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2024gsc_ShioriUehara

2024年度卒論「都市空間における環境音のデジタルアーカイブ手法の検討ー相模原キャンパスを例にして」

青山学院大学 地球社会共生学部 地球社会共生学科

上原 史栞 / Shiori Uehara

学生番号 1A121021

指導教員 古橋大地 教授

©︎Furuhashi Laboratory/Shiori Uehara, CC BY 4.0

Abstract

 この研究は、都市空間のサウンドスケープを作成し、その特徴と影響を分析することを目的としている。都市空間の事例として、青山学院大学相模原キャンパスを取り上げ、キャンパス内の主要エリア(カフェテリア前、チャペル前、ガーデン、スタジアム前)において、iPhoneの「ボイスメモ」アプリを使って、音環境を記録した。その成果について、Mapbox 社から発表されている、相模原キャンパスの3D地図にMincraftのMODを用いて落とし込む。  次章から研究内容についてIMRAD形式で論じていく。「Introduction」では、「サイバーフォレスト」の取り組みを中心に先行研究について紹介し、「Methods」では使用する地図やMODの紹介とともに研究の進行方向を示す。「Results」と「Discussion」では、キャンパス内を観測して得た知見についてまとめ、今後の展望や課題についてまとめている。

Introduction

 人間が生活する環境には多種多様な「音」が存在しており、街の騒音問題の例のように「音」が人間の心理的および生理的な状態に与える影響は大きい。日常に存在するすべての音について、「地球規模の自然界の音から、都市のざわめき、人工の音に至る我々を取り巻くさまざまな音をひとつの「風景」としてとらえる考え方(鳥越,1990)」がサウンドスケープである。特に、本論文で例として挙げる大学のキャンパスは、学習や研究など日常のコミュニケーションが行われる場所として多様な音環境が存在すると考えられる。そして、収集したサウンドスケープを相模原キャンパスの3Dマップへ展開することで、さらなる没入感のある地図の作成及び、環境音の可視化による快適な学習環境の実現への提案を行うことを目的とする。

Methods

  1. 録音 相模原キャンパスの4地点(カフェテリア前、チャペル前、ガーデン、スタジアム前)において、iPhoneの「ボイスメモ」アプリを用いて環境音の収集を行う。
  2. 地図への展開 Mapbox Standardで公開されている相模原キャンパス3Dマップに、マインクラフトのMODである「Dynamic Sound Filter」もしくは「Mapbox GL JS」を使って録音した環境音を展開する。

Results

相模原キャンパス内の環境音を録音すると、以下のことが分かった。

  1. カフェテリア前 学生が頻繁に行き来する場所のため、学生の話し声や足音がもっとも観測できた。また、プロムナードで鳴いているセミの声も聞こえた。
  2. チャペル前 カフェテリア前よりは少ないが、ここでも学生の話す声や足音が観測された。授業開始のチャイムはどの地点でも聞こえるが、チャペルの特徴と言えばチャイムなので、地図に展開する際はチャペル前でチャイムを鳴らすようにする。
  3. ガーデン 水が流れる音や風の音など、最も自然の音が多く聞こえた。また、すぐ横を走るJR横浜線が通る音も聞こえた。
  4. スタジアム前 部活動の音を録音できることを期待して行ったがあいにく活動中ではなく、録ることができなかった。自動車が移動する音が聞こえた。

Discussion

 本研究では、「カフェテリア前、チャペル前、スタジアム前、ガーデンの順で音量が大きく、観測される音も多様である」と仮説を立てて研究を進めた。実際は、ガーデンにおいて自然音とJR横浜線の走る音が観測でき、一方で、スタジアム前で部活動の活動音が観測できなかったことから、「カフェテリア前、チャペル前、ガーデン、スタジアム前」の順でにぎやかだった。比較収録したことで、地点によって録音される音の種類に顕著な違いが見られ、学生の移動パターンが分析できた。 課題として、録音した環境音を3Dマップに展開し、没入感のあるマップ体験を実現する予定だったが、音MODとの相性が悪く上手く落とし込むことができなかった。他の手法をあたり、研究を進めていく必要がある。

Conclusions

 本研究によって、相模原キャンパス内の環境音は地点によって大きく異なることが分かり、その原因は学生の移動パターンによるところが大きいと考える。観測したデータを地図に展開することによって可視化するつもりだったが、システムの相性の問題で上手くいかなかったため、相模原キャンパスの音入り3Dマップを開発することを目標に、今後も研究を進めていきたい。

謝辞

本研究を進めるにあたり古橋教授をはじめ多くの方々より多大な助言を賜りました。厚く感謝を申し上げます。

参考文献リスト

https://docs.google.com/spreadsheets/d/19FtBXse1hFvAzg9a3EQk9c9AlYJWK0-m7P_nXpGIJ4c/edit?usp=sharing