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2019年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、男性の賃金の中央値は297.7万円。女性のそれは227.8万円。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/dl/07.pdf
これを文字単価5円で割ると、男性は595,400字。400字詰め原稿用紙にして1,488.5枚の執筆が必要になる。女性は455,600字。同字詰め原稿で1,139枚。
男女の必要執筆枚数を12ヵ月または240営業日で割って毎月の執筆枚数を出すと、男性124.0枚(6.2枚/日)。女性94.9枚(4.7枚/日)。多くはないが、少なくもないという数字になる。
「常に書き続けること」はできないため、この試算はあくまで目安に留まる。就労日数に占める「執筆」行為の割合は、取材・調査や企画・営業、その他の事務手続きを考慮すると、全体の半分も行けばいいのではないか。そうなると、1日8時間労働のうち半分を執筆に当てるとして、4時間で4.7~6.2枚書くことが、この単価で「日本で一般的な収入を得ること」の条件になる。
もっとも、素朴に考えれば、年商227万~297万で、東京で単身生活を送るのはむずかしいだろうと分かる。文字単価が5円では、稼業とするには厳しい(徹底して節税してもなお)。もし、文字単価が1.5倍(7.5円/字)から2倍(10円/字)になれば、新しいことに取り組む余裕もできるし、生計に余裕も出る。
収支予算を組んだところ、予定部数の1.5倍~2倍の売れ行き、かつ販管費・管理費を据え置きできれば、文字単価は2倍にできる。もし、予定部数が10倍になり、毎月発行できれば、生計の一角になる程度の執筆料に達するけれど、これは単行本を毎月書き下ろすようなものでまだ現実味がない。製造原価をあげるには販管費を増やして売上高を高めることが王道ということか。
余談:そもそも文字単価による報酬計算は便宜的なもので、別の算定方式をとるべきという立場はもちろんありうる(今回は、簡単のために文字単価にしたけれど)。
たとえば、時間単価。報酬金額や契約内容によっては、執筆者の労働者性が問題になるものの、いわゆる士業はタイムチャージ制をしばしばとる。IT業界では人月単価方式もまだ一般的。
固定金額の顧問制とか、準委任契約(完成物あり)として、時間による制約をやわらげる場合もある(受注者・発注者ともに)。
同人誌でよくあるのは収益分配方式。執筆者の役割が企画・編集と不可分で、ときには販売支援も行うような場合。任意団体や有限責任事業組合などの出資を役務提供によって行うこととたぶん近い。
完成物で得られた収益を製造責任者として受けとる方式は、美術品や写真などに見られるか。夏目漱石の印税率がときには数十%に達していたのはこの例に近い。
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