境界条件
- 相互作用のカットオフ
- 単位の無次元化・単位換算
- 分子動力学シミュレーションの手順
- 🍊初期速度の与え方
- 生体分子に対する全原子モデル
- 様々なポテンシャル関数とその力・ヴィリアルの表式
- 結合長ポテンシャル: 調和振動子型
- 結合長ポテンシャル: ガウス型
- 結合角ポテンシャル: 調和振動子型
- フィルター関数
- 二面角ポテンシャル: フーリエ級数型
- 二面角ポテンシャル: ガウス型
- ファンデルワールス相互作用: 12-6型
- 静電相互作用
- モースポテンシャル
- 計算ノート: 力・ヴィリアルの導出
- Debye-Huckel理論
- Ewaldの方法
- Particle Mesh Ewald (PME)法
- 静電相互作用を実装したときのメモ
- 付録 (B-spline関数について)
- 時間積分のアルゴリズム
- オイラー法, 修正オイラー法
- ベルレ法, リープフロッグ法, 速度ベルレ法
- 予測子・修正子法
- ベルレ法によるエネルギーの誤差
- 時間発展演算子による取り扱い
- 時間反転多時間刻み法(RESPA法)
- ハミルトンの正準方程式とシンプレクティック条件
- シンプレクティック分子動力学法
- シンプレクティック分子動力学法における保存量
- 付録: 計算ノート
- 温度制御: 能勢・Hoover 熱浴
- 温度制御: 能勢・Poincare 熱浴
- 圧力制御: Andersenの方法
- 圧力制御: パリネロ・ラマンの方法
- 温度・圧力制御: 能勢・Andersenの方法
- 温度・圧力制御: Martyna-Tobias-Klein (MTK)の運動方程式
- 温度・圧力制御: 能勢・ポアンカレ・Andersenの方法
- ホロノミックな拘束条件の具体的な例
- 座標に対する拘束動力学: ベルレ法による時間発展とSHAKE法
- 速度と座標に対する拘束動力学: 速度ベルレ法による時間発展とRATTLE法
- ガウスの最小束縛原理(ガウス束縛法)
- ガウス束縛法: 温度制御
- 🍊ガウス束縛法: 温度・圧力制御
- 剛体運動の古典力学的記述
- 剛体運動の解析力学的記述
- 剛体の回転運動に対する分子動力学アルゴリズム
- マルコフ連鎖
- マルコフ連鎖の平衡分布への収束性
- 遷移確率行列の構築法
- マルコフ連鎖モンテカルロ法
- マルチカノニカル法
- 焼き戻し法
- レプリカ交換法
- レプリカ置換法
- 🍊定温定圧アンサンブルにおける拡張アンサンブル法
第3部 分子モデリング
- 濃度換算
- 水の初期配置について
- 一般化螺旋集合 (GSS: Generalized Spiral Set)
- RESPAC: 粗視化粒子に小数電荷を割り当てるアルゴリズム
- 🍊水のモデル
- 🍊トポロジーの判定: 結合原子リストから結合角・二面角・インプロパーを判定する
第4部 分子シミュレーションの解析方法
- 単ヒストグラム再重法 (Single-Histogram Reweighting Technique)
- 多ヒストグラム再重法 (WHAM: Weighted Histgram Analysis Method)
- 多状態ベネット受容比法 (MBAR: Multistate Bennett Acceptance Ration Estimator)
- リウェイティング tips
- 線形最小二乗法
- スプライン補間
- 主成分解析の基礎
- 主成分解析のタンパク質への応用
- PCAの計算例
- 水素結合による構造
- 幾何構造
- 自己相関関数の定義
- 解析的に自己相関関数が計算できる関数の例
- 🍊自己相関関数と物理
- 並進移動の計算
- Lagrange未定乗数法を使う場合
- 特異値分解を用いた方法
- 四元数を用いる方法
- 補足: 四元数
- 熱力学量
- Hwleyの方程式
参考文献
本ノートは総合研究大学院大学の講義, 分子科学研究所奥村Gのセミナー資料を参考にしている。
- 総合研究大学院大学 物理科学研究科, 大学院講義 理論化学 (2015).
- 総合研究大学院大学 物理科学研究科, 大学院講義 生体分子シミュレーション入門 (2016).
- 福井大学 大学院工学研究科, 分子科学特別講義 分子動力学シミュレーション (2018) (講師: 奥村久士).
以上の講義・セミナー資料に関連する日本語の出版物として
- 奥村久士. 第1回:能勢の熱浴と能勢・フーバー熱浴. アンサンブル, Vol. 10, No. 4, pp. 29-33, 2008.
- 奥村久士. 第2回:シンプレクティック解法と能勢・ポアンカレ熱浴. アンサンブル, Vol. 11, No. 1, pp. 35-40, 2009.
- 奥村久士. 第3回:速度スケーリング法, ガウス束縛法, ベレンゼン熱浴. アンサンブル, Vol. 11, No. 2, pp. 43-46, 2009.
- 奥村久士. 第4回:アンダーセンの方法と能勢・アンダーセンの方法. アンサンブル, Vol. 11, No.3, pp. 22-26, 2009.
- 奥村久士. 第5回:パリネロ・ラーマンの方法, 圧力一定のガウス束縛法, 圧力一定のベレンゼンの方法. アンサンブル, Vol. 11, No. 4, pp. 26-30, 2009.
があげられる.
分子シミュレーションの教科書として定評のある, 以下の文献も参考にした.
- 上田顯, 分子シミュレーション --古典系から量子系の手法まで --. 裳華房, 2003.
- 岡崎進, 吉井範行. コンピュータ・シミュレーションの基礎 第2版 --分子のミクロな性質を解明するために--. 化学同人, 2000.
- 吉川大弘, 石渕久生, 三木光範, 廣安知之, 岡本祐幸. 計算科学講座 超多自由度系の最適化. 共立出版, 2013.
- Mark E. Tuckerman. Statistical Mechanics: Theory and Molecular Simulation. Oxford University Press, 2010.
- Daan Frenkel and Berend Smit. Understanding Molecular Simulation: From Algorithms to Applications. Academic press, 2002.
- Michael P Allen and Dominic J. Tildesley. Computer Simulation of Liquids: Second Edition. Oxford University Press, 2017.
謝辞
このノートの作成に貢献してくれた以下の皆様に感謝します。
- Toru Niina (@ToruNiina)
- NamaNamazu (@yutakasi634)
- Shoichi Tanimoto (Institute for Molecular Science)
- Sugata Daiki (Kyoto University)